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【part.3】30年後の公的年金をタイムマシンで見に行くと、どうなっているのか?

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トシ(30歳の社会人):博士、遊びにきたよ。おや、この子は?
博士:わしの孫じゃ、かわいいじゃろう。タイムマシンの話をしたら興味を示して遊びにきたんじゃ。
孫:トシさん、はじめまして。よろしくお願いいたします。
トシ:おっ、しっかりと挨拶できてさすが博士のお孫さんだな。
博士:ところで、タイムマシンで何を見に行きたいのかな?
孫:この前学校の授業で議論の時間があってさ、テーマは図書室に貼ってある小学生新聞の記事で、日本の人口構成の変化についてなんだよ。こんな図だったかな。

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日本の人口構成は神輿型から騎馬戦型、そして肩車型になりつつある。将来の日本はどうなるのか、年金は持続するのかという議論になってね。結論が出なくて宿題になったんだよ。おじいちゃん、未来に行って年金がどうなっているのか見せてくれないかな。
博士:なるほど。ところで学校ではどんな議論になったんじゃ?
孫:何も手を打たなかったら、将来は逆騎馬戦型、逆神輿型になって、一人で何十人もの高齢者を担ぐようになって、、。誰も子供を産んで育てるお金の余裕がなくなり、いずれ高齢者だけになって、そして国は滅亡する、、って進んでいったんだよ。絶望して泣きそうになる子も出てきてさ。そこで先生から「そうならないように日本はどうすべきか」をそれぞれ考えて来なさい、っていう宿題になったんだよなあ。
博士:おお、そりゃ難題じゃな。ところで君自身はどんな手を打てばいいと思っているのかな。
孫:まず、、肩車型って神輿型に例えると10人の高齢者を10人で担いでいるわけだよね。なら上に乗っている人のうち、元気な人は下に降りて担げばいいんじゃない?担げない人はとりあえず降りて自分の足で歩けばいいし、自分で歩けない人は、神輿につかまって歩くだけでもかなり軽くなるよね。逆に、担いでいる人の中でもケガや病気で担げなくなった時は上に乗ればいい。ってことは65歳や70歳っていう「年齢」で区切る事はあまり意味がないということか。みんなで協力して、より多くの人が担げばいいのかな。
博士:「ワシは今までずっとしっかり担いできたんじゃ!なのに年をとっても元気なうちはずっと担いでいろというのか!」って言いそうな隣のジイサンみたいな人が出てきたらどうする?
孫:早く神輿に乗りたい人には旧式の神輿で我慢してもらうしかないかもね。逆に、乗る権利があっても頑張って担ぎ続けた人には金の神輿が待っているとか。いろいろ選べるようにすればいいんじゃないかな。
博士:確かに、ないものねだりしても仕方ないからなあ。「少子高齢社会」を受け入れつつ社会や年金制度を「維持」するためには、結果として多くの人が「労働参加」して前向きに長く働く事になるんじゃろうなあ。
孫:でも一番心配なのは、今後日本は高齢者がどんどん増える一方、働く総人口は減っていって大変なことにならないか、っていうところだね。
博士:よしよし、よく自分でそこまで考えたな。さすが我が孫じゃ。じゃあそのあたりがどうなるのか、タイムマシンで少しづつ時を進めて見ていこう。さあさあ、早く乗って、、、出発!

トシ:さあ、今は2040年のようだ。どうなっているのかな。
孫:えっ、高齢者はさらに増えて、働いている人は減り続けているようだけど。これはかなりヤバいんじゃない?
博士:そうじゃな。「65歳以上の高齢者」は2015年の約3,400万人から2040年は約3,900万人で500万人増加する一方で、「労働力人口(70歳未満)」は約6,300万人から約5,600万人と700万人も減少している。ただこれは経済成長と労働参加が進んだ場合の人数であり、もし進まなかったら5,100万人となり、なんと1,200万人も減少してしまう。新たに働く若い世代は人口が少ない一方で、人口が多い高齢世代が働かずにリタイアしてしまうとかなり大変なことになりそうだぞ。じゃあさらに20年先の未来を見てみようか。

孫:2060年に着いたね。おや、高齢者が減っている?
博士:そうなんじゃ。さっきの2040年頃までが「高齢者増・労働人口減」が続く、「最も厳しい20年間」なんじゃ。しかしそれ以降は労働人口だけではなく高齢者人口も減少に転じ、この2060年くらいからは両人口はなだらかな推移となりバランスが取れていくんじゃ。

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※図:資料1のp7より

孫:ということはずっと高齢者が増え続けるわけじゃないんだ。でもよく考えたらそうだよね。少子化で少なくなった世代がそのまま年を取って高齢者になるわけだから、減るのは当然だよね。
トシ:でも、「最も厳しい20年間」をしのぐためには「労働参加」を進める以外の方策はあるのかな。
博士:まずは、公的年金の積立金を活用していくんじゃ。
トシ:あれ、公的年金って「賦課方式(仕送り方式)」で「積立方式」じゃないよね。積立金ってそんなにあるの?
博士:年金の厳しい時期を乗り越えるために、今まで少しづつ積立金も増やしており、約5年分の積立金を確保しておるんじゃ。他国は米国が3年、ドイツ1.6ケ月などで、日本の積立金はなかなか大した規模なんじゃよ。
孫:その積立金を運用しながら少しづつ取り崩して対応するんだね。
博士:さらにもう一つ、年金額は賃金・物価の上昇にともない増額するんじゃが、その増額割合を抑えて年金の実質水準を引き下げるという対応をしているんじゃ。長期的に年金収支が確保できる見通しが立ったら終了となるがな。
トシ:それって「マクロ経済スライド」だっけ。
博士:そうじゃ、ご名答!
孫:でもそもそもの「少子化」をどうにかしないといけないんじゃないの?
博士:そうなんじゃ。ただな、主要国を中心に教育資金など子供にかかる費用が高くなる中で、ある程度の「少子化」は避けられない流れだとワシは思っておる。ただ救いは日本の合計特殊出生率は2005年が底で、そこから上昇に転じていることじゃ。それでも国が「少子化対策」でやるべきことはまだまだあるじゃろう。今後の社会保障は「子育て」がテーマになりそうだしな。
孫:ところでおじいちゃん、もっと先の未来を見ることはできないの?90年後とか、100年後とか。
博士:おっ、未知の領域じゃな。この低予算タイムマシンが耐えることができるかどうか、、。よし、チャレンジだ、行ってみよう!

博士:さあどうだ!2110年じゃ!
孫:風景も人々もモヤがかかって良く見えないよ~。
博士:うむ。このタイムマシンの解像度はこれが限界じゃ。ただ、年金はおぼろげながら見えそうじゃ。どうかな、、おっ積立金は1年分を確保しつつ乗り切ったようじゃぞ。当初の目標通りじゃ!100年間の公的年金給付総額のうち1割程度は積立金が貢献しておる。大したもんじゃ。
トシ:ここまでの道のりは平坦ではなかったんだろうなあ。5年毎の財政検証でチェックをしながら、「経済成長」「労働参加」「年金制度改定」を全世代で協力してきたんだろうね。システムの再設計も繰り返して。日本人が総力戦で頑張りぬいた結果だね。ちょっと感動して泣けてきたよ。
孫:つまり、単純に「少子高齢化だから日本は終わりだ」みたいな考え方ってあまり意味がないんだね。学校でも「どうすればいいのか」をまた議論してみるよ。
博士:そうじゃ。まず現状を把握し、将来に向けて計画し、実態に合わせ修正する。自分たちで考えて実行する大人になってくれよ。

博士:さて、現代に戻ったぞ。あっ、、、タイムマシンから煙が!無理して100年近い未来までいったからオーバーヒートしたか。こりゃ、しばらく使い物にならんな。
孫:おじいちゃん、無理いってごめんなさい、、。
博士:いや、そろそろ故障する時期だったんじゃよ。でも心配するなよ。開発中だったヒト型AIロボットが間もなく完成しそうなんだ。せっかくなので往年の美人女優をモデルにしようと思っておる。乞うご期待じゃ。はっはっはっ。

おしまい

※この話はフィクションですが、数値やデータは以下を参考にしています。

 資料1:「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」 p.7
    (第9回社会保障審議会年金部会 2019年8月27日)
     https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000540584.pdf
 資料2:「日本の将来推計人口(平成29年推計)」p.13
            (国立社会保障・人口問題研究所)
               http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_gaiyou.pdf
 資料3:「労働力需給の推計 ―労働力需給モデル(2018年度版)による
     将来推計―」p.93
    (独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
    https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/documents/209.pdf
 資料4:「諸外国の年金制度の動向について」p.25
    (厚生労働省年金局 2018年7月30日)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000339624.pdf



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