見出し画像

復讐は恋を妨げる 第二話【漫画原作部門】


〇披露宴会場の外・待合室

披露宴会場を出て、廊下にある長椅子に座る結奈、岬。
結奈、岬のことを信用していいのかわからず警戒している。
じっと岬のことを見つめる。

岬「兄貴も最低だよなー。婚約者が意識不明になったら違う女と結婚なんて」
結奈「……」
岬「あんな紳士そうな顔しちゃってさー。腹黒なんだから」
結奈「そんな……司は腹黒なんかじゃ…」
咄嗟に岬に言い返す結奈。食い気味に。
結奈(司は、優しくて腹黒なんかじゃないはずなのに)
この場に応じて司をかばう結奈に呆れる岬。大袈裟にため息を吐く
岬「はあ、実際に連れてきてよかったわ。その様子じゃ、俺の話を聞いただけじゃ信じなかっただろ?実際に見てもそれじゃあなー」
呆れてほおづえをつく岬。
結奈「だって……」
結奈(信じられない。それに信じたくないんだよ)
涙を手で拭う結奈。岬、結奈をちらりと見て立ち上がる。
つぎの瞬間、結奈の目の前に顔を近づける。
岬「いい加減現実視ろよ!兄貴は意識不明のお前を捨てて、若い女に乗り換えたの!お前は捨てられたの!」
その言葉に傷つく結奈、手のひらをぎゅっと握る。
結奈「そ、そんな…」
岬「はあ、いつまで現実から目逸らすんだよ」
呆れた岬、ぼそっと吐き出す。

結奈「本当に捨てられたの……?」

ぐっと唇を噛み締めるも、涙が止まらない結奈
少し慌てる岬
岬「ハンカチも持ってねーのかよ」
結奈「も、持ってるはずないでしょ…!ずびっ、病院からきたんだから」
涙を拭いながら言う結奈
そんな結奈にぐっとハンカチを差し出す岬※何も言わずに
結奈、受け取らず固まる
結奈「汚ねーから使えよ!ほら!」
口の悪い岬、苦言を言いながらもハンカチを渡す
結奈、ハンカチを受け取り涙をふく。
岬「なあ、捨てられて、若い女に取られて悔しくないのかよ?」
結奈「それは、」
下を向く結奈
結奈(悔しいに決まってる。よりにもよって相手の女が、身近な後輩だなんて……)
顔を歪める結奈をじっと見つめる岬

岬「俺と、共闘する気はないか?」
結奈「共闘?」
顔を上げて岬をみる結奈
ふっと笑って近づく岬
岬「あいつらにその屈辱をやり返すってのはどうよ?」
結奈「そんなこと……」
結奈(確かに、この感情の行き場はない。だけどやり返すだなんて)
岬「俺、嫌いなんだ。優等生で誰にでも優しくて。人生イージーモードでさ。現に裏ではこんなあくどいことしてんのに、おとがめなしなんて……どうよ?」
結奈「実の兄だよね?」
岬「そうだよ。正真正銘の血のつながった兄貴だよ。あいつは次期社長の副社長。なのに俺は煙たがられる存在」
結奈(弟のことは、甘ったれで責任感がまるでないって司が言っていたような)
岬「あいつから奪ってやる。会社での地位も。あのみんなから浴びているまなざしの輝く場所も」

その時、披露宴会場の扉が開いて中の様子が見える。
披露宴会場に顔を向ける岬。
盛り上がる披露宴会場のカット。微笑み合う司と美香。
披露宴会場から目を背ける結奈
結奈「やっぱり奪うなんてそ できない!帰ります!」
岬の話を中断させ帰る結奈。
一人取り残される岬、軽く笑っている。
岬「怒っちゃった……って、何処に帰るんだろ?」

もう一度披露宴会場に目を向ける岬。
岬「……」
考え込み険しい表情

〇回想シーン・岬と司子供の頃
料理を作る岬。小学生くらい。
岬「いつも料理を作ってくれるお母さんのために、今日は僕が作るんだ」
器用に料理を作る岬。テーブルには岬の作ったオムライスが並べられている。
岬「へへっ、結構上手にできた」
自慢気な幼い岬。
司「ただいまー」
中学生の制服、学ランを着た司、帰宅する。
岬「あ、お兄ちゃん。おかえりなさい」
司「どうしたの?これ」
岬「僕が作ったんだ」
司「へえ、」
時間が過ぎる。
父と母が帰宅する。
父・母「ただいまー」
岬「おかえりなさい。あ、あのね……」
司「どけ!」
出迎えようとする岬を押しのける司。
よろりと倒れこむ岬。

司「お父さん、お母さん、おかえりなさい。今日は僕がご飯を作ってみたんだ」
父「おお。司が作ったのか」
司「うん。いつも、お母さんが作ってくれて、大変だと思って」
岬が作った料理を自分が作ったと言い張る司。

岬「ち、ちがっ!」
真実を述べようとする岬。
そんな岬に冷たい視線を向ける父。
父「岬は、どうせゲームでもしてたんだろ」
岬「違うよ!その料理は」
岬の声は父には届かない。

司「お父さん、仕方がないよ。岬は遊んでばかりだから。その分僕が頑張るよ」
父「まったくなー。岬は誰に似たんだろうな。司ができる息子で良かった」
父の言葉に傷つき涙目の岬。

(回想シーン終了)

◯元の披露宴会場
披露宴会場で幸せそうに笑う遠くの司を睨みつける岬
岬「人を不幸にさせといて、自分だけ幸せになれるなんて思うなよ」
岬、ギリっと歯を食いしばる

〇結奈と司が住んでいたマンション・現在は司と美香の住まい
マンションのエントランス。
現在は司と美香の住まい。
知らない結奈は、自分の家だと疑うことはない。

結奈(何かの間違いだよ。こんなはずない……)

ふらふらとマンションに帰る結奈。
エントランスの鍵を開けようとするも苦戦する。

結奈「あ、あれ。鍵が開かない。なんで……」

非接触キーが反応せず、鍵が開かない。
他の住人も帰ってきて、鍵を開けられない結奈を不審な目で見る。
視線にも気づいて、焦る結奈。
何度も鍵を試す結奈。涙を浮かべる。

結奈「お願いだから……開いてよ。私たちの家なのに」

困り果てながらも、意地で諦めない結奈。

岬「こんなことだと思ったよ。いい加減受け入れろよ。現実を」

必死に何度も鍵を試す結奈の腕を掴んで静止させる岬。
岬を涙目で見上げる結奈。

結奈「……っ」
岬「この家もあの女と住んでるんだよ。鍵も変えたんだろうよ」
結奈「そんな! この家は私と司の……」

一緒に仲良く住んでいたころの思い出の絵。

岬「お前は……捨てられたんだよ。司は、あの男は……事故に遭って意識不明の婚約者を捨てて、乗り換えたんだよ!」

認めたくなかった現実を突きつけらる結奈。
こらえていた涙を流す。


岬「こんなところで泣くなよ……」

ちょうどマンションに帰ってくる住人がちらほらといる。

結奈「こんな状況で泣かない人がいるならっ……うっ、教えてほしいよ」
岬「……」
結奈「交通事故に遭って、昏睡状態で……目覚めたら、婚約者が会社の後輩と結婚してて……。こんなの世界一不幸じゃん。私より不幸な人連れてきてよ」

号泣しながら、岬に八つ当たりする結奈。
岬、泣いてる結奈の顔をグイっと上げる。

岬「だったら、復讐すればいい。俺と一緒に」
結奈「復讐なんて……」

ふらりと体が揺れる結奈。
ずっと寝たきりだった結奈、身体に限界がくる。

岬「……っと、危ない」

倒れる前に結奈を支える岬。

岬「とりあえず、病院戻るか……どうせ抜け出してきたんだろ?」
結奈「……戻りたくない」
岬「だめだ。戻れ。身体ふらふらだろ」
結奈「だって、今日一人になったら、辛くてどうにかなってしまいそう」

泣きながら俯く結奈。
結奈をじっと見つめて考える岬。

岬「だったら、俺が連れて帰ってやる」

結奈の体をお姫様抱っこする岬。

結奈「え、ちょっと……」
岬「ここでいくら待っても、お前が待つあいつは現れない。現れるのは、結婚式を終えて幸せな顔で笑ってる男と女だけだ」
結奈「……」
岬「別に手を出したりなんてしない。俺はお前を利用するだけ。だからお前も俺を利用すればいい」
見つめ合う結奈、岬のアップカット。


(第二話了)

第三話

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?