このままだとまずいサクラ革命について

2020年最後の大物…とは言い過ぎかもしれないが、サクラシリーズの新作というだけで期待値は高めだった。ただし前作に当たるPS4の新サクラ大戦が最悪の出来だったこと、今回のスマホゲー化に伴いあのFGOの開発DWが関わっていることなどから不安視する声も少なからずあった。そして蓋を開けてみると、それらの不安は遠からず的中することになってしまった。

このままだと非常にまずいと感じたので、今回はどこらへんを改善したらいいのかを年末最後に書きなぐる。

原神前、原神後

まずはじめに、あらゆるスマホゲーは今後辛くなっていくという話をしたい。特に広い範囲でRPGというジャンルに該当するならば。原因は今年9月に出現した原神の存在である。過剰に持ち上げるような書き方になってしまうが、PS5のフルプライスで売られていてもおかしくないクオリティのオープンワールドを同列のスマホゲーとして出されてしまっては、競合はとても厳しい。

原神前のスマホゲーたちは問題ない。コンコルド効果があるのもひとつの要因だし、FGOやモンスト、パズドラをリリース当初からやっていた20代中盤の若者たちも三十路になって色んな要因でゲームの時間が限られていく。ここで彼/彼女らが「新しい周回ゲームをやるか」とはなりにくい。

原神は素人目線でも開発費かけてるなぁというのが分かるし、それまでオープンワールドに疎かったゲーマー層をがっつり取り込めたのも強い。もちろん原神にも多くの不満点…特にガチャで…はあるが、単純に品質が高いことの"良さ"(バグが少ないという意味ではなくゲームの完成度として)を多くのプレイヤーに体験させ、スマホゲーのテンプレートに一石を投じたことは一考すべきであろう。今後の新規タイトルは必ず原神と比較される。キャラクター、シナリオ、グラフィック、音楽、ゲームとしての体験…あらゆることが比較されていくことになる。

この考えを前提に、次からサクラ革命のどこを改善していけばいいかを書きなぐっていく。

まずは"FGOくささ"を取り除こう

ゲームはある程度テンプレートに当てはめたほうが"売れる"という背景がある。RPGでいえばドラクエのようにコマンドを選んで敵とバトルする…という形式にしておけば大崩れしないというのは想像に容易いだろう。

恐らくサクラ革命もこのテンプレートの考え方を踏襲した。FGOというテンプレートを使うことで、FGOに慣れたプレイヤーたちがとっつきやすくなるというメリットがあるのだ。さすがに後発タイトルなのでオートバトルや宝具スキップ…もとい必殺技スキップなどは搭載されているが、ここらへんは当然のレベルだろう。

問題はそこではない。FGOの厳しい・苦しい点までテンプレートに従ってしまった。すなわち「育成」「イベント仕様」の2点だ。

まずは育成。辛い。辛すぎる。FGOと全く同じ仕様でバトルでは経験値が入らず、ドロップ率が非常に低い素材を多く揃え、今度は金が足りず…初期のFGOそのままである。後述するが致命的なほどコンテンツが少ないので育成を中心に据えたかったのかもしれないが、もしそうなら悲しい話だ。

イベント仕様も残念だ。ガチャで出現するキャラクターたちの攻撃力アップ、ガチャで出現する護符(礼装)でイベント交換アイテムのドロップ数アップ。狂ったように周回しないとイベント報酬を揃えることが出来ないという仕様。キャラなどの素材はいいのに中身のないストーリー。まんまFGOである。

ネットの評判を見ていると「やればやるほどFGO」という意見が多い。自分も最初はラインバトルなどオリジナリティというかFGOとの差別化を感じたが、中級、上級とオート放置できるようになると残念ながら不満ばかりが目立つようになり、やはり「やればやるほどFGO」を覚えるようになってしまった。

育成を緩和すること、イベント仕様を変えること。他にも多数気になる点はあるが、まずはこの2点から検討頂きたい。

逆にFGOの良さを取り込め

一方でFGOの良さが取り込めていない部分がある。ずばり「テキスト量」と「イラストの豊富さ」の2点。

テキストの"質"に関しては、FGOはバックに武内・奈須率いる型月の豪華執筆陣がおりハードルが高いのでそこまで求めないが、テキストの"量"は本当に同じ開発元なのかと疑うレベルで物足りない感が否めない。特にキャラクターの詳細やバックグラウンドの説明に関するテキストはもっと分厚くても良かったのではないか。今回サクラ革命は全員が新キャラという英断(?)をしたからこそ、どういったキャラクターなのかを我々は知りたい。知りたいのに、どういった子たちなのかが全く分からない。初期段階では出身地と血液型、誕生日しか分からないのだ。他のプロフィールはなかなか上がらない信頼度という高い壁に阻まれて隠されている。FGOも同じ仕様だが、FGOは「実際に存在した偉人や伝説上の人物」が題材になっており、プレイヤー側がはじめからある程度知っているという点から事情は全く異なる。サクラ革命においてこの仕様はただのディスアドバンテージにしかなっていないことを運営は気付いているだろうか…?

イラストの少なさも問題である。FGOはレベル上限を開放するたびにイラストが変化していくのだが、サクラ革命にはこれがない。育成していてどこか寂しい感じを受けた原因を考えたとき、自分はこれに至った。3Dと2Dの両方を用意する必要があって開発・デザイン工数が厳しいのはなんとなく想像できるのだが、そこは手抜きしていい部分ではないと断言する。消費者側はそういった点を直接的でなく感覚で掴み、敬遠する原因に直結していく。

コンテンツが少なすぎる

今のところコンテンツは序盤だけのメインストーリーと育成のための周回、そして周回しかないスカスカのイベント…だけである。サクラ大戦にあるミニゲームの類は一切ない。他方FGOにある幕間イベントもなければ、シナリオを読み返すこともできない。探検・探索もない、対人戦もない、強敵戦もない、箱庭もない、360度鑑賞モード的なものもない、遠征クエストもない、何もかもがない

……これは本当に新規タイトルなのか? 数年前のゲームじゃなく?

冒頭で原神に触れたものの、これでは原神と比較するのはさすがに厳しいので、少し前にリリースされたオクトパストラベラー大陸の覇者(オクトラ)と比較したい。

オクトラ自体も原神と比較するとなかなか厳しい感じなのだが、リリース時点で既に据え置きゲームのクリア同等レベルを体験できる40~60時間ぐらいの重厚なストーリーが用意されており、もちろんエンディングまでプレイ可能。サブクエストも豊富で、元々のSwitch版をプレイしていたオクトラファンにも楽しんで貰えるよう最大限開発してきたことが伝わってきた。

サクラ革命はなんと2章までしかプレイできない……序盤も序盤だ。その割に敵が強く、今後の更新に不安を覚えるだけである。良質のスマホゲーが溢れる2021年、ユーザーは昔のように運営の成長を悠長に待ってはくれない。メインストーリーしか用意できないなら、はじめから第1部のエンディング…日本奪還までプレイできるぐらいのコンテンツを用意してしかるべきだった。

サクラ革命はサクラ大戦ファンに向いていない、かといってFGOファンにも向いていない。RPGファン(?)にももちろん向いていない。どこに向いているのかが分からない。後発タイトルでこのコンテンツの少なさははっきり言って致命的だ。

素材ドロップが辛くSNS界隈が荒れた後、周回クエストのスタミナ消費を大幅緩和するという取り組みがはじまったが、いやいや、そうじゃないんだ。コンテンツとしてほぼ育成しかない状態に不満があるのだ。そもそも周回中心のスマホゲーにおいて大幅なスタミナ消費の緩和は劇薬で、それに慣れてしまったプレイヤーから離れやすくなることまで考えているのだろうか。ロマサガRS並に「バラマキ」をド派手にやるなら別だが。

最後にまとめ…このままじゃかなり苦しい

というわけで以上のまとめ
・育成要素を緩和せよ
・イベント仕様を変えよ(周回地獄をなくせ)
・キャラクターの背景を初期段階からもっと用意せよ
・イラストを増やして育成モチベを高めよ
・単純にコンテンツを増やせ

もっと書きたいこともあるが、今回はここまで。Game-iさんの売り上げ分析を見ていると、リリース初月としてはかなり苦しい位置にいる。しばらくはFGOの加護に守られるだろうが、セガとどういった契約になっているか分からないのでそれも若干怪しい。主人公の咲良しのをはじめ、魅力的なキャラクターや質の高い音楽、分かりやすく広げやすいメインストーリーなど良い素材は揃っているのだ。あとは開発とゲームデザインの頑張り次第で、このまま沈むか復調するかが決まる。とにかく、このままじゃ苦しい。

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