見出し画像

アイドルディスクレビュー RAY「Camellia」

はぁ〜いこんにちは!
久しぶりのディスクレビューです。今回は昨年個人的に最も刺さった5人組オルタナティブロックアイドルRAYの3rdアルバム「Camellia」を紹介していきたいと思います。シューゲイズ、テクノ、激情ハードコア、オルタナ、さらに民族音楽等異分野ジャンルとの融合で、アイドルファンのみならずコアな音楽ファンをも唸らせる抜群の楽曲センスとメンバー個々の歌とダンスの表現力が魅力。

アイドルと聞くと一般的には坂道系の清楚なイメージだったり、ももクロやでんぱ組といったキラキラしていてパワフルなイメージ、BiSHなどのエモーショナルなロックを鳴らすグループが挙げられるが、その概念、ぶっ飛ばしてください 笑
近年のアイドル界様々なジャンルを取り入れた音楽を主としているグループが数多く存在していて、その中でもRAYはシューゲイズという80〜90年代前半にかけて流行したロックのジャンルの1つ。轟音ギターと囁くようなヴォーカル、浮遊感のあるメロディーが特徴。気になった方はシューゲイザーの代表的なバンドmy bloody valentineのonly shallowをぜひ聴いてみてほしい。

前置きが長くなってしまったが、ここから本編のレビューにいきたい。

1.Overture
4つ打ちのリズムでアルバムがスタートする。オープニングらしい期待感がうずうずする。ライブ前のSEとして長く使われている楽曲のようだ。

2.秘密がいたいよ
イントロから続くギターのフレーズが耳に残る。RAYの楽曲の中でもかなりとっつきやすい曲調で、アルバム冒頭にぴったりな疾走感。サビの「いたいよ いたいよ」の繰り返しとメロディーにはやられる。痛いけど気持ちいい。ライブでは一緒にこのいたいよダンス(勝手に命名)を踊りたい。

3.フロンティア
曲調がガラッと変わってテクノっぽいエレクトロな感じで、キラキラした世界観が惹き込まれる。もうイントロの4つ打ちから胸の高まりが止まらない。こういういわゆるEDMの曲はサビまでの盛り上がりが大事になってくるが、2サビで期待通りの展開。「君はフロンティア〜」から手拍子が始まって、だんだん音数が増えていき、一気に解き放たれる感じ、たまらない。「明日へ向かうのは君のためではなくて、それでもきっと 生きることが君への愛(love)」というフレーズが素敵。自分が2023年最も聴いた曲がこの「フロンティア」でした。

4.ディス・イズ・ノット・ア・ラブソング
ミドルテンポのシューゲイズ曲。哀愁、色気、大人な雰囲気たっぷりで魅了されてしまう。Aメロのギターがサビに入るときグッと厚みが増し、これぞシューゲイズな音に変わる。「Love song〜」と連呼されるフレーズが頭に残るが最後には「This is not a love song」と歌うのはさすがにズルすぎる。各メンバーの歌いかたも神々しくも感じられた。

5.KAMONE
メンバーの内山結愛曰く、こんな凄まじい曲どうやって歌えばいいのかと頭を抱えたそう。そもそも、アイドルが歌うべき曲ではない(褒めてる) それくらいこのアルバム内で存在感を放っている楽曲の一つ。イントロから歌い出しには驚かされた。歌い方と録音の仕方が今までとは明らかに違って聞こえる。まるで何かが憑依してるかのような「秘密がいたいよ」のときのRAYはどこへ行ったのかと思うほど、すごかった。青木ロビンさんとのタッグは素晴らしい。

6.火曜日の雨
RAY史上、いやアイドルソング史上最も尖り散らかしてると断言してもいいほどの衝撃曲。とにかくエッジの効きまくったサウンドと、あえて音に埋もれるように録っていると思われるボーカルの声 (全体的に歌詞が聞き取りにくい) など、アイドルがやらなそうなことをバンバン取り込んで、それがRAYらしさを生み出している。とんでもないグループだ。「安いレモンティーを、噴き出して笑ってさ。」の歌い方がお気に入り。そこからサビで一気に視界が晴れるというか、ポップな感じにすることで聴きやすさもプラスされている。ラストの各メンバーが「青 青 青」と連呼するところはライブでは全員が正気を失っている。かっこよすぎる。

7.読書日記
ここから後半戦。リズムに乗ることに苦戦したというこの変拍子が特徴的で、特にイントロはドラムも入っていないので相当難易度は高いと思う。Aメロからサビに入るまで2分半かかるが、それまでの構成がドラマティックで壮大、Bメロでザクザクと鳴るギターが走り幅跳びの助走のようで、そこから踏切りを思いっきり踏むようにサビに突入する。ライブ映像でも圧巻のパフォーマンスが見られる。

8.Lightwave
アルバム中盤の曲調からスッと力が抜け、雲の切れ間から日差しがさすようなさわやかな夏ソング。そろそろこういう曲も欲しくなるタイミングでしっかり入れ込んでくるあたり神曲順。シューゲイズサウンドってやや重みがあったりダークな面をイメージとして持つことが多いが、こういった抜け感のある楽曲をこの後半に散りばめていて、そしてどこか "アイドルらしさ" も忘れないそのバランスは沼ってしまう要素の一つ。

9.Bloom
「Lightwave」から抜け感のある楽曲が並ぶ。イントロからサビまでの流れが最高に気持ちいい。ベランダでうとうとしながら聴いていたい。2番Aメロの「予感を辿れば どこかで見た遠く甘い記憶〜」からBメロに入るまでのメロディー、ギターの音、声、この夢心地な浮遊感は最大の心地よさ。歌い方も少し優しい感じがして耳にそっと寄り添ってくれるように聞こえる。美しい曲。

10.マテリエ
「秘密がいたいよ」以来のスピード感があり澄み切った空気が清々しいわずか2:37で駆け抜ける楽曲。アルバム後半はみんな天使みたいに歌っている。ここまで10曲が終わり全く飽きさせないのは曲ごとにメインの楽器が変わったり歌い方の変化や異なる音楽ジャンルを使い分けてそしてバランスよく並べているからだと思った。これがアイドル楽曲の魅力の一つ。

11.ため息をさがして
ラストを飾るのは最も壮大で儚く、尊く、そして破壊的に美しい6:00のバラード。「教えて 深呼吸でこころは計れますか? ねぇ、変わりゆくもの 変わらないもの 愛おしいよ」「教えて 悲しい日もいつかは滲みますか? ねぇ、こぼれ落ちたため息をさがして」最後にこんな曲がくるのなんてズルい。歌声も歌詞ももちろんだが、後ろで鳴ってる音だけ一つ一つ聴いても何かが溢れてきそう。アルバムとして最高の終わり方。


【まとめ】
日本のアイドル音楽の長い歴史の中で、アイドル×シューゲイザーを発明してくれた人達に拍手を送りたくなりました。このかけ算は本当に天才的。普段はJ-POPや日本のロックバンドの曲、洋楽まで好んで聴いているが、何回も何回もリピートして聴ける作品ってそこまで多くなくて、自分の好みの問題もあるかもしれないが、日本のアイドルの曲でここまで素晴らしい作品にたくさん出会えるなんて昔は思ってもいなかった。そしてその中でこの「Camellia」はポストロックと変拍子で話題を呼んだsora tob sakanaの「cocoon ep」に並ぶ名盤だと僕は思う。

すべての音楽ファンに聴いてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?