桃子はお餅を焼いて食べます（ヤキモチ案件
朝から怒らせないでほしい。
家から出る朝の最初の瞬間は
小鳥のさえずりに耳を傾け、空気の清々しさに頬が緩むような
フレッシュな気持ちでいたい。
しかし、私は彼と一緒に家を出ながら、
いまこの瞬間に彼がカラスの標的にされて
頭をしたたかにつつかれればいいのにと思っていた。
彼に対して腹を立てていた。
しょっちゅうあることなのだが今朝も、
彼はいざ出かける、準備万端、というタイミングで
「トイレ行きたいので少し待機していて」と言い出した。
ささいなことで、わざわざ声に出して怒ることではない。
でも、お出かけのたびにこれをやられるとつらい。
会話の合間に何度もため息をつかれるような
お出かけする時の前向きな気分に水を差される感じ。
怒るほどのことではないので
そのたびに注意する気にもなれず、
そしてストレスだけが部屋の片隅の埃みたいにたまっていく。
彼は段取りができない。
段取りという概念を幼児服とともに脱ぎ捨てて大人になったような人間だ。
だから彼は段取りができる人が好きだ。
桃鉄界隈に「しまちゃん」という人がいる。
女性だ。しかも、段取りができる女性だ。
「今日はしまちゃんが勝つぞー」
「しまちゃんが勝って、チームも今日から連勝街道や」
私のカラスの呪いに気づくことなく、
のんきに今日のMOMOリーグに出場するしまちゃんの話をしてくる。
ちなみにMOMOリーグとか
彼がそのMOMOリーグにおいてチーム監督をしているとか。
そのあたりの詳細は、二度と話題にしたくないので、
大変お手数をかけて申し訳ないのだけど
こちらを読んでもらえると助かります。
しまちゃんはしっかり者だ。
九州生まれ九州育ちの酒飲みなのに、
お酒を飲みながら桃鉄をしていても
みんなが購入した物件の数も漏らさず数えることで、
トータル100物件購入に達した時にもらえる
音速カードという強いカードを段取りよくGETしたりするらしい。
段取りもできないし
酔っぱらうとすぐにスマホを失くしてくるうっかり者の彼とは対極。
だからだろう、磁石のN極がS極に引きつけられるように
彼は何かとしまちゃんに頼ったり、
一緒に桃鉄のペア戦大会に出場して楽しそうにしていたりする。
これは普通の彼女なら嫉妬案件だ。
しかし、私は大丈夫。
なぜなら、私は聞きもしないのにうれしそうに話してくる彼のおかげで
しまちゃんが九州出身でまだ若くて、そしてお酒飲みで
一部桃鉄界隈の人からは長澤まさみと呼ばれるほどにかわいいという
個人情報を握っているからだ。
生声を晒すことだってできるのだ。
彼は愛弟子と言われてうきうきしていたが、
桃鉄対戦では彼よりもしまちゃんの方が圧倒的に強いということも
私は知っている。
今日は、しまちゃんがMOMOリーグに出場する。
私はMOMOリーグにはまったく興味を持っていないのだが
もう１０戦近く彼と一緒にペア戦に出場しているのに、
まだ一度も勝利したことがないしまちゃんを応援したい気持ちが
少しだけある。
推論だけど確信を持って言える。
ペア戦は彼が足を引っ張っているのだ。
その罪滅ぼしみたいな気持ちが
私にしまちゃんを応援させるのだろう。
そしてしまちゃんが勝ったら明日の朝こそ彼にこう言うのだ。
「お出かけ前のトイレ段取りもできないから桃鉄も弱いんじゃない？」
「しまちゃんはちゃんと段取りできるから桃鉄でも勝てるんだよ、トイレ段取りのことは知らんけど」
みなさんもぜひ、しまちゃんの応援をしてほしい。
アジアカップ日本代表の試合が有料DAZN放送中心になりつつある今、
なんと無料のyoutube放送です。
これから、正月に食べきれなかった冷凍庫のお餅を焼いて食べる桃子より