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「未経験歓迎」求人のワナ

お疲れ様です。もなきです。
転職エージェントをしたり、スタートアップ企業の採用のお手伝いをしたり、採用動画のプロデュースをしたり、YouTubeをしたりしています。

今日は「未経験からの転職」について書こうと思います。

この「未経験」という言葉は、多くの求人サイトでとても頻繁に検索されるキーワードです。求人サイトによっては「未経験歓迎求人」というチェックボックスを、特別に用意しているところもあります。

ですが、僕はこの「未経験歓迎」って、なかなか危険なワードだと思っています。正しく理解せず、言葉に乗せられてキャリア選択をしていって苦労する人も多いので、ぜひ最後まで読んでください。

①「未経験歓迎」求人は3パターン存在する

まず、抑えておかなくてはいけないのは、「未経験歓迎」には3パターンが存在するということです。

・業界未経験が可能
・職種未経験が可能
・業界も職種も未経験が可能

の3つです。これらは、似ているようで全然違うのです。

◎業界未経験が可能
「業界未経験が可能」は、逆に言うと「職種の経験は求める」ということです。営業経験者、人事経験者、経理経験者のように。注意しなければいけないのは、業界の経験は求めないとはいえ、親和性のある業界の人が、結局は優先されるということです。

例えば、ITサービスの求人で「業界未経験歓迎」の営業求人があったとして、無形サービス(例えば人材紹介や教育サービスの営業をやっていた人)と、有形サービス(例えば食品の営業をやっていた人)が現れたとしたら、前者の無形サービスの営業をやっていた人の方が書類選考や面接を通過する可能性が高いです。そちらの方が親和性が高いからです。

職種未経験が可能
「職種未経験が可能」は、逆に言うと「業界の経験は求める」ということです。正直このパターンは少ないのですが、ニッチな分野を攻めている会社だと見られることがあります。

例えば、スポーツビジネスの業界での経験者とか、VRの業界での経験者とか。専門的な用語も多く、業界の特殊性が高いので、少なからずその業界に足を踏み入れたことがある人を求めたい時に使われたりします。

あとは、介護業界とか、建設業界とか、昔ながらの慣習が根強く、IT化が遅れている分野に対してテクノロジーを駆使してサービス開発をしているベンチャーなどでは、その業界に実際にいた人を求めるケースはありますね。要は「自分もこの業界の古くさい慣習は変えたいんです!」という強い意志を持った仲間を集めるパターンです。

業界も職種も未経験が可能
最後が「業界も職種も未経験が可能」です。これは、社会人年数とか学歴とかで多少の縛りはあるとしても、要は「どんな人でもいいからまずは応募してね」というケースです。

コロナウイルスにより求人が影響を受ける前は、このパターンは多かったです。求人広告や転職エージェントが「まずはたくさん応募数を集めましょう!そこから書類選考で厳選しましょう」と採用企業に伝えて、業界・職種未経験歓迎、というキーワードやチェックフラグを入れているケースも多くありそうですが…。転職先を探す候補者としても「お、未経験からでも歓迎なのか。俺も行けるかな!」といって、目を引いたりします。

じゃあ、実際のところ、本当に「未経験」を企業は求めているのでしょうか?

②本当は「未経験」なんて欲しくない

ちょっとガッカリさせるタイトルを付けちゃいましたが、ぶっちゃけ企業は「未経験」を欲しくはありません。言わずもがなですが、業界も職種も「経験者」である方が「即戦力性」があるからです。

採用してからその方が何らかの成果をあげて会社に貢献するまではどうしても一定期間がかかります。成果が上がるまでは、その方の人件費や教育にかかる工数は「コスト」になります。なので、この「コスト」が小さければ小さいに越したことはありません。

コストが小さい→キャッチアップが早くてすぐに成果を出せる→経験者の方がその可能性が高い、ということです。

では、なぜ未経験の募集をかけるかというと、経験者募集だと採用が難しいからです。同業界、同職種の方を採用することは、よほど年収や会社のブランド力が高い場合は別ですが、多くの場合は差別化するのが難しいです。もちろんその中で、あの手この手で企業は訴求をして、同業界同職種の人を採用しようとはするのですが、それだけだと人員計画に対して足りなくなってしまいます。

そこで考えるのが「そのポジションは、最低限何が出来る人であれば、育成可能か」ということです。

例えば「営業についてのイロハを初めから鍛えるのは大変だけど、数値目標の達成へ向けて逆算して考える力があれば可能」という風に。ある意味「妥協」して考えていきます。なので、業界不問×営業経験●年以上、のような、最大公約数的な採用ターゲットが出来上がってくるのです。

じゃあ、先ほどの「業界も職種も未経験可能」という求人を出している企業は、ありとあらゆる人を育成できるということなのでしょうか?

これは微妙なところです。

例えば第二新卒層(社会人1年目~3年目)をターゲットに業界職種不問で募集しているとしたら、社会人としてのイロハ、例えば名刺交換などのマナーとかPC操作とか働く上でのマインドとかはある程度あれば、あとは新卒と同じようにゼロから鍛えることができるよ、というスタンスの表れにも見えます。

ですが、中には「大量に入社させ、厳しい仕事を通じて半分が残ったらいい」という「使い捨て採用」「リトマス試験紙採用」をしている会社もあるので注意が必要です。

あなたが受けたいと思っている会社が「業界も職種も未経験可能」になっていた場合は「本当に未経験から育成する企業の余力があるのかどうか」は、きちんと見極めるようにしてみてください。

③未経験転職に失敗するパターン

未経験転職に失敗してしまうのは、どんなパターンでしょうか?

これは、業界未経験、職種未経験、業界職種ともに未経験の全ての場合に当てはまるのですが、要は「企業が求めているターゲットと自分がミスマッチだった場合」です。

落ち込む

何度も言うように、未経験だからといって、企業には求めているターゲットや、最低限備えておいて欲しいスキルがあります。そこを、双方が見誤ってしまうと、早期での退職に繋がりかねません。そして、場合によっては「何でこのタイミングでこの転職をしたの?」という、迷走してしまった人の職務経歴書が出来上がってしまいます。

じゃあ失敗しないためにはどうしたらいいかというと、あなたのなかで「キャリアのストーリー性」を持つことです。

あなたが今後のキャリアのストーリーを描けているのであれば、入社したときに多少つまづくことや給与ダウンがあったとしても、長期的に考えた際にその経験を積んでおくことは自分自身にとってプラスに働く、と考えることができます。

これは、株の資産運用と同じで、長期的にこの銘柄は絶対に上がるという分析やプランニングができているのだれば、ちょっとした株の動きに一喜一憂したり、焦って手放すと言うことはないと思います。

同じように、あなたが転職してすぐに「この選択は違った」と手放すのは、もはや投資ではなく投機です。つまり、ギャンブル性が高い選択となってしまいます。自分の長期プランに従って、投機ではなく投資の観点で、どこに身を置くべきなのかを考えられるようにしましょう

④未経験転職で「大切なコト」

ということで、今回は「未経験からの転職」というテーマで話をしました。

大事なポイントをまとめると

・未経験歓迎には大きく3パターンあるので見極める
・未経験とはいえ求めている最低限の要素は何かを把握する
・長期的な視野を持って「投資」するという考えを持つ

です。

最後に、未経験転職で「大切なこと」を一つお伝えします。

今回のコロナウイルスの騒動によって、特に転職エージェント経由での採用を中心に、「業界も職種も未経験可能な求人」は減少しました。ただ、僕は長い目で見れば、これはよかったんじゃないかなと捉えています。

なぜかというと、これまでは「業界も職種も未経験可能な求人」に人材を横流しにして、不相応な利益をあげている転職エージェントが淘汰されるからです。

転職を考えている個人の「未経験ながらもこんなことにチャレンジしたい」という気持ちは応援するべきです。

ですが、本当にその人の経験や志向を紐解いていったときに、そのチャレンジは無謀である、そのチャレンジは中長期的には市場価値は低くなることであれば、どんなに転職エージェントとして売上を立てることが可能な求人があったとしても、それを助長するべきではないと僕は考えています。

未経験からでもチャレンジ可能、という言葉に流されず、自分がどんなキャリアを描きたいかをきちんと考えて、戦略的に転職先を選ぶ世にしましょう。

今後もこのnote(名もなき転職マガジン)では、転職やキャリアにまつわる話を発信していきたいと思います。尚、このnoteで配信している情報は、YouTubeで先んじて配信しています。週に2回くらいの更新(月曜と木曜の夜)ですが、ぜひそちらもチャンネル登録いただけると嬉しいです。

▼今回のnoteの内容について話した動画

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