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135円/1ドル、1998年以来の円安水準

今週の外国為替市場で円が対ドルで下落し、135円台半ば/1ドルとなり、1998年10月以来、24年ぶりの円安ドル高水準となったことは、ニュース等でご存知かと思います。今回は、なぜ円安ドル高が加速しているのか、円安ドル高が進むことで私たちの生活にどのような影響があるのかを解説します。

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24年間のドル/円の推移チャートです。1990年代後半の推移と同水準であることがわかります。


🔹円安の背景
今回の円安の背景には、米連邦準備理事会(FRB)がインフレを抑制するために金融引き締めの姿勢を強めており、それに対して日銀は、大規模な金融緩和を継続する方針で、日米の金利差がさらに拡大するとされています。

さらに、6月10日に発表されたアメリカの5月の消費者物価指数は前年同月比では8.6%上昇となり、1981年12月以来、約40年ぶりの記録的な水準となり、アメリカの利上げが加速するのではないかという見方から、1週間で5円近い値下がりとなり、円安が加速しました。

また、6月15日のFRBの発表では、約27年ぶりとなる0.75%の利上げを決定しました。FRBの利上げペースが加速するとの見方から米長期金利が一段と上昇し、日米金利差の拡大を背景にした円売り/ドル買いの動きが強まっていると考えられます。


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日米の10年債利回りを比較したチャートです。2021年6月以降、日米の金利差が広がっていることがわかると思います。


🔹ここで覚えておきたい「FRB」とは
FRB:Federal Reserve Board(米連邦準備理事会)とは、アメリカの中央銀行制度(Federal Reserve System)の中心的な機関のことで、アメリカの中央銀行にあたります。アメリカ経済が世界経済の中心的存在であり、FRBの動向は世界的に注目され、世界経済を大きく動かしています。FRBが実施する金融政策や、アメリカの金融政策を決定するFRBの会合である米連邦公開市場委員会(FOMC:Federal Open Market Committee)で議論された内容や議長の発言は、世界経済を動かすほど、大きな力を持っています。


🔹円安の影響
円安が進むことは、日常生活においては、デメリットの方が多いと言われています。私たちの生活に最も影響を与えると考えられることは、輸入品の物価の上昇です。日本人の多くは、海外から輸入したもの、あるいは輸入したものを原料として作られたものを購入しています。海外から輸入品の価格が円安によって上昇することで、経済的な負担が大きくなると考えられます。

ここで例を挙げます。アメリカからお肉1kgを100ドルで輸入するとしましょう。1ドルが100円であれば、輸入するときには10,000円出せば、お肉1kgが買えます。しかし、円安が進み1ドルが130円になると、1kgのお肉を輸入するのに13,000円出さなければ、買えなくなります。

また、現在はウクライナ問題が続いていることもあり、様々な輸入製品の価格が、既に上がっている状況であり、円安と合わせると急速に物価が上昇している状況です。そして、給料や収入が上がらなければ、購買力が国全体として低下します。

個人とは反対に、輸出を主とする企業はドルで支払いを受けることになるので利益を上げやすくなります。また新型コロナウイルスの影響が緩和され、外国人観光客が増えれば、円安により買い物などをしやすいため、観光地などでは、恩恵を受けることにもなりそうです。

また、個人で既に日本国外の資産へ投資している方は、円安によりそもそもの資産(キャピタル・ゲイン)や、利子、配当(インカム・ゲイン)が増える可能性は大きく、恩恵を得られるでしょう。


🔹まとめ
現在の日本では、景気が後退(=給料が上がらない)していく中でインフレ(物価上昇)が同時進行する「スタグフレーション」と、高水準の円安が起こっています。
例えばインフレ対策として、米国の金利水準が反映されるドル建てのMMF(投資信託)や、物価に連動する物価連動国債、米国債などへの投資が挙げられます。
既に円安が進んでいますが、長期に渡って、日本以外の海外で資産を持つことの重要性が、今回の円安で露呈していると思います。ご自身の資産の防衛策リスクヘッジを用意しておきましょう。


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