無様

 昨日、KOMORIBITI FESというのに参加してきた。詳細については以下参照。

 参加した感想を一言で言えば、「面白くなかった」だ。
 当然これは、楽しくなかったという意味ではない。COMOLY内で知り合った方々とちょっとしたオフ会みたいなのも出来たし、参加者の発表も楽しめた。色々と学ぶところも大きかった。
 ただただ、「自分が賢し気に見切りをつけた企画がそれなりに終わったのが面白くなかったし、そんな自分への自己嫌悪に呑まれた」というだけの、極めて浅はかな感情だ。

 俺は、この企画の運営メンバーの一人だった。一番最初のキックオフからお誘いを受け、参加していたのだ。
 正直、当日までの道のりは決してスマートなものではなかった。準備時間も短く、諸事情でフルコミット出来るメンバーも多くなく、問題も幾つも生じていた。
 俺はそんな様子を見て、最初幾つかの提言を行った。今から考えても、中々クレバーな机上の空論だったとは思う。
 が、俺の提言が取り入れられることは無かった。理由はとても単純で、工夫を凝らす余裕が無かったからだ。他の業務も併せて、圧倒的にスタッフ側の手が足りていなかった。
 そんな様子を見て俺は、手を引いた。いや、逃げたのだ。泥船で一緒に沈む気はない等と嘯いて。
 そして幾つかの折衝などはしたが、それ以外は直近の一か月に至っては会議にも殆ど出ることも無く、当日にスタッフとして撮影班を手伝う以上のことはしなかった。

 実際、単にイベントとして見るなら正直大成功とは言えないだろう。
 来場者も多くなく大半は関係者で、物販も然程売れなかった。当日のトラブルも機材関係等色々あった。まぁ正直、俺の想像した通りの不都合が各所で発生していた。

 だが一つの企画としてちゃんと見れば、きっと成功したと言えるのだろう。
 トラブルはあった。だが、なんとかなった。色んな人の力を借り、迷惑をかけながらもやりきった。
 何より、一番大事なのはイベントで得た収益ではない。家に引きこもっていた当事者達が、一つのイベントに参加し、準備し、発表し、完遂したという自信を得る機会だったのだ。そしてそれを多くの参加者が勝ち取っていた。無論、作品が売れず落ち込んだ人もいるかもしれないが、ちゃんと納期に間に合わせ出店するという実績を手に入れたのだ。
 俺は、俺だった。完敗だった。賢し気に省エネを気取り、何も成し遂げず皮肉気に振る舞っているだけの奴だった。拙くもやりきった顔をしている友人達を見て、俺はただ打ちのめされていた。

 今思うと、俺はとんでもなく失礼な奴だった。
 慣れない準備に四苦八苦している人たちをしり目に、分かった風な口を上から目線で語っていた。
 浅はかなことだ。手を引いた自分が正しいと思いたくて、懸命な選択だったと思いたくて頑張っている人を否定したかったのだ。「どうせ失敗する」なんて言いたかったのだ。
 そんな自分に薄々気付きつつも、時々漏れるそれから懸命に目をそらしていた。

 だから俺は面白くなかった。失敗して欲しかった。グダグダで不満が残るイベントになって欲しかった。ほらやっぱりなんて言いたかった。参加する方がバカであって欲しかった。
 そう思う自分を自覚せずにはいられなくて、心底嫌悪した。
 イベントのトリはプロ一歩手前レベルのバンドの演奏だった。その直前に参加者主体のバンドをやっていたにも関わらず、30分もチューニング等に時間がかかるレベルのグダグダな設備状態だった。当然彼らの完成度は直前の演奏のそれとは段違いだった。でも、当事者達の演奏の方が余程格好良かった。

 無茶でも、グダグダでも、間に合わせでも、無様でも、やり遂げた彼らは格好良かった。
 常々俺は「何もしないよりか失敗した方が余程良い」なんて言ってるにも拘わらず、俺は何もしなかった。
 勿論、今回に向けて準備することから手を引く代わりに、俺は自分の企画を進めるつもりでいた。だが結局殆ど何も進んでいない。色々と事情があったとしても、言い訳の域を逃れない。参加していたなら、手の止まった分を補える何かを得られていたのかもしれない。
 今回については、俺は己の過ちを認めざるを得ない。敗北感だった。
 きっと参加しても満足のいく結果を残せたとは思えない。だが「参加しなきゃよかった」とは思わなかっただろう。

 ただ、まぁ、ある種今の俺には良い薬になっただろうというのが、総評だ。どちらかと言うと、良い薬としなくちゃ、という感じだが。
 面白くなかった。敗北感を味わった。だが、スマートでなくても一生懸命何かを成し遂げる姿は格好良いのだという、実例を見せつけられ、少しばかりだが久しぶりの悔しさを感じた。
 一風変わっているけど、でも確かに得難い経験をしたと、いう事が出来る。

 色々書いたけどともかく、お疲れさまでした。
 俺は筋肉痛で身体がバキバキです。

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