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【企画編】実話がきっかけで生まれました #週刊MONDAYS #映画MONDAYS

※週刊MONDAYSは、映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』を観てくださった皆さんに贈る、特別連載……と銘打った、制作スタッフたちの思いの丈です。毎週月曜日にお届けいたします。

映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』をご覧いただき、誠にありがとうございました。週刊MONDAYS、記念すべき第1回は、MONDAYSが生まれるまでの「企画編」をお届けいたします。

どのように企画が生まれたのか? どんな風に設定の骨子を固めたのか? また、裏設定は……? など、裏側をお話しさせてください。

(文・脚本担当/夏生さえり)



※本記事はネタバレを含みます。

作品をご覧になった後に、お読みください。


MONDAYSが生まれるまで

MONDAYSのクレジットに、Story by TAKE Cという表記があったことに気づいた方はいらっしゃるでしょうか。TAKE C(テイクシー)とは、監督の竹林亮と脚本の夏生さえりを中心としたCHOCOLATE Inc.(以下チョコレイト)内のストーリーチームのことで、多くの人の協力を得ながら作る「共同脚本」という形を取っており、これまですでに7作品を作ってきました。

TAKE Cの公式ツイッターはこちら

MONDAYSの始まりは、いつものようにアイディアの持ち寄りから。

「次につくるものは、なにかスカッとする、疾走感のある、楽しいものにしたいね」ということだけを決めて、監督の竹林と脚本の夏生がそれぞれ企画アイディアを複数持ち寄り、最終候補にあがったのがMONDAYSの先駆けである「エンドレス上司」でした。

最初のあらすじ

この「エンドレス上司」。
思いついたきっかけは、なんと実話で……。

私たちの上司である栗林和明さんのツイートを、夏生が見ていたときのこと。「あれ…?このツイート、前も全く同じようなものを見たような……?」。同僚にスクリーンショットで共有し「これ前も見た気がするんだけど」と震える手で伝えると、同僚が「え。私も同じこと思ってた……怖! 繰り返してる?」と話が盛り上がり、もしかして栗林さんはタイムループしているのでは? 本人は繰り返していることに気づいていないのでは? 私たちだけがこの現象に気づいてしまったのでは? ……と、そんなたわいもない世間話から、この原案は生まれました。

その後、会社に所属している多くのメンバーからコメントをもらい、この「エンドレス上司(仮)」がスタートしました。

(クリックで大きく表示できます)

オフィス×タイムループ

そもそも2019年に作った「ハロー!ブランニューワールド(もう限界。無理。逃げ出したい。)」の物語設定もタイムループもの。作る際には、多くのタイムループ作品を研究したので、TAKE Cチームにとって、タイムループ作品は思い入れがあるものでした。

タイムループ映画の多くは、主人公だけがその異常な現象に気づいていて、他の人に「繰り返してるよね?」と尋ねても、みんな怪訝な顔をしてしまうのが定番。でも、もし、街のモブキャラ達が「え?たしかに。昨日も同じことしてたな」と気づいてしまったらどうなるんだろう? もしかしてそこを少し逸らせて考えてみたら、確立したジャンルの中でも新しい視点を入れこめるのでは……?

「確かにそれはまだ見たことない」
「面白そう」
「でもまたタイムループものかあ」

そう笑いながらも、タイムループという確立されたジャンルの面白さと深みを活かしたまま、新しい試みをしてみようか! と無邪気な思いでした(これがそのあとで、とんでもない苦労を招くとは…)。

複雑な仕組みに混乱しながら、やりとりを続けるなかで、企画(設定)の骨子を固めていきました。

舞台が「職場」であることを考えれば、社会生活のメタファーとして「1週間」をループしたほうがいい、舞台はできるだけ「同じことを繰り返し取り組むような職種」か、または死ぬほど忙しくて切羽詰まっている1週間を題材にしよう、さらには上申制度やプレゼンでの説得など、会社ならではのディテールはどんどん加えよう……と、監督のアイディアで少しずつ設定を肉付けしていきました。

仕事が忙しくなってくると、今日が何日で、何曜日なのかわからなくなるときって、誰しもありますよね。自分の目の前のことだけに意識がいってしまうこともある。もし、私たちがタイムループしていても気づかないかも。なんていう、自分たちにも思い当たる気分を軸に、自嘲的な気分で脚本を作る日々。


とはいえ、「一人ずつタイムループに気づく」というのは簡単なようでやはり難易度の高いシステムで……、監督と脚本家だけではお手上げ状態に。社内の東大出身メンバーたちを招集しては「このタイムループに、何か矛盾はないか」と相談をしたり、「この世界の仕組みはどうなっているといいと思うか」とアイディアをもらったり。また、主人公の吉川が実際に作っている企画書の内容も、社内のクリエイティブディレクターを実際に召集して、「味噌汁炭酸タブレットを売る企画を考えてくれ」と無茶振りをして、実際に企画を出してもらったものを使用したりと、本当に多くの人の力を借りながら、作り込んでいきました。

意識を変えるキッカケとなる「ハト」の合図も決まり、なんとか脚本を作っていったのですが……。

もともと30分程度の短編作品のつもり(!)が、「一週間タイムループ」という設定にしてしまったせいで描く内容が一気に増え、いつのまにか「なんとか50分にはおさめたい脚本」に変わり、やがて120分くらいに膨らんで……。最終的には、なんとか80分に収めた……という、紆余曲折があって、やっと今皆さんにみていただいたMONDAYSが出来上がったということです。

裏設定てんこ盛り

そのため、膨大な脚本からテンポよく観てもらえる作品にするために削った描写がたくさんあります。いくつか裏設定をご紹介させてください。

・先輩の森山は腐った牛乳を飲んでしまったがゆえに、お腹を壊している。

お腹を壊すのを何周も繰り返していた森山は、トイレにこもっているせいで仕事がはかどっていない。それに気づいた吉川が「その牛乳、腐ってますよ」と毎週伝えることで、業務効率はさらにアップしていきます。(現状では、資料を送った後の吉川が眠りそうになるときに、後輩2人が「いつもそのまま寝ちゃうんですよね」と告げるシーンで、後ろをお腹をさすりながら歩く森山が写り込み、直後にお腹がぎゅるるると鳴る音が入っています)。

・仕事が鬼のスピードで出来るようになった主人公・吉川は10案どころか、A~Z案を用意している

よく見ると、吉川の机には「A~Z案」がズラリ並んでいます。

・後輩の遠藤は、部長をプレゼンで説得するのに成功したあと「やっと会える!」と叫んでいる

ループに気づいた直後、しばらく遊び惚けていた遠藤は、学生の頃のようにバックパッカーをしながら日本や海外を旅していました。そうしてスペインのロンダという街で運命の人を見つけるのですが、このループを抜け出さないことには彼女と仲を深めることもできないことに気づき、早く彼女に会いたい!の一心で、ループを抜け出す作業に集中しています。「やっと会える!」「僕には仕事よりも大事なものがありますから」と言うセリフはすべて彼女を想いながら発した言葉です(ちなみにこれは、脚本の夏生が設定を作り込む際に「一週間もタイムループしているんだったら、私なら海外旅行に行っちゃいますよ!?スペインとか。はじめてひとり旅をしたロンダとかに」と言ったことに由来しています)。

・「70回!ここまでで70回よ!」の涙ぐましい努力

ずっと前にループに気づいていた神田川聖子さんは、今までに何回ループしていたかを忘れないために、「目覚め」たあとにものすごい勢いで手帳に正の字を書いている。現状の映像では確認することができませんが、その演技は毎回していただきました。また、毎週金曜日の夜、永久部長と神田川さんは飲みに行きますが、ここで神田川さんは”アレ”を仕上げてもらえるように必死に説得を試みています。みんながブレスレットを壊そうと奮闘していることには気づいているものの、(本当にブレスレットなのかしら)と訝しがる気持ちがあり、口を出さず、自分でできること(説得)を頑張っていたのでした……。

・部長のブレスレットは……ラストシーンでは壊れている

”アレ”を仕上げたあと、部長がトイレに行った際、手首につけていたブレスレットは壊れてしまったようで……、部長は最後のシーンでは腕輪をつけていません(さあ、この異常な現象の原因は…、本当は何のせいだったんでしょうね?)。 

という具合に、他にも「そんなの誰も気づかないよ」な裏設定がてんこ盛りなのですが、それもこれもすべては120分にも及びそうな脚本があったからです。裏話はまだまだあるので、そのうち紹介させてください。

長々と語りすぎてしまいました。最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。たくさんの方々に白い鳩の合図を届けられるよう、応援を、どうぞよろしくお願いいたします!

次回は「脚本編」をお届けいたします。
共同脚本の作り方や、実はキャラにはモデルがいたお話、監督と脚本家のやりとりの一部、途中で悪役になりかけたキャラの話などなどお届けいたします。それではまた、月曜日!👐

※週刊MONDAYSは、映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』を観てくださった皆さんに贈る、特別連載……と銘打った、制作スタッフたちの思いの丈です。

更新情報は、公式ツイッターをご覧ください。

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