日本地図のぬりえをした話 -47都道府県ゆるり旅-

中学生の時、社会の資料集として配られた「新編 中学校社会地図 最新版」

平成の世に配られたもので、令和の今ではもちろん最新版ではないけれど、幾度かの引っ越しを経てもまだ手元にある。
貧乏性もあって物をなかなか捨てられてないのもあり、使わなくなった教科書や資料集も、社会人になってしばらくは何冊か残っていた。

お出掛け特集を見るのが好きで、ことりっぷやarucoをみると、わくわくした。
子供の頃、家族旅行に連れていってもらったこともあるけれど、県内が多かったので遠くへ行ってみたい思いがあった。

学生時代は 時間>お金 だった。
長期休暇はあるものの、生活費と学費の捻出のためにバイトを掛け持ちしていた。実習は多く、授業の空きコマはほぼなく、たまにあってもせっかく稼いだ学費がもったいなくて、一般教養科目を詰めていた。それでも長期休みはあって(バイト三昧ではあったけれど)「時間はあるけれど、お金がない」状態だった。

社会人になると 時間<お金 だった。
不規則なシフト制で三交替勤務。17時過ぎに仕事を終え、その日の22時半には出勤していた。16時から0時ごろまで働き、7時半にはまた出勤。休暇希望は出せるけれど数が限られていて、当月になるまでシフトは確定しなかった。有休も気づくと消化されていて、年末年始も勤務。夏季休暇があるものの、長期間仕事から離れるとそのあとが怖くて、分散して取得することも多かった。破格の寮住まいで生活費はさほどかからず、使う余力もあまりないため(ストレス発散の暴飲暴食は除く)、気づけばそれなりに貯金は貯まっていた。「お金はあるけれど、時間(気力を伴う)がない」状態だった。

しかしある時、「時間はつくるもの」と感じた。当たり前ではあるのだが、余暇はある。希望が重なれば交渉とはなるが、完全週休2日制は確保されている。また、夜勤明けで眠たいものの、動けないわけではない。ふらりと出掛けてみると、平日は人も比較的まばらで、思っていたほど体力を消耗しなかった。やりたいことがあるなら、つくっていくか、と行動することにした。
夜勤明けに2連休がとれれば2泊3日の旅ができるし、休日の後に準夜勤(16時から仕事)であれば、1.5日ではあるが、1泊2日の旅ができないこともない。

不規則な勤務や日々の労働で体力気力は削られていたものの、これからの人生の中で私は今、1番若い。こうして私は、時間・お金・気力を手に入れ、旅へと向かったのである。

誰かといるとむだに気を遣ってしまう面倒な性分と、ひとり時間が必要な性格もあり、ひとり旅は私に合っていた。

気の向くまま、赴くままに次に行きたいところを考えて計画すると、わくわくした。
2回、3回と行く場所もあった。

ある時、「だいぶ旅したけれど、私が行ったことないところって、どこだろう?」と思った。
そこで、冒頭の「新編 中学校社会地図 最新版」(私の中では、通称・地図帳)を手にした。
北海道から順に、行ったことのある都道府県に色を塗っていく。思ったよりぬりえの手は進む。

行ったことがあるのは36都道府県。
行ったことがないのは、11県だった。

「どうせなら行ったことのないところへも行ってみよう!」と思い立ち、次の旅からは未開の地を意識しつつ、計画を立てた。

行ったと思い込んでいて、見逃していた県もあったり、ひとりではなく、誰かと行ったところもあるけれど、最終的に2020年12月をもって、私は47都道府県の旅を制覇した。

弾丸だったり、ペーパードライバーだったりで、もう少しこうしたらよかったな〜と思う点があるものの、私にとってかけがえのない経験である。

ドラマやバラエティ番組、アニメやマンガ、小説の中、ひととの会話の中でご当地が出てくると、「ああ、行ったなぁ。」「あそこか〜。」と勝手にほこほこした気持ちになる。
高校を出るまでほとんど地元の小さな地域で過ごした私の世界は、確実に広くなった。

本当はその時々の気持ちを、新鮮なままに記せたらよかったけれど、備忘録としての鮮度はない。
回顧録として、時が経ったからこその美化や記憶の改竄もとりいれつつ、書き連ねられたらと思う。

#忘れられない旅

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