桃園すず
【創作大賞2023】恋愛小説部門に応募作品をまとめました。
あらすじ 第一話 いつからか夜空を見上げるのが習慣になってしまった。白く輝く月が出ている夜は、サヨコに会えるんじゃないかって期待して。 結局彼女には会えないまま、時間だけが過ぎて、俺は大人になってしまった。 今も鮮明に覚えている。 夏休みの深夜のプールサイドで彼女に会ったあの日のこと。 ○ ☽ ○ 部室に忘れた携帯電話を取りに、深夜の学校に忍び込む。プールのフェンスには抜け穴みたいなところがあって、そこからなら簡単に侵入できてしまうのだ。膝を地面で擦りなが
めちゃくちゃお久しぶりです。 気づけば2024年も8月です。 今年の目標は、長編を1本書き切る、だったはずです。 もう1年を半分以上過ぎた今、進捗はどうなっているかといえば……今年もあっちこっち書き散らかして全部中途半端です。どうなってんだ! とはいえ良い報告もあります。 アルファポリスのライト文芸大賞で奨励賞を受賞しました。 長編で良いところまで進んだという事実がとても嬉しかったです。 でもこの作品は今年書いたわけじゃないんですよね。開講したのも去年だし。なので、いま
せっかくnoteやっているので振り返りをしてみようと思います。といっても振り返るほどの活動をできていないのですが…… コンテスト・公募 今年はずっと出してみたかったノベル大賞に出してみました。新作は出せず、満月を突っ込みました。結果は1次も通らず。来年も出したかったけど、新たな長編は書けなかったので見送りだな。 エブリスタでは執筆応援キャンペーンと妄想コンテストに応募しました。 妄想コンテストは過去作2作と新作2作で臨みましたがどれも撃沈。残念無念。 執筆応援キャンペー
はい。反省会です。 何の? 創作大賞です。 中間発表がありましたが、残念ながら入ってませんでした。 お祭り的に参加したとはいえ、やっぱり悔しいですね。 応援してくださった方々、本当にありがとうございました! せっかくなので、参加作品の紹介を。 『サヨコ』です。 この作品は、2020年に書き上げたものです。 が、今回応募するにあたって、改稿しました。 いつもは「改稿って何するの?」という感じで、文末の表現を見直すくらいしかしていませんでした。 今回は、会話や地の文でさ
連続投稿うんぬんと唆されたのでとりあえず呟く。プロットは今度こそできたはずなのに書き始められないので困っているよ。余分かなーと思って削ぎ落とした要素。でもわたしにとってそれがないと話が膨らまないみたい。とりあえず書き散らして、後から削る作戦にしてみようかなぁ…
やーっと、桃フラペチーノ飲めました🍑 今まで飲んだスタバのフラペチーノで一番美味しいかもしれない🥺 また飲みたいなぁ
わたしもつぶやいてみよー。 せっかくnote作ったのだからエッセイとか書きたいなーと思うけど、何書いたらいいかわからない🙄
第11話はこちら↓ 中学校の近くで下ろしてもらうと、一目散に駆け、プールの裏のフェンスに向かう。季節は違えども、見慣れた風景を目の当たりにし、あの頃に戻ってきたように錯覚する。走ったからなのか、期待と不安で緊張しているのか、心臓が苦しいくらいに脈打っている。 「は……? 嘘だろ」 目的の場所だけが俺の記憶と様変わりしていた。冷静に考えれば、穴の開いたフェンスがそのまま残っているわけがない。全面金網のフェンスだったその場所は、下半分はコンクリートで固められ、上半分も丈
第10話はこちら↓ 紫の言葉をもう一度思い出す。迷惑だとかっていうのは本心かもしれない。けれど、紫が一番言いたかったのは『俺には大切にしなきゃいけない人がいる』ということではないだろうか。俺が紫にできる償いは、サヨコにきちんと向き合うことなのかもしれない。 高山が逮捕されたのだから、サヨコは家に戻っているだろう。そう思って彼女の家を訪ねてみたけれど、出かけているのか会うことができなかった。置き手紙でもしようと思ったけれど、メモ帳も手帳なんかも持っていなくて、スポーツク
第9話はこちら↓ 「石崎さん、受付に遠野さんという方がいらっしゃってるんですけど」 午後の講座の真っただ中で、急に呼び出しがかかった。あれから何度か高山の会社に行ってみたけれど、当然のように門前払いされて会うことは叶わなかったのだけれど。サヨコが何か事件に巻き込まれていたのではという俺の予想は杞憂だったということだろうか。 「すぐに行きます」 別のクラスのインストラクターに一時的に離れることを伝えてプールを後にする。受付に声をかけると、応接室に案内したと言われ、そ
第8話はこちら↓ 仕事を終えて紫の家に向かう。何度も通いなれた道。もしかしたらこの街に来るのは最後になるかもしれない。話があるから、と紫に伝えたのは自分だというのに、なぜか足が進まない。遠回りをしてしまう。もっと、ふたりでいろんなことをしておけばよかった。例えばそこの屋台のラーメン屋や、立ち食いの焼き鳥屋とか、行ってみたら楽しかったかな。 感傷に浸ってしまうのは、忍び寄る秋の気配のせいだろうか。暑くて眩しい夏が終わると、街並は次第に色褪せていく。例年はしぶとく夏の顔をし
第7話はこちら↓ 「久しぶり。ごめん、急に」 「いや、いいよ。何? 彼女できたって言ってたけど、惚気話?」 俺は誰かに話を聞いてもらいたくなって、金田を飲みに誘った。合コンに行かなくなってから会うのは初めてだ。 「ああ、まあ。とりあえず乾杯しようぜ」 ジョッキを持ち上げて、ガチっと音を立てて乾杯をする。この店のオススメという氷漬けの檸檬が大量に入ったサワーは、まだ溶けていないからかほとんど焼酎の味しかしなかった。カラカラと音を立てて撹拌する。 「なんか、悩み?
第6話はこちら↓ 引き出しの一番上を開けて、今はもう電源が入らなくなってしまった古い携帯電話を取り出した。サヨコがあのヘアゴムをお守りだというなら、俺にとってはこれがお守りだった。映画館で撮ってもらった写真は、自分たちのはもちろん、映りこんだ他人の服装まで説明できるくらいには何度も見た。写真のデータはSDカードに入れていたから、今でも見ることはできる。画質が随分と悪いことを無視すれば。 ずっと会いたかったのに。やっと会えたのに。どうしてこんなに胸が苦しいんだろう。遠い記
第5話はこちら↓ 紫と付き合い始めて、すべてがうまく回り始めた気がする。惰性でやっていた仕事も、自分なりに企画を考えて提出したら採用された。半同棲状態になって、食生活も変わった。外食かコンビニ弁当ばかり食べていたのが、紫の手料理が多くなった。週末は紫に教えてもらいながら、俺自身も一品作る。食事が変わったからなのか、心が満たされているからなのかはわからないが、体の調子もよく、疲れが溜まりにくくなった気がする。 「煌太、明日どこか行きたいところある?」 金曜の夜、紫の
第4話はこちら↓ 聞き慣れたチャイムの音で目が覚める。寝ている間にだいぶ汗をかいたらしい。パジャマ代わりのTシャツはぐっしょりと濡れていた。少し熱が下がったのか、重たかった身体はふわふわとして、むしろ重力を感じない。 ゆっくりと玄関に向かう間にもチャイムはしつこく鳴り続けていた。覗き穴から外を確認すると、佐原が立っていた。 扉を少し開けると、すかさずその隙間に指が引っ掛けられる。 「石崎くん、大丈夫? どうせ何も食べてないんでしょ。何なら食べられる? いろいろ買って
第3話はこちら↓ 雨に当たったのが良くなかったようで、久々に熱を出してしまった。重たい身体をなんとか動かして、職場に休ませてほしいと連絡すると、今日はよく休んで明日は出てくるように、という言葉をもらった。 冷蔵庫に入っていたミネラルウォーターを一口飲んで、そのペットボトルを首元に当てる。ひんやりとして気持ちいい。とぷんと水が揺れる音がして、俺はそのまま意識を手放した。 ○ ☽ ○ サヨコと俺の真夜中の水泳教室は、十四日目を迎えようとしていた。サヨコは泳いだことがない