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「千葉のバンクシー事件」から考える、アートとお金の話【ニュースピックアップちば#3】

こんにちは、モンジュノチエ1号です。【ニュースピックアップちば#3】は、昨年にわかに話題となった「千葉のバンクシー事件」の“その後”を追いつつ、そもそも「アートとお金の関係性」に思いを巡らせてみたいと思います。

まずは、「千葉のバンクシー事件」の“初報”(昨年2月)と“その後”(今年6月)を追った記事を2つ。

「謎の路上芸術家」であるバンクシーは、社会を風刺した作品をゲリラ的に街中に登場させることで知られ、作品を売って生計を立てる一般的な芸術家とは一線を画しているように見えます。千葉の“事件”も、本物かどうかは不明として、ふるまい自体は、バンクシーらしいと言えます(“その後”に、落書きによって作品がかき消されてしまったことも含めて)。

とはいえ、バンクシーの作品そのものが「生計を立てる」といったお金の話と無縁かといえば、全然そんなことはありません。あまりに有名な、オークションでの「絵画シュレッダー事件」は、約1億5000万円で落札された後に作品が裁断されましたが、結局、落札者はお金を払い、作品を購入したそうです。

バンクシーのようなふるまいの芸術家ですら、約1億5000万円の価値がつくアートの世界。千葉県佐倉市にある「DIC川村記念美術館」の事例から、その驚くべき価値の実際をもう少し見てみます。

DIC川村記念美術館は近年、コレクションの整理を進めているそうで、いくつかの重要な作品を売却しています。

ひとつは、アメリカを代表する抽象画家による「アンナの光」という作品で、売却額はなんと103億円! もうひとつは、重要文化財の屏風。こちらは金額非公表ですが、重要文化財ですから相当な額(億単位?)であることが予想されます。(この屏風、その後、ZOZO創業者の前澤友作さんが取得したと公表しています)

「アンナの光」は、巨大なキャンバスがほとんど赤く塗られて、少し白い余白があるだけの作品で、抽象画を見慣れた人でないと「なんじゃこりゃ?」と首をかしげたくなる作品です。(下記の画像参照。ちなみに、私は大好きな作品だったので、売却されたニュースを知ったときには愕然としたものです・・・)

一方の長谷川等伯の屏風は、重要文化財という国のお墨付きがある、れっきとした価値の確立した作品です。ここまで見てきた3つの作品をまとめると、こんな風になります。

①バンクシーの遊びのようなシュレッダー作品=1億5000万円

②ただ真っ赤に塗られただけの抽象作品=103億円

③重要文化財の屏風=非公表(ですが、億単位は確実でしょう)

方向性も、作風もまったく異なる「アート」なるものが、どうしてこんなお金になるのか? 例えば、こちらの記事ではこんな風に解説されています。

はじめから価値の定まったアートなどは、存在しません。アーティストが制作し、発表し、評価され、作品が社会の中で共有される過程があってはじめて、芸術的な価値がついていくのです。言い換えると、どんなアート作品にも社会化のプロセスが必要で、その結果、資産としての価値も生まれるのです。

この「社会化のプロセス」というのが、アートを大金に変えるひとつの役割を果たしていると考えられます。

例えば、①のバンクシーであれば、紛争や社会問題が起きている地域であえて風刺的な路上アートを展開することが、全世界的にバンクシーという名を高め、ひいては作品の価値を高めることにつながっています。

②・③は、作品の出自は異なるものの、いずれも「アメリカを代表する抽象画家の作品」「重要文化財の屏風」という社会的な評価があり、さらに歴史ある美術館が収蔵していたという事実も加わることで、高額な売却費用につながっていると考えられます。

こう考えてくると、実はアートは単に美術館といった日常から切り離された世界の出来事ではなく、「モノの価値はどう増えるのか」といったゴリゴリの資本主義のただ中にあることが分かります。アートは、多分にビジネス的なのです。

アートとビジネスの関係性を、セレブコレクターのゴシップ性も含めて理解するのに最適な本を最後に紹介して、今回は終わりにしたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。


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