見出し画像

硫化染め工場の閉店とその影響

 染工場の一つが閉店するとの情報が入ってきました。
いくつかの染色をしている工場ですが、その中に「硫化染め」という染色技法があります。

硫化染めとは

「建て染め染料」という部類で、酸化して生地に色がつく染料です。これは大きくは藍染と似た性質です。
硫化染料の中には色合いが何種類もあります。どれも落ち着いた、くすんだ色味が特徴といえます。
染色の手間は、藍染>硫化>反応染料という位置づけで、価格帯も同様の傾向です。
藍染や反応染料と比較して、藍染よりも色落ちせず、使っていくうちに少しずつ色が落ちるので反応染料よりも経年変化や風合いを楽しめるといった説明がよくされます。
染料の特徴は別の記事にも書いていますので、興味のある方はそちらも読んでみてください。

硫化染めの用途

 
以上のような特徴もあり、次の品物になることが多いです。

・帆前掛け
・半纏

硫化染め工場が1つ閉店することによる影響

他で同じ半纏、品物を作ろうとした時に次のことが懸念されます。
①色があわせづらい/あわせられない
硫化染めの色は再現性が高くありません。
他にも硫化染めをしている染工場はありますが、それぞれの色があったり、ロットでぶれが生じやすい染色方法です。
同じ硫化染めでも染元が変わることで色味が変わる可能性があるということです。
②いままでのロットで注文できない
硫化染めを行う染工場は、タンク(釜?)で染色をします。
そこの容量にあわせたロット数を揃えないと対応ができなかったり、割高になるという可能性があります。

対応方法

1.硫化染めをしている染工場を探す。

 硫化染めをしている工場はまだ日本各地に複数あります。
そこで色見本を見せたり、毎年の予定数量枚数を伝えることで、条件にあったところを探します。
卸問屋に注文をしていてそこが今回の問題に直面していたら、ちょうど探し始めようとしているかもしれません。
そこは卸問屋にお任せしても良いし、対応に納得しなければ自身で調べるのも良いと思います。
インターネットでも割と多くの染元がでてくると思います。

2.染色技法を変える。

 色味、ロットで硫化染めの中だけでは条件が合わない場合もあるかもしれません。
その場合、色味や特徴が近い藍染や、主流の反応染料で検討することになると思います。
検討にあたり参考になりそうな事を並べてみます。

・藍染

 青~紺系の硫化染めなら色を合わせられる可能性が高いと思います。それ以外の色の硫化染めは対応できないと思います。
経年変化は反応染料と比べて似ているので、硫化染めから藍染の半纏に変わったところで、同じ半纏全体で統一性が大きく崩れることはないと思います。
価格は藍染の方が高い傾向ですが、枚数が毎年多くない、いままで卸問屋経由だったなど条件によっては近い価格、安くなる場合もあるかもしれません。
藍染は、硫化染めで使う型を使いまわせる可能性が高いです。(型が回収できれば最初の型代がかからないということです)

・反応染料

 色合わせはある程度可能と思われます。
反応染料を専門外なので何とも言えませんが、硫化染めの落ち着いた色に合わせることは、染元の色合わせの腕次第かもしれません。
ロットが多ければ安価に作れる可能性が高いです。少ないとあまり変わらない、かえって割高になる可能性も考えられます。
色落ちをなんとかしたいーという問題を抱えている場合は、反応染料への良い見直しの機会とも捉えられます。ただ、経年変化との兼ね合いになります。
硫化染めと反応染料の半纏で経年変化が大きく異なり、年々見栄えが違っていくので統一性は損なわれやすいかもしれません。
反応染料の技法によっては、硫化染料の型が使えないので型代がかかると思われます。

以上になります。
この件に関して、それ以外でもホームページでいつでも問い合わせいただけます。なにかあればこちらからどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?