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断片その1

ひとまず小説のような形で書いていた文章から

2011年6月24日

 バイト帰りに、南青山にあるCenter for COSMIC WONDERへ寄って、ホンマタカシさんの写真展を見た。建物の外観は、白い壁に黒字でCenter for COSMIC WONDERと書かれていて、RICORのカメラをモノクロにして撮ると、ちょうど壁の前を通りがかった白シャツの男性のブレた像が写りこんでいて、我ながらいいかんじに撮れたと思う。黄緑のユニフォームを着て黄緑の荷物ボックスで自転車をこいでいる宅配業者が通りかかって、白い壁との対比がいいと思い、それもカメラでとらえた。時刻は夕方の6時半をまわっていて、空の色は青を残しながらも暮れてゆく陰の部分との対比がそのときの私の心には面白いものに映り、青山の街並みを歩きながら夢中でカメラを構えていた。表通りから脇に入ると、こんな都会にも住宅街は存在していて、静かに一日が終わる、その時間帯にたまらなく心が動かされる。一階にサンクスの店舗が入っていて上の階はマンションになっている建物と、電線が交差する地点に、横書きで「幼稚園あり注意」の掲示が空中に浮かんでいて、何枚も写真を撮った。「幼稚園あり注意」の掲示の何にそんなに引き付けられたのか。背景には電柱からのびた電線が交差して、電線と同じような細い線でつながった横断幕のようで、正方形のマスの中に閉じこめられた文字列。夕暮れ空に浮かんでいるように見えて、とても気に入った。青山学院の通りにまで戻って、青山通りを渡って国連大学の奥にある青山ブックセンター本店へと向かう。ここは寄り道頻度の高いスポットで、ブックセンター裏手に入り空とガラス張りの建物の対比を視界に入れながら駅までの道を歩くのがお決まりのコースになっていた。
7:06 P.M.空の色が最高潮に美しく染まっている。雲が黄金色から薄紅色と混ざりあい、濃い水色した空の地の色を染めてゆく。空を反射したガラス窓と本物の空がつながり、デジカメのモニター越しでもいい画が撮れたと確信するような、そんな夏の夕暮れ、トーキョーの一シーンを記録することが私にはひとつの喜びだった。屋上のらせん階段のまるみ、直線と曲線、金属のポールの質感、自然の中の現代的な建築物にひときわ魅力を感じる。まだ水色を残す空と、完全に影となって黒色の影絵のような高層ビルと大木の葉の形のシルエット。黒い木々のシルエットの中に浮かびあがるビル群と濃い青とぽっかり雲。
 まっすぐ最短の道で帰るのではなくて、どこか寄り道してまわり道して帰りたい気分の金曜日。

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