小春 ひよりの真実(創作文・ショートストーリー)
私はいつからこんな人間になったんだろう
生まれた時からだろうか
結婚するまでの私は人柄の良さを褒められていたし優しいところが長所だと思っていたのに
すごく
陰湿で意地悪な人間だったのかもしれない
姑が亡くなった
姑は私を嫌っていた
私のやることなすこと全てを嫌い暴言を吐き冷たい目で睨んだ
私は姑に好かれようと自分なりに努力した
床の雑巾がけを一日に何回も命令されてもニコニコしながら床を拭いた
膝が真っ黒になった
子どもと散歩をして「勝手に外を歩くな」と怒鳴られたときもスミマセンと頭を下げた
体調が悪くて家事ができず寝込んでいたら
「一生いじめてやるから」と睨まれた
これらは、ほんの本当にわずかな一部で
嫌われる人になりきっていた私は
嫌われ者だった
唯一の頼りだった夫は
「嫁なんだから仕方ない我慢しろ」というだけ
私は孤立していたし孤独だった
いつしか私は
姑の前で笑わなくなった
正確には笑えなくなっていた
姑に対して
自分のエネルギーを1%いや1ミリたりとも
消費したくなかった
それは無視という行為になるのだろう
無視することで
私は自身の心を保ったりコントロールするしか方法が見つからなかったからそうした
姑が亡くなったとき
涙などひと粒もでなかった
心の奥でホッとしていた
手を合わせながら「死んでくれてありがとうございます」と心でささやいていた
もう二度と睨まれたり怒鳴られたり意地悪をされないと思ったら
うれしくて安堵しかなかった
私はいつから
こんな人間になったんだろう
また、優しい人間に戻れるんだろうか
優しいふりした悪魔は
きっと他にもいる!と思う
ただ云わないだけ
私にはもう無視したい相手はいない
私らしさを取り戻せるなら取り戻していきたい
小春 ひより 47才