栞と旅と、誰かの記憶
本を読むことを、旅をすると表現しているときがあります。ここではないどこか、知らないことを知る楽しみ、見たことのない景色、確かに本の中には、旅にも似た要素があるように思えるのです。
毎週月曜日には、旅の記録を書いています。今回は、旅をしてきたもののことを。
現実とは違う世界に没頭して、自らを省みるような体験をしながら、再び現実に戻る元気と勇気を与えてもらえるのが、読書なのかも知れません。
この投稿では、読書の効能を云々するつもりはありません。例えば、本を読んでいて別のことをしなくてはならない時、読みかけのページに挟むもの。それが栞です。
読書を、本に触れることを大切にしてほしい、という思いから、我が子にこの「栞」の字を当てました。
単行本には、背表紙の裏側から紐が伸びていて、栞として挟むことができるものがあります。
僕が子どもの頃、あの栞の存在が「大人の本を読んでいる」感覚がして、とても嬉しかったのを覚えています。ページに干渉しないギリギリの長さに作られているのも「かっこいい!」と思ったポイントでした。(スピン、と呼ばれているそうです)
文庫本になると、分厚い作品には同じように紐が伸びていることがあるのですが、普通は栞がありません。
そこで、出版社が挟み込んでいる案内を流用してみたり、書店のカウンタに置いてある短冊をもらって栞にしたり・・あるいは、出かけた先の半券を挟み込んで栞の代わりにしたこと・・ってあるでしょうか。
古本屋で入手した文庫本を読んでいると、時々、”半券”が栞代わりに挟まれていることがあります。
それが、たいてい購入したお店のある場所とは縁のない遠い場所のものだったりするのです。そういう栞を、僕は「当たり」と呼んで密かに喜んでいます。
先日、毎週木曜日の”書もつ”で紹介した作品(革命前夜)も古本屋で購入した文庫本でした。読み進めていると、栞代わりの「京都文化博物館のチケット」が挟まっていました。
会期は、2019ー2020となっていました。場所的な距離感もさることながら、今から4年ほど前という時間もまた、古本でしか味わえないようなちょっとドキドキする発見でした。久しぶりに「当たり」が出ました。
前の持ち主は、その美術館に訪れる道すがら、この本を読んでいたのか、それとも観終わってからこの本を買ったのか・・顔も知らない旅行者に想いを馳せるのでした。
そんな「当たり」の栞、美術館、博物館の半券だけでなく、レシートや、航空券なんてこともありました。一番印象的だったのは、エミレーツ航空の航空券が出てきた時でした。
エミレーツ航空といえば、中東のUAEの国営航空会社で、国際線ながらも運賃がかなり安い印象。かつて僕が旅行を計画したときにも、東京ードバイ間が往復で3万円程度だったのを記憶しています。
航空券の半券が出てきたのは「機長からのアナウンス」という元機長さんのエッセイ本からでした。きっと、機内で読んでいたのでしょう。しかも、その半券にあった目的地に目を見張りました。
ナイロビ・・といえばアフリカ、ケニアの都市でした。遠い・・。そして、どんな人がそこに向かったのでしょうか。ビジネスか観光か、それとも家族がいるとか・・。日本語の本なので、きっと日本人の方だとは思うのですが・・。
そんな旅をした文庫本が、僕の手元にやってくることも奇跡のようです。
古本は、誰かがすでに読んでいるというちょっと残念な面もありつつ、こうして「当たり」に出会えると、その本も旅をしていたんだなぁ・・なんて思ったりします。
僕もレシートや半券を挟んで栞代わりにすることがあるので、どこかで誰かが驚いてくれたら嬉しいなぁ。(まぁ、ゴミといえばゴミですけれど笑)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、子どもたちのおやつ代に充てます。 これまでの記録などhttps://note.com/monbon/n/nfb1fb73686fd