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異世界★自衛隊 #書もつ

度重なる災害に、日本のあちこちが傷だらけになり、そこここに困った人がいて、その度にテレビに映し出されるのは、迷彩柄の頼もしい自衛官たちかも知れない。

毎週木曜日には、読んだ本のことを書いている。先月から引き続いて、エッセイを読む月間である。

作家の有川ひろの作品群には「自衛隊3部作」と呼ばれているものがある。陸・海・空のそれぞれの自衛官と民間人との関わり(というか恋愛)を描いたもので、それぞれに部隊の特徴が描かれて、中の人の克明な生き様を想像することができる。

そんな自衛官としての経験がある、この作品の筆者は、自衛官として生きていくこと、特に彼らが住まう駐屯地での生活を「異世界転生」と表現している。しかし、この作品には辛い訓練に耐える姿も、屈強な肉体を作るためのストイックな限界異世界は描かれていない。

いったいどんな人たちが暮らしているのか。

丈夫と書いて、ますらおと読む。ますらお、が住んでいる。程度の差こそあれ、ますらおぶりは華々しい。そんなますらお達の世界は、いったいどんな異世界なのだろうか。

陸上自衛隊ますらお日記
ぱやぱやくん

閉じた世界というのは、独特な発展を遂げ、また外界にその情報が伝わりにくい。そこに風穴を開けるような、ちょっと意欲的だな、と思わされる作品だった。

作中のエピソードがある。

自衛官音楽隊の隊員も時折り訓練に参加するが、演奏専門の集団であるため、いわゆる戦力としてはかなり不足する。しかし、たまにハイスペックな音楽隊員がいて、強めの助っ人ゲームキャラのように珍重されるのだそうだ。

僕の友人にも同じような道を辿った強者がいる。自衛官ではないが、楽器が上手く音楽隊員として入隊したものの、のちの訓練で目覚めて、現場の生え抜きの隊員でさえも狭き門である特殊部隊への入隊を叶えた。

さきの東日本大震災でも、とある場所での彼の背中と思われる映像を見かけた。楽器もうまくて、誰かの命も救える、そしてイケメンだなんて、もう敵わない。降参である。

この筆者の特徴は、豊富な比喩表現だ。異世界転生に始まって、休日の自衛官は田舎の中学生のようなファッション、鬼教官ではなく単身赴任中のパパ、先ほど登場したハイスペ音楽隊はFFの吟遊詩人などとあだ名される、のだそうだ。

元々、Xのポストで人気が高まり、それを書籍化しているためか、文章が短い印象があった。サクサク進む。エッセイというよりは、中の人が見ていたものの紹介という風情。

しかし、一般人のような我々がイメージする自衛官の厳格でストイックな訓練なんて全く登場せず、とにかく面白かった。

うっかり自衛官も楽しそうだな・・なんて思わされそうだ。入隊時には、運動能力関係の試験項目がない、というのは驚きだが、誰にでも開かれている就職先として、もしかしたら今後は大きく注目されるかも知れない。

自衛隊については、今なお法律的な解釈をめぐって、憲法学者でも意見が分かれている部分もある。しかし、そういったナイーブな側面を持ちながら、組織として強くあるために、それぞれの役職があり、行動パターンがあると思うと、非常に効率化され洗練されている組織であった。

知らない世界を、面白おかしく・・は誰もが楽しめる描き方だ。中にいる人たちに失礼にならないように書き上げたバランス感覚もさることながら、やはり自衛官の仕事への敬意が込められた作品だった。


#推薦図書 #エッセイを読む #自衛官


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