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ベストフレンド宣言

「やった!」

それまで穏やかに談笑していた表情を崩さずに、冷静を装って、平静な口調で、座った姿勢も乱さずに、僕はガッツポーズをした。

心の中で。


その日は休日で、近所の公園でイベントがあり、子が通う小学校の同じクラスの子どもたちがいた。複数クラスだし、学区の端っこにある我が家なので、なかなか訪れない珍しいことだった。

しかも子どもたちは4人もいた。たちまち一緒に遊び始め、学校が違う子たち(子と保育園が同じだった子)も混ざって、学校の休み時間のような賑わいっぷりだった。

思いがけず学校での様子を見るようで、微笑ましくなる。男の子も女の子も、大きな声で全速力で鬼ごっこをしている。楽しそうだ。

そんな姿を遠くから眺めているのは、僕ら親たちだった。子どもたちは男も女もいるけれど、大人はママたちばかりだった。

パパは僕だけだったから、ついつい物理的にも存在的にも距離を取りたくなってしまうけれど、あるママが僕を現実に引き戻してくれた。

「あ、◯◯ちゃんのパパですか?□□ですー。よろしくおねがいしますー。」

僕の知人や友人にはいないタイプのママだったので、誰の親かは分かっている程度で、それまでも話したことなどなかった。


1年前の入学式、我が子が並ぶクラスの列に、一際目立つ新入生がいた。パーマをかけたようなウェーブとツヤ感のある髪型に、チェックのスーツを合わせた、男の子。目に入った名札には、今風の漢字を使った名前があった。

「カッコいい子がいるもんだねー」

妻にぼそっと言う。すぐ近くで、手を振る夫婦がいて、ハッとした。聞こえていただろうか。


その時の男の子が、クラスの仲良しの友達となったと、話には聞いていた。入学式当日に友達になった女の子に比べて、その男子が子どもの話に登場するのは遅かったし、なんなら”いま好きな男の子”として名前が挙がることもなかった。(時期によって好きな男子が変わるという、親としては何とも言えない報告を笑顔で聞いていた)


挨拶のあと、そのママが続けて話してくれたのは、こんなことだった。

「うちの子が、2年生になっても同じクラスになりたい人の第1位が、○○ちゃんだって言ってて・・、同じクラスになれたんですよ。」

「・・!・・それは、知らなかったです。よかったですねぇ。」

自分の子どもが「第1位の友達」になっていることを知るのって、なかなかない。本人同士が話していれば、いずれ親にも分かるのかも知れないが、きっと本人(我が子)はそのことを知らないだろうし、まして(子どもながら)異性から「また同じクラスになりたい」って、いやぁ・・なんか嬉しい(笑)。

友達としてすごく認められているんだよ、と褒められた感じがして、僕もとても嬉しくなったし、我が子にもそれを伝えてあげたいなぁと、気持ちが昂った瞬間だった。

入学式の日から1年以上経ったいまは、男の子の髪は直毛に戻り、顔もややふっくらと丸みを帯びたように見えた。カッコ良さよりも、優しさを感じる佇まいに、これまた親としてホッとしたような気がする。

帰宅してから、男の子のママから聞いたことを伝えてみると、子は照れていた。そうそう、嬉しいよね・・・と、その顔を見ながら、成長を感じて、これからの1年も楽しみになった。


#ともだち #公園


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