見出し画像

カフェモカと新しい人

春が始まっているということは、いろいろな場面でみかけることができる。

例年だと、ちょっといい気分の人々が街中に増えてくる、特に会社帰りに、真っ赤な顔で大笑いしているおじさんたちが増える。そして、桜の花が咲くのはとても分かりやすいけれど、ほかにもある。例えば、なんとなくたどたどしい、言うなれば“頼りない大人たち”が増えてくる時期でもある。

カフェ、駅員さん、そのほかお店や仕事の電話の先など、「新しい人」なんて呼ばれている人がいるはずだ。


よく行くカフェで、よく頼むドリンクがある。その時も、少し迷ったけれど、それにした。

お前、甘いもの好きだろ、と誰が見ても分かる「カフェモカ」。エスプレッソと甘いココアの上に、たっぷりとホイップクリームが座り、さらにチョコを纏う。甘くない・・わけがない。

さて、それを注文してみた。レジの前で店員さんが無言になっている。精算を終えて、ある意味では僕との仕事は終わってしまったわけで、なんとも手持ち無沙汰そう。

レジの奥では、背中を向けてドリンクを作っている様子の、別の店員さんがいた。普段よりも、時間がかかっている気がする。難しいドリンクではないし、季節限定のものでないけれど。

僕のあとにきたお客さんのカフェラテが出来上がったのち、慌ただしくトレイに載せられた、カフェモカ。



いや、めっちゃシズル感(笑)

甘い甘い液体が、とろりと溢れ出して、カップを伝って模様を作っている。まるで、テレビCMのような、溢れる瞬間を目の前で見ることができた。

こんなに甘そうなのは、初めてだった。きっと、味はいつもと同じだけれど、もりもりだ。

レジの店員さんにはきっとこちら側は見えていない、しかし、こぼれ落ちそうな見た目だったこともあって、ちょっと笑いを堪えている感じだった。

上のクリームを、すぐに掬わなければ、さらにこぼれてしまうから、テーブルに着くと、急いでスプーンですくった。おそらく、ホイップが途中で足りなくなって、追加したときに、溶けたものが溢れていると思われた。

こういうドリンクの正しい食べ方(飲み方?)を知らないけれど、甘いものが食べたいとき、僕はカフェモカを頼んで、トッピングのチョコソースがけのクリームを食べる。

作る側からすれば、アイスにするとホイップは溶けにくいけれど、ホットだとクリームを載せる速度もとても大事だ。しかして、ホットの良さは、その甘さを代表とした味の濃厚さである。

今日も美味しかった。


きっと、今日のカフェモカは、まだ慣れていない「新人さん」が作ったのではないかと、そんなふうに感じた。

作り始めたら戻れない工程、求められるスピード、それは緊張が伴う。レジの声を頼りにオーダーを聞き分け、エスプレッソはマシンが淹れてくれるにしても、その後の工程を自分だけでやること、は慣れるまでキツそうだ。

きっとドキドキしながら作っていただろうし、きっと「もっと綺麗にできたはず」と思っていただろう。

春は、ちょっと頼りない大人たちが増える。

春の陽気も手伝って、まぁいいかと待ってあげられる。一生懸命なら、応援してあげようかと思ったりもする。

僕だって、新しい職場に行けば、新しいことを覚えたり考えたりしなくてはならなくなるから、頼りない大人になるだろう。そして、とてもデキる先輩たちだって、同じような時期があり、同じように見えていたのかも知れない。

だから、新しい人として、社会人になった皆さん、大丈夫だ。・・・と思う。


#カフェ #シズル #甘い  

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、子どもたちのおやつ代に充てます。 これまでの記録などhttps://note.com/monbon/n/nfb1fb73686fd