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帰り道

シートに座り、"カチャリ"とベルトを締めて、イヤホンを着ける。離陸のアナウンスの後、機体が細かく揺れながら浮上していく。窓からの景色が水平になって、あの独特な音が聞こえたとき、「あぁ、良かった」と、旅の終わりを感じる。いつも同じだ。

行くべき場所がもっとあったかも。
心残りがあったはずだけど、離陸後にはいつだって思い出せなくなる。

ひとりでも、友人や家族が一緒でも、その気持ちが変わらないのは、帰る場所があるから。旅に出て、帰りたい・・なんて変だと思われるだろうけど、
僕が旅をする目的のひとつは「帰ること」なのだ。

ある旅の帰り道、隣に座る友人が喜んでいた。
聞けば「滅多に怒らないお前が、怒っていた」夢を見たという。「僕を怒らせること」も旅の目的のひとつだったらしい。そんな友人のおかげか、僕の旅はいつも楽しく、帰り道はいつも穏やかだ。

あの穏やかで優しい、ひとときの心安。また出会うために、また旅に出たい。

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