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ディスクレビューしてみた④ ずっと真夜中でいいのに。「沈香学」

はぁ〜いこんにちは!
2023年のベストアルバムを自分なりにレビューする企画4枚目!
今回はずっと真夜中でいいのに。3枚目のフルアルバム「沈香学」をレビュー。2021年の「あいつら全員同窓会」から現在までのシングル曲も収録。間違いなくずとまよ歴代最高傑作。ぜひ参考にして聴いてみてほしい。

1.花一匁
ルパン三世のオープニングを思い出させるイントロから圧倒的スタートを切る。「ずっと真夜中でいいのに。」とバンド名から始まる歌詞もありそうでなかったかもしれない。まさに1曲目にふさわしく軽快に幕を開けた。

2.残機
ベースのスラップがかっこよすぎて一気に耳から全身が惹き込まれる。Aメロからずとまよワールドが炸裂!歌詞の魅力はリズムに合わせた言葉選びにある。「いらっしゃいませ ニンニク増しで目指した健康体」や、サビの「うざいくらい叫んだって喰らったって譲れない日々よ 栄養になってまた汚しあえ」などついメロディーに乗せて歌いたくなる部分が多数あって、ACAねが書く歌詞にはその意味を考察していくより流れてくるものに身を任せるほうが気持ちがいいのかもしれない。

3.猫リセット
ゲーム音楽のようなピコピコ音が印象的な始まり。前2曲に比べると少し寂しげ?切なさ?が残るメロディーと歌い方。やはり言葉選びというかうまく韻を踏みながら流れていく歌詞が面白い。間奏にまたピコピコゲーム音。ファミコンでRPGとかアーケードゲームやってるみたいで楽しいしどこかエモさも感じれる。(アルバム序盤の守備的な楽曲っていう表現は合ってるかわからないが降ってきたから許して 笑)

4.綺羅キラー (feat. Mori Calliope)
バーチャルYouTuberでラッパーのMori Calliopeがフィーチャリングに迎えられた。ずとまよの楽曲の中でフィーチャリングアーティストが参加したのはこれな初となる。ギター単独で鳴るイントロがかっこいい。ずとまよは常にイントロが印象的で、曲はいかに始まり方、要は漫才のつかみみたいなことが大事かというのがわかる。そしてAメロがスラスラっと、ラップもスラスラ、そこからサビまでスラスラスラっと怒涛のように言葉が流れていくのが本当にすごい。(カラオケで歌えたら気持ちいいだろうな)
Mori Calliopeのラップ、ACAねの高音ボイスとリズムメロディーが絡み合い、アップダウンの激しい構成になっているが、ライブでもなんなく完璧にこなすことができる姿は息を呑むほどだ。

5.馴れ合いサーブ
シングルカットされていないアルバム収録曲。歪んだベースとドラムの入りがなんともオルタナ!サマソニの1曲目がこの曲だったらしいがその場にいたら気絶してる。Bメロ〜サビに向かうまでの流れで手拍子したくなる。なぜかここのメロディーに和を感じてしまうのはなぜだろう。全体通してこの曲個人的にお気に入り。Do downnnnn

6.あいつら全員同窓会
きましたずとまよ最難易度であろうこの曲。一度聴けばそれは明らかで、とても舌と呼吸が追いつかない 笑 特に2サビから間奏に入るまで一体どこで息継ぎをしたらいいのかわからなくなるほど。また「どうでもいいから置いてった あいつら全員同窓会」と続く歌詞の意味を考えるのも楽しい。あの人は今こうなってるとか、そういう「内輪ネタ」で盛り上がるのが同窓会。ただ主人公はまだ下積み中。からかわれるのが目に見えてて、自然体でいたいけどそんなのどうでもよくなってがんばってねばったけど周囲のことは気にせず自分らしくあろうとし、最終的にはその場を抜け出し葛藤に打ち勝った、自分を肯定することができたと解釈できる。だから「置いてった」という表現も腑に落ちる。ずとまよは楽曲やMVの考察も楽しみの一つだ。

7.夏枯れ
ここまでガンガン飛ばしてきたが、アルバム中盤からスローダウン。シティポップ風味感じられるリラックスできる夏ソング。2022年9月公開の「雨を告げる漂流団地」の挿入歌となる。アニメ作品の楽曲を手がけるのは今回が初となる。
ノスタルジーを感じさせるような心地よいリズムが特徴だ。ここからアルバム後半はこういった楽曲が多く並ぶ。

8.袖のキルト
こちらも肩の力を抜いて楽しめる明るいバラード。学校を連想させるワードが散りばめられており「今日も机でおでこ冷ましてる」という歌詞が可愛いしセンスの塊。学校で味わった甘酸っぱい青春恋模様を描いた楽曲。「袖に触れる瞬間の声 君は靡く 僕は願う」とこれは告白のシーンか?「今はまだ このままで」と続き「言いたい言葉走って 叫びたい気持ちを恥じらって」キュンとくる… アオハルすぎる… こんな気持ちにもさせてくれるのか。

9.不法侵入
「戻れない僕の 耳にピリオド」と珍しくイントロなしでスタートする。アルバム中最もエモーショナルな歌詞とメロディー。相手のことが好きであるが故に、気持ちを読み取ろうと勝手に心の中に「不法侵入」するような感覚を表しているのではないだろうか。胸を締め付けられるような、切なくも美しい、同時に温かい気持ちにもなれる楽曲。

10.ばかじゃないのに
これも切な温かい恋愛ソング。
ACAねが書く歌詞の中では珍しくとてもストレートに伝わる表現が多く見られる。サビに注目して見てみると、惹かれあっていた人物がいたが、実らなかったあるいは関係が終わってしまっている恋があった。一瞬の夏、楽しかった思い出を振り返りながら、あの時の後悔、そしてこれから「君を思い返す日々だけで過ごしていける?」という不安と、それだけ本気になれる相手と出会えたことへの「ありがとう」と感謝の言葉もみられる。そんな恋ほど心に残っているものです。

11.消えてしまいそうです
「夏枯れ」と共にアニメ映画「雨を告げる漂流団地」のこちらは主題歌になっている楽曲。「夏枯れ」とは少し雰囲気が違い明るい印象。ギター、ベース、ドラム、シンセ、そしてホーンのグルーヴ感が楽曲のテンションそして聴き手の気持ちも走らせていく。ずとまよのシティポップサウンドにのっかるACAねの歌声が楽曲をよりキャッチーなものにしていく。このあとの「ミラーチューン」への流れが個人的に神展開。

12.ミラーチューン
「消えてしまいそうです」の雰囲気のままこのイントロに流れ込む感じがたまらなく好き。そして終盤にキラキラしたこのアルバムの1番の聴きどころと言ってもいいまさにキラーチューンを持ってくるところはもうここで素晴らしい作品だと思える。MVも観てるのが楽しくて、ずとまよの楽曲の中でも本当に大好きな曲。

13.上辺の私自身なんだよ
アルバムのラストをバラードで締めくくる。シューゲイズのようなドリームポップのような音が心地いい。最後の最後まで、ACAねのヴォーカルの魅力を感じることができる。
なんとなく、作品としては「ミラーチューン」で締めくくった感、キラキラしたずとまよらしさでエンディングを迎えたような気持ちになっていたが、+1この曲がボーナストラックのような捉え方をしてもいいのかもしれないと思う。満足感が味わえる。


【まとめ】
ヴォーカルACAねの声、キャラクター、歌詞の面白さ、バンドの個性的な楽器、ライブの迫力… 魅力は語りきれないほど。
2018年「秒針を噛む」でセンセーショナルなデビューを果たしたずとまよだが、それからフルアルバム3枚目にして最高到達点に達したかと言われたら、きっとそうじゃない。まだまだとんでもない可能性を秘めているし、次回作へ向けてまた違ったアプローチで曲を作っていくことも期待できる。今年は生のライブを観ることを目標にしたい。ずとまよのライブの魅力を感じたい。

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