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あの指、この指、きみの指 #創作大賞感想

でもあたし、おかあさんゆびなんだよね。

おかあさんゆび 第1話より

すず太郎さんの小説「おかあさんゆび」の主人公がつぶやいたセリフに、僕もおとうさんゆびになったんだなと、しみじみ思った。

手のひらにある指に家族の名前がついていること、僕は一体いつ知ったのだろう。

あの頃、誰に聞いても「ぼくゆび」はなかった。お兄さんもお姉さんもいない、でも赤ちゃんでもない僕のゆびはないのかな・・なんて寂しく思ったりして。作中の幼い男の子も、同じだった。


この話は、物語の殆どが会話で構成されていて、人物像が掴みやすく、比較的読みやすいと感じられる優しい作品でした。

なんとなく不幸の香りがする始まりから、思いもよらぬ展開と、そしてメリハリのある時間軸に、文字数の多さを感じることなく、スピードを保ったまま読み終えてしまいました。

ふだん、横書きの画面で、下へ下へとスクロールするような小説を読まないこともあって、会話の間であるとか、口調の印象づくりが上手だなぁと思いながら。

太字にしたり、間を開けたり、読み手の頭の中で声が聞こえてくるようでした。

どんな物語にも終わりがあって、そこに向けて登場人物たちが幸せになって欲しいなぁと思いながら読むのですが、果たしてこの物語も穏やかな終盤。(ネタバレはこの辺で)

才能、は隠れているものかも知れないし、自覚し磨くものかも知れないし。かと言って自信がないまま、埋もれてしまうのも残念なことで。

誰かの背中を押している人も、実は自分の背中を押せていなかったりして、自分に正直になることの難しさと可能性に、ワクワクする話でした。

ちょっと現実離れしたような展開も鮮やかですが、それでいて身近にいるような人物像が継続していてホッとします。

この感想を書いている時には、実はまだ未完。最終話の最後に「もう少し書き足したい」とあったので、それを楽しみにしながら。

まだ読んでない方に、追いついてほしいなぁと思っています。



#創作大賞感想 #おかあさんゆび

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