寒いけど温かい、ひとり旅
寒い季節に、寒い場所には行きたくないものですが、かつて真冬の秋田県に旅したことがありました。航空会社のマイルを使った航空券で2月の出発の「秋田行き」を指定されたのでした(どこでもマイル、というサービスでした)。
秋田についてはお米のことくらいしか分からなかったので、とりあえず温泉地にも行きましたが、地名として知っていた角館に向かいました。
泊まったところは民泊。もともと住まわれていた人の痕跡を感じる雰囲気で、おばあちゃんのうちに居るよう。リビングには夥しい食器があったり、テレビ台には家族写真があったりして、ひとり旅じゃないような寒くて温かい場所でした。
民泊のオーナーは気のいいおじさん(おそらく住んでいた方の息子さん)で、送迎の車内で「あれ見に来たの?」と聞かれました。
「あれってなんですか?」
「知ってるのかと思った。紙風船まつりってのが、今夜あるから行ってみたらいいよ。寒いけどねぇ(笑)」
一年に一度の祭りの日に居合わせたならと、早めにご飯を食べて、電車に乗って会場に向かいました。車窓はずっと雪景色。吹雪もあって、とても寒そうでした。
駅前の観光相談コーナーで貸してもらった長靴と、二重に履いた靴下で、意外と足元は温かく、むしろ吹雪の中で、やるのだろうかと不安な中で会場へ。
会場に着くと、紙風船の大きさに驚きました。風船というよりも、気球サイズ。焚き火を使って温かな空気を中に送り込んで空に飛ばすようでした。
そこここで火が焚かれて、大きな紙風船が立ち上げられるものの、吹雪が止まず、なかなか風船は飛ばせない様子。
紙製という方もあり、風船には浮世絵の模写や、歌舞伎の場面、写真などのほか、地元企業のロゴもあり、見上げるほどに大きな風船がもうもうと湯気をあげて膨らんでいるのは壮観でした。
ステージにはテレビで見たことのある歌手が出てきて、持ち歌らしき歌に、祭りの名前や地名を入れながら楽しそうに歌っていました。
以前、仕事の関係で呼んだ歌手の方も、持ち歌の地名を変えて歌い、来場者の拍手をマハらっていました。演歌歌手が地名の入った歌を歌うのは、そういうことなのかぁ・・と思ったり。・・違うか。
吹雪は収まらず、結局その年はひとつも風船が飛ばない祭りになりましたが、会場で食べた焼き栗や、栗入りぜんざい、などの意外な栗の名産地のおもてなしは、むしろ嬉しい発見でした。
長い長い行列を待って、寒さに震えながら宿に帰ると、リビングのテーブルに小鉢がいくつか置いてあり「温かくしておやすみください」とのメッセージ。
小鉢のお惣菜をつまんでひと心地。
宿のそばにあった銭湯に出かけて、思いがけず熱いお湯にビビりながら(44℃でした)、汗をかくぐらい温まったのでした。
ひとり旅の動きやすさ、寒い中でも発揮できたことは発見でもありました。思わず美味しい栗に出会えたのも、現地で会えた方々との会話がなければ起こらなかったことです。
見られなかった、たくさんの紙風船が夜空に飛んでいくのを見に、また行きたいです。
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