性能 #毎週ショートショートnote
「あなたの春を奏でよう」
ヤマハから発売された最新のアコギは、演奏者の心情を読み取って微妙な調弦を自動で行い、サウンドホールの内部をAIによって調整する、これまでになかった楽器だ。
心情を音に乗せるというのは、簡単にできることではない。楽器の演奏自体がとても難しいのに、さらに自身の心情をこめた音を出すなど、何十年もかかってようやくできるものかも知れない。
そんな技術が本当だったとして、たった100万で買えるなら安いもんだ。
この楽器は、演奏者がイメージする春が、聴衆にも共有できるらしい。
手持ちのめぼしい楽器を全て売り払い、なんとか100万円をかき集めて、その”春ギター”を買う。一人で弾いている時には、全くその”性能”はわからなかった。
コンサート当日、楽器のことは伏せて、いつものように演奏を始めた。春のイメージを共有って・・客の表情を見ようと、チラリと視線をあげる。
クシャン!
誰かが不意に、くしゃみをした。
たちまち、会場中がクシャミの音でいっぱいになった。
・・花粉症のイメージだったなんて。
(450文字)
いろんな電子機器が装備されていたら、それはアコギ(アコースティックギター)ではないのですが(笑)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、子どもたちのおやつ代に充てます。 これまでの記録などhttps://note.com/monbon/n/nfb1fb73686fd