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癸卯葉月 大暑 大雨時行の間

二日
「不機嫌さ」で他者をコントロールしようとする人を目の当たりにする。
しかも御本人の立ち位置は”被害者”である。反面教師とはよく言ったもので、彼の人の振る舞いには学ぶべきところが多々あった。

三日
仕事で埼玉県の川越へ。

関東内陸の酷暑を体験してきた。
なにが驚いたって、電車を降りた瞬間に浴びた熱風である。てっきり換気扇の排気口かなにかの前に立ったのかと思ったが、違った。なるほど、体温以上とはこういうことか。まさに異次元の暑さである。いくら暑くても体温以下、夜には30度を切る横須賀で暑い暑いと言っているのが申し訳なくなった。
帰路、途中駅で下車して映画館に行き話題の映画「ヴァチカンのエクソシスト」を鑑賞。ホラーではなくアドベンチャー映画、よく出来た娯楽作品だった。ところどころ挟まれる名作ホラーへのリスペクトもくすぐりが効いている。と、同時に、旧教に内在する女性嫌悪の構造がくっきりと見えてきたのが興味深かった。非常に巧みな構成だ。
ラッセル・クロウのスクーター姿の愛らしさとともに大変な拾い物をした気分である。

映画館を出ると、外は海風渡る浜の街。

軍港ならではの夕景

もし人を海の民と山の民に分けるとしたら私は海の民だななどと考えながらしばしそぞろ歩いた。

軍港の腥き風はどこへ飛ぶ

四日
疲れが出たのか、午後になって電池切れを起こしたようだ。配達夫の呼び声で起こされるまで小一時間は寝ていた。午睡は夏の愉しみである。

五日
家事日だが昼から出かける予定があるので五時過ぎに洗濯と掃除をスタート。おかげで十時には一通り終了した。

午後は友人の車で大型ホームセンターへ連れて行ってもらう。ところが希望していたものが見つからず、残念な結果に。せっかく車を出してもらったのになんのこっちゃら……。

とはいえ、三浦海岸駅近くのイタリアン「ao」で食べた地物の野菜や魚介をふんだんに使ったランチが殊の外美味で、大満足したので収支はプラス、といったところか。なんでも先代はお寿司屋さんだったそうで、魚介のよさはその名残だろうか。巻寿司などもあるらしい。

前菜盛り合わせ

よい店を教えてもらった。駅から徒歩圏内なので自力でも行ける。夜も試してみたい。

夜、素天堂こと山口雄也氏の訃報をTwitterで知る。
あの御温顔、のどやかなお話ぶりを思い出すだに寂しさ勝るばかりだ。もう一度お目にかかりたかった。畢生の一作『【「新青年」版】黒死館殺人事件』を遺してくださったことに改めて感謝の意を表したい。御霊安らかならんことを。

六日
天気予報アプリの予報通り、午前十時からとんでもない豪雨が振り始め、その後も降ったり止んだりの妙な天気が続いた。沖縄周辺でトリッキーな動きを続けている台風の影響だろうか。「大雨時行」の趣とは少し異なる雨だ。
少し前、加門七海さんがTwitterで「最近の天気は”雑”だ」と書いておられたが、まったく我が意を得たりである。

けれども花はほぼ同じ巡りで開花する。今年も庭のタカサゴユリが咲いた。
年年歳歳花相似

タカサゴユリ

その一方で人は去り行き、世は移ろう。
歳歳年年人不同

今年は骨身に堪える訃報が多い。そういう年齢になった、というのもあるだろうが。

明日ありと思ふ心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは

親鸞が詠んだとされるこの和歌が一際心に染みる。
とりわけ、広島で人類史上初の原爆によるジェノサイドが行われて78年目の今日には、嵐は私一人の嵐ではないと強く想う。

七日
月曜。今週は少し余裕があるので、できるだけ読書をしておきたい。
近ごろ、学生時代に読んだ本を再読したくて仕方ない。己の進歩を、あるいは停滞や退化を見つけたいのかもしれない。



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