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死ぬ前に食べたい…重慶のソウルフード「酸辣粉」(サンラーフェン)日本唯一の専門店に行ってきた

ある程度大人になるといろいろなものを食べ尽くしてしまうので、新しくて美味しいものに感動する、という経験はなかなかできないものだ。大人になってから「こんな美味しいもの初めて食べた!」という経験ができたらそれは大変ラッキーなことだと思う。

先日、私が7年前に中国で初めて食べて感動した食べ物に、日本で久しぶりに再会するというハッピーな体験ができた。

私が日本で7年越しに再会した懐かしの食べ物とは、中国の重慶を旅行していた時に出会った酸辣粉(サンラーフェン)という食べ物だ。そして訪れた店は、日本唯一の酸辣粉専門店「辣上帝」(ラシャンティ)。

重慶で初めて酸辣粉を食べた時、味も食感も具材の取り合わせも、とにかく全部未知だったことと、何よりめちゃくちゃ美味しかったことにひたすら感動した。

重慶の辛シビご当地フード「酸辣粉」とは?

酸辣粉について、特に食通でもグルメでもない素人の私が超絶ざっくり説明すると、辛くて酸っぱくて痺れる春雨スープだ(言い方……)。

具体的に何が未知だったのかというと、春雨が日本で食べられているものとはまるで違う食べ物だったこと。日本で春雨といえば、細くて歯でプチプチ切れやすくて、サラダやスープになっているサイドメニューとしての印象が強いだろう。

ところが酸辣粉の春雨はというと、うどんくらいの太さがあって食べ応えも見た目も存在感抜群。もっちりとしたタピオカのような食感が楽しめるのだ。

この極太春雨をラー油や中国の黒酢(これも重要!)、ひき肉、山椒などが入った辛シビスープで絡め、ピーナッツやパクチーをトッピングしたものが酸辣粉だ。極太春雨のもちっとした食感と辛くて酸っぱくて痺れるスープは完璧にマリアージュだった。激辛好きの私が唸るくらいしっかり辛いのも嬉しかった。

重慶で親しまれている酸辣粉と火鍋


しかもこの酸辣粉ときたら、現地重慶ではファストフード的位置付けにあり、ランチやおやつに街中で気軽に食べ歩きできる。

せっかくなので、私が7年前に重慶で初めて食べた酸辣粉を紹介する。

重慶では街中のいたるところに酸辣粉店がある。私は当時ハマりすぎて1週間の滞在中ほとんど毎日酸辣粉を食べたのだが、一番よく食べたのが「好又来」(ハオヨーライ)というチェーン店の酸辣粉だった。

「好又来」で買った酸辣粉。1杯7元(2015年当時。100円程度?)のお手軽ファストフード
パクチー、ピーナッツ、ネギ、ひき肉などがトッピングされた好又来の酸辣粉。初めて食べた時、甘酸っぱくてガッツリ辛くて痺れて「うま〜い!!」と叫びそうになった。

大昔の写真を引っ張り出すのに大変苦労した。せっかく引っ張り出してきたのでついでに当時の重慶の雰囲気をご紹介。

重慶といえば激辛食品、中でも火鍋が有名だろう。これもまた、街中のいたるところに火鍋屋があり、どれもこれも辛そうだった。地理的に南に位置する重慶は暑いので、みんな辛い食べ物や酸っぱい食べ物が食べたくなるのかもしれない。

火鍋街?というくらい並びまくる火鍋屋
重慶火鍋を重慶ビールとともに。火鍋はとにかく辛い。そして痺れる。日本人が気軽にチャレンジすると大半を残すことになるかもしれないが、慣れてくるととてもおいしい。滞在中何度もチャレンジした。

日本で唯一の酸辣粉専門店「辣上帝」(ラシャンティ)

重慶で酸辣粉に感動した私は、日本に帰ってきてからも酸辣粉に恋焦がれていたのだが、ある時日本に1店舗だけ、酸辣粉専門店が存在するらしいという情報を入手した。

絶対食べに行く!!!そう心に決めた。


……そしてそのまま数年が経過した。

ここまで散々、感動しただの未知の出会いだの、熱い思いを示しておいて何年も放置していたとは……お前の熱意はそんなものか! と言われたら何も言い返せない。とにかく、7年越しにやっとのことで酸辣粉と再会することができたのだ。

日本で唯一の酸辣粉専門店「辣上帝」(ラシャンティ)は、小田急線の豪徳寺駅徒歩5分ほどのところにあった。重慶の「好又来」とは全く異なる小ぎれいでおしゃれなカフェ風の店舗だった。

小田急線の豪徳寺駅は新宿から15分程度。行けそうでなかなか行けない豪徳寺駅(どうも小田急線の乗り場が苦手で……)
おしゃれでアットホームな店舗。テイクアウトも可能だ

店内は2人掛けのテーブル席が3つほどにカウンターというこじんまりとした設計。本場の酸辣粉と同じようにテイクアウトにも力を入れているようだった。

酸辣粉実食! 本場重慶との違いは?

そして、メニューは酸辣粉のみ!なんとも潔い&酸辣粉への敬意を感じる。

食べ物のメニューは酸辣粉のみだが、マンゴーラッシーなど、辛いものにあうドリンクとアルコールも取り扱っている。

そして酸辣粉のトッピングとして、パクチー、ネギ、チーズ、卵、納豆などがチョイスできるほか、辛さを5段階で選択できる。辛さによって値段が異なるのがポイントだ。私は初訪問なので③の四川並(1408円)をオーダーすることにした。

辛いものマニアとしては⑤危険な辛さをチョイスすべきか非常に迷ったが、本場重慶の味を再現している場合「危険な辛さ」はマジで即死するレベルなので、ひるんで③にした

注文してから数分。待ちに待った酸辣粉が登場した。

今回はパクチーと万能ネギをトッピングで追加したが、白菜と唐辛子粉(おそらく)と粉山椒(シビれる素)がデフォルトで付いている。下記の写真のように、すべて取り分けられていて好みで調整できるのが素晴らしい。

辛いのが心配な場合は様子見しながら入れるといいだろう(こんなことなら最初から⑤の「危険な辛さ」にすればよかった)。

トッピングなしでも白菜が付いているほか、スープにはひき肉と砕いたピーナッツ(写真では見えにくいが)が入っている
嬉しいのはトッピングの白菜もパクチーも、片手で山盛りくらい付いてくること


トッピングを全部入れてさっそく実食。


ひと口食べるや「お   おおお」と「神の雫」の遠峰 一青よろしく、唸りそうになった。

黒酢の酸っぱさと、ガツンとくる唐辛子と山椒の辛さとシビレ、モチっとした春雨の食感……これぞ重慶で1週間の滞在中毎日食べるほどハマッたやつ。これぞ求めてたやつだ。

普通のラーメン1人前くらいの量があるが、酸っぱ辛いスープに白菜とネギ、パクチーがたっぷり入っているのでとてもあっさりしている。ひき肉とピーナッツが食感にアクセントを加えて、ペロりとスープまで全部飲み干してしまった。食べ終わってもまったく胃にもたれない。麺は春雨なのでとってもヘルシーだ。

辛さはトッピングを全部入れても全然問題なかったので、今度食べるときは⑤危険な辛さに挑戦したい。

美味しさのトランス状態に陥った結果、春雨をリフトする図を撮り忘れてしまったので、極太春雨をアップした写真は「辣上帝」のホームページより拝借させていただく。

「辣上帝」のホームページより、画像をお借りしました
完食

日本唯一の酸辣粉専門店の味は、確かに重慶で食べた本格的な味だった。

お店の方と少しだけお話したところ、実際に中国人のお客さんもよくいらっしゃるとのこと。また、私と同じようにハマる人が多いとのこと。女性で、特に妊婦さんが、あの酸っぱさと辛さを求めてリピートしてくるのだそうだ。

その気持ち、めちゃくちゃよくワカル。ちょっとした中毒性がある味なのだ。自宅の近くにあれば間違いなくリピートするだろう。

冒頭で紹介したようにお店はテイクアウトにも対応しているほか、お客さんの中にはテイクアウトした酸辣粉を自宅で冷凍保存して食べる人もいるらしい(※自己責任)。トッピングが最初から別になっているのでジップロックなどで密封して冷凍すれば家でも食べられそうだ。

日本ではなかなか味わえない本場重慶のソウルフード酸辣粉を食べてみたい人はぜひ行ってみてほしい。