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英国の思い出

 本日、英国の女王・エリザベス二世が崩御なさったとの知らせが世界を駆け巡りました。英国好きの日本の一市民として哀悼の意を表したいと思います。

 今から四半世紀前、プリンセス・ダイアナが不慮の事故で身罷られた頃、私は短期留学でロンドンに滞在していました。
 ケンジントン宮殿前に供えられた大波のような花束の数、今でも忘れられません。同時に、その時の女王に対する非難の強さも。

 あの当時、女王は英国王室の最高位にある存在として、ある意味常識的な判断をしました。それは”伝統的”には間違っていないものの、国民感情に沿うものではありませんでした。それゆえ、大変なバッシングが巻き起こりました。事態を重く見たチャールズ皇太子(当時)やブレア首相(同)は、プリンセス・ダイアナを准王族として送るよう説得しました。
 離婚後のダイアナの行動は、女王の価値観に照らし合わせれば到底受け入れられるものではなかったのでしょう。
 それでも、女王は息子や首相の言葉を(全てではなくとも)聞き入れたのです。
 私が、エリザベス女王は傑出して偉大な人であったと思うのは、この点に尽きます。
 女王は常に、時代に自分を合わせてこられました。
 女王が即位した1953年と、2022年の今では、価値観や政治的に正しいとされることには雲泥の差があります。かつては「当たり前」「正当」だったものも、現在では受け入れられない「間違い」「不当」になっているのです。
 これを理解できないまま「老害」になっていく人間は少なくありません。新しい価値観の意味を理解しようとしない愚者は年齢に関係なくいます。
 しかし、女王は、自分の立場が許容する範囲で、常に柔軟に変化に適合しようと努めておられました。当然ながら限界はあるとはいえ、ご自分の立場で出来得る限りのことはなさっていたと思います。実に見習うべき態度です。
 
 私も今後、時代の価値観に戸惑うことは増えていくでしょう。
 それでも、生きている限り、守るべきと変わるべきのバランスを取り続けないといけません。エリザベス女王の生き方は、その指針の一つになるかと思います。

 偉大な君主の、偉大な生涯に、心からの尊敬と叩頭を。
 どうぞ安らかにお眠りください。

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