いつもの下り坂

 俺は今、いつもの下り坂にいる。
 とはいえこれは帰り道とかそういう、現実の坂を詩的に表現したいわけでは無い。
 俺の気力の波の、下り坂だ。

 今のこの気分は非常に覚えがある。
 大体いつも引きこもり状態から少し復活して色々活動を始めてから2か月前後、この辺りの時期で一気に気力が減衰してくる。
 大体いつも活動期には色んな人と話をして、これやりたいあれやりたいを手当たり次第に始めるのだ。
 だがいつも勢いで始めることが出来ても、2歩目を踏み出すことが出来ない。
 そうこうしている間に2か月くらい経ち、今度は何もする気力が湧いてこなくなる。
 そしてきっかけは大体なろうかアニメだ。長編のなろう小説を読み返し始めたり、アニメの一気見を始める。
 そうして止め時を見失ったまま睡眠時間が大きくズレ始め、朝起きれず昼過ぎに起きて、昼飯を食わずに引きこもる。

 このサイクルをこの2年間で何回も繰り返している。
 だから今、踏ん張ってそれに抗わないとマジでヤバイのがはっきりと分かる。
 自身の哲学を打ち立ていい加減動き始めたいと思っている今、自分自身の意思でこれを乗り越えたいとは思っているのだ。
 自立訓練施設への通所を始めていて本当に正解だと思う。今のところ、これが丁度いい重石となって、踏ん張る手助けになってくれそうだ。

 それプラス、最近になってようやく得心がいったことがある。
 何故二か月周期くらいで気力が減衰するかだ。
 ある意味では答えは始めから分かっていたのだ。

活動期に色々やり始めてやるべきことを増やし過ぎているから。
そしてそれを一つ一つ消化していく勇気が足りないから。

 これは性格の問題だと思うが、俺個人としては色々企画するのは好きなのだ。こうすればああすればとアイディアを練り練りするのは楽しいし、そう苦も無く始められる。
 その勢いで誰かにアポイントメントを取ったり最初の打ち合わせをするところまでは出来るのだ。
 だが、本当にその先が続かない。
 「こうしてあぁして……」と頭の中で考えたことを現実で行動するのが苦手だ。多分大本は「地味だしイレギュラーあるし大変だし面倒くせぇ」という思いだろう。だが今はもはやそれだけでなく、今まで出来ずにきたのが癖になり、やろうとすると妙にブレーキがかかるのだ。

 体が竦む。
 怖い。
 頭が真っ白に思考停止する。
 目の前が真っ暗になってスマホやPCの画面しか見れなくなる。
 止まった頭がまた怖くなって、反射で考えられるゲームに逃げる。
 寝る前に色々考えてしまうのが怖いから、寝落ちするまで何かしてる。
 昼過ぎに起きて、何かするのが怖いから体を丸めて布団の中に隠れる。

 あぁそうだよ。この感覚だ。
 活動期は大体何かを始めるとか再始動するってフェーズだからあんまり気にならない。
 むしろ強気に哲学を喧伝し、自分が賢くなった気分にさえなる。
 自分が欠陥品であることを、覚えてはいつつも忘れられているのだ。
 何が「理由は明確で、体力が無いからだ」だ。それもあるがいっつもここで躓いてたのを忘れたのか。忘れてたよなぁ?

 誰か俺に勇気をくれ。自信をくれ。
 毎度ぶつかっては振り出しに戻してくるこの壁を、二歩目を踏み出す力をくれ。
 怖いんだ。体が竦むんだ。
 何が怖くて体が竦んでいるのか色々自己分析したさ。色々こじつければそれらしい答えは幾つか見つかった。けどそれが本質じゃないしそれが分かったところで取り除ける原因では無かった。
 結局のところこのシチュエーション自体がもう怖いのだ。
「描いた展望を実現するために、実際の行動を始める」というシチュエーション自体が。
 だから俺は口だけなのだ。口だけは達者で、机上の空論なら得意なのだ。
 行動に起こすのが怖い。それ自体がもう怖い。
 怖い怖い怖い。

 ここ二年ほどは、これに陥るたびに空想に逃げた。
 俺の憧れた主人公たちに思いを馳せ、自己投影し、彼らから勇気を貰おうとしてきたのだ。今なら分かる。
 そしてこの方法では大体また2,3か月充電期間が必要になる。引きこもり期の始まりだ。
 そしてようやく勇気が充填され活動する頃には記憶もリセットされ振り出しに戻っている。
 これの繰り返しだったのだと、ようやく理解した。
 つまり俺は、ここで物語の主人公たちに助けを求めてはならない。
 いや、求めても良いがそれに頼って時間をスキップしてはいけない。
 そろそろ前に進みたいのだ。同じことを繰り返してはいけない。

 だがどうすればいいのだ。
 いや、分かっている。というかちゃんと進んではいる。
 自分のメンタルの負担を減らすために哲学を打ち立てた。
 一人では心が折れると悟って人を巻き込み始めた。実際今動かしている企画は、このnote以外は誰かしらと一緒にやろうとしている企画だ。
 TRPGも、哲学も、居場所活動も。
 最初は自分一人で始めようとしていた。それがどこかしらのコミュニティーと協賛みたいな感じで動かそうと出来ている。これは間違いなく進歩だと思う。自分の理想を語る恥ずかしさを乗り越えられたが故の進歩だと自分を褒めてやれると思う。

 でも、でもだ。
 でもこの恐怖はどうやって乗り越えればいいのか。
 誰かに相談。それも考えたし何回かしたこともあるが、誰も理解してくれなかった。
 いや、そういうと語弊があるか。同じ経験をしたことがある人がまず居ないのだ。その上この期に及んで、未だに俺自身的確に何故こうなっているかを説明出来ない。10年以上苦しまされ続け、自己分析を続けた結果が、「色々と原因となった理由はあるけど、今はそれとは独立しているから原因を取り除いたところで改善しない」という結論なのだ。
 根本解決出来る類の物ではないという結論になっている。
 だから対処療法として抗不安剤を処方してもらって服薬したり、習慣付けによって余計な不安に飲み込まれる前に行動する習慣を付けようとしてたのだ。それでなんとか前に進めると、光明を掴んだ気でいたのだ。
 だが間に合わなかった。飲まれてしまった。恐怖に。そして体が竦み始めた。
 メモ術やこのnoteを使って脳内の思考を吐き出し、不安の見える化が出来るよう努めてきた。それは功を奏して色々前に進めたと思う。
 ここ最近雲行きが怪しかったから、何回かスタックしている作業を書きだした。そして一つ一つやっていけば問題ないと確認したりもした。
 だが間に合わなかった。体が竦む。全力で布団の中へ逃げ込もうと暴れている。

 負けたくない。乗り越えたい。
 やっとここまで来たのだ。戦う準備は殆ど整っているのだ。
 ここを乗り越えられれば、色々とやりたいことが進むのだ。
 今までは準備が整っていなかったから、引きこもっていても同時にゆっくり準備を進められたから無駄ではなかったと思う。
 ただもう準備はほぼ整ったのだ。こっから先の引きこもりはそのまま時間のロスになると直感が言ってる。
 俺はここで踏ん張れる人間になりたくて、色んな物語を読み、観て、演じてきたんだろう。
 沢山の主人公に憧れて、勇気を貰って来たんだろう。
 踏ん張れ。踏ん張れ。ここを乗り切れれば間違いなく大きな前進となる。
 変わる意思と、変わった後の希望はあるんだ。あとは変われる自信だけだ。
 踏ん張れ。踏ん張れよ俺。
 誰か、自信と勇気をくれ……

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