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質問紙編(令和5年度全国学力・学習状況調査)

前回の小学校国語編に続き、質問紙の結果を小学校教諭の立場で考えてみる。
注目した点をいくつか述べる。

自分には、よいところがあると思いますか。

この項目は、前回調査と大きな差はない。
だが、9回前の調査からは小中学生共に10ポイント程度上昇していることがわかる。やや控えめな国民性であるといってもよいのだが、子どもたちには自己肯定感の高まりが感じられる。全国で、たくさんの良さを認められたり、感じたりしているのだろう。

先生は、あなたのよいところを認めてくれていると思いますか。

同じくこの質問の結果も、9回前調査から小中学生共に大きな上昇率がある。これも、子どもたちの良さを認めよう、引き出そうとする全国各地の先生方の努力の成果だと思う。

将来の夢や目標を持っていますか。

夢が持てないのか。持たないのか。わからないのか。
小学生の4割ほどがそう回答しているようだ。
確かに、教室でも「夢は、ない。思い浮かばない。」という子もいる。
だが、この項目はウェルビーイングを高める上で気になる。
平成25年度は小学生で72.2%だったのに対し、今回は60.8%と下がってきている項目だ。ここ3年間ほどは、60%台で推移している。おそらく、新型コロナの影響だと推察されるが、それ以前から徐々に下がり続けていた項目だ。コロナのせいだけではない。
しかし、学校質問紙という各校の代表の教師が回答した「調査対象学年の児童生徒に対して、前年度までに、将来就きたい仕事や夢について考えさせる指導をしました。」では、「よく行った。」「どちらかと言えば、良く行った。」の割合が過去最高の86.6%となっている。

先生と子どものギャップが大きい。

ここは原因を追究するよりも、学校や家庭で大人が夢を語っていくことを肝に銘じていきたい。いろいろと閉塞感のある世の中なのかもしれないが、「ビックな夢」や「小さな目標」を持ち続けることは、ウェルビーイングを高めるうえでも欠かせないと思う。

自分と違う意見について考えるのは楽しいと思いますか。

令和3年度からできたこの項目は、小学校で徐々に伸びつつある。77.6%が肯定的にとらえているようだ。
GIGAスクール構想で、令和2年度以前に比べ、表現の幅は間違いなく広がった。子どもの素直な意見だろう。

普段の生活の中で、幸せな気持ちになることはどれくらいありますか。

この質問は本年度から新設。
ウェルビーイングを小学生向けに、直接聞いているなぁというのが率直な感想である。

学校の授業時間以外に、普段(月曜日から金曜日)、1日当たりどれくらいの時間、勉強をしますか(学習塾で勉強している時間や家庭教師の先生に教わっている時間、インターネットを活用して学ぶ時間も含む)

「3時間以上」「2時間以上、3時間より少ない 」この2つの選択肢を選んだ子は、9回とも大差はない。勉強する子は昔も今もするのである。
気になるのは、
「1時間以上、2時間より少ない」「30 分以上1時間より少ない」の割合が前回より減ったことである。

これは、率直に心配だ。

教師の立場で見ると、宿題の在り方が最近は変わってきている。
一律に出す漢字ドリルや計算ドリル、音読などを取りやめたり縮小したりする学校も増えてきた。私もその一人だ。
そうなると、何が起こるかというと一人一人の裁量が大きくなってくるということだ。高校生や大学生ならともかく、自分が学習すべき量があまりわからない小中学生の場合、うまく調整できない可能性も十分に秘めているのだ。担任の立場から、時折、宿題の量などについて個別に話をして調整する
こともあるのだが、毎日全員とすることはできない。
また、「 30 分より少ない」「 全くしない」の割合は小学生で15.8%、中学生で15.9%である。これは、9回中過去最悪。かなり危機的な状況ともいえる。
ですので、学生の皆さん、もっとたっぷり頭を使って勉強しましょう。

新聞を読んでいますか。

この項目は必要だろうか。
というのも、新聞行動者数は減少し、大人も読まなくなってきている。
(私は好きなのでいくつか購読して紙で読んでいるのだが。)
その結果、この項目は年々減少傾向にあることははっきりしているし、今年も過去最低だった。
そもそも習字の時間に新聞紙取り合いの現状をご存じなのだろうか。
現代では、「おうちから新聞紙を持ってきましょう。」はNGワードになっている。必ず、「持っている人で持ってきてもいい人は」の一文が必要なのだ。
国の整備の中に、学校図書館の中に新聞を置くというものがある。本校も今年からやっと置かれるようになった。しかし、そもそもその存在を知っている子どもも先生も少ないし、学校間の温度差は歴然としているのが現場の感覚。
教職員の間でも、重要性と必要感が共有されていないのではないだろうか。

学級の友達〔生徒〕との間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができていますか。

一斉指導型の授業から対話型の授業改善が進み、着実に伸びている項目だ。子どもたちにも実感としてあるようだ。だが、まだ十分な数ではない。

あなたの学級では、学級生活をよりよくするために学級会〔学級活動〕で話し合い、互いの意見のよさを生かして解決方法を決めていますか。

この項目も年々向上している。
学級会が実りあるものになりつつあるようだ。
本学級では、「子ども会議」というものも取り入れている。
意見の衝突も多いが、少しずつ互いの良さを聞けるようになってきた子が増えてきた。
国立教育政策研究所から出ている「特別活動」の冊子がとてもわかりやすい。まだ読んだことがない先生は、是非一読を。


前年度に、教員が授業で問題を抱えている場合、率先してそのことについて話し合うことを行いましたか。
前年度に、教員が学級の問題を抱えている場合、ともに問題解決に当たることを行いましたか。

この2つの項目は、中学校で改善傾向にある。チームとして子どもたちに対応することを実践されているのだと思う。
小学校でも、チーム学校と言われるようになって久しいが、やはり学級担任裁量が大きい。一人の先生が、クラスの30名程度をしっかりと指導しきる。保護者対応もする。授業も学級経営も自分一人が行う。
クラスがうまく回れば楽しいし、満足感も感じることができるかもしれないが、そういう時代はすでに終わっている。
特に小規模校なら、同学年にクラスが複数ないわけであるから、問題を抱えていても実際に相談する相手がいなかったり、ほかの学年の先生であったりする。これは、構造的な問題であろう。
教師不足や疲弊して学校現場を離れる先生も多い時代、小学校も学級担任制の在り方を根本からとらえなおす時に来ていると思う。


長々と書いたが、もっとじっくり今度は職員同士で話してみることにしよう。
ぜひ、皆さんもこの記事を読んで思ったことがあれば聞かせてほしい。

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