今となっては激レア!飛行中のコックピット見学に誘われるプロだった小学生の私
昔、飛行機に乗るとコックピットを見学させてくれることがありました。今はもちろん禁止されていますが、当時(30年ほど前)は飛行機に乗っているとCAさんの方から「よかったら操縦席を見に行かない?」なんて声をかけてくれることがあったのです。子どもの頃の私はこのコックピット見学のプロを自称していました。
プロが導き出した条件
今では考えられないことですが、特別な飛行機やツアーでなく、普通の家族旅行などで乗った旅客機のコックピット、しかも何百人とお客さんを乗せて操縦している真っ最中のコックピットに、アポ無しで入れてもらえることができた時代でした。操縦席には機長さんと副機長さんが並んで座っていて、操縦桿や一面に並んだボタンの説明をしてくれたり、操縦席に座らせてくれたりもしたのです。
コックピットから見る空は圧巻で、眼下が一面雲、時間帯によって変わる空の色など、何度見ても感動的でした。
その景色や、スターツアーズみたいでカッコいいコックピットに入りたくて、私は旅行のたびにひそかに知恵を絞っていました。
「どうやったらコックピットを見せてもらえるだろう?」私はコックピット見学ができた時とできなかった時の状況を独自で調査・分析し、あるパターンを導き出すまでのオタクになっていました。導き出した条件がこちらです。
条件1. 子どもであること(感覚的には小学生くらいまで)
条件2. 比較的席が空いていること
条件3. 長距離便であること
条件4. 揺れが少ない航路を飛行中であること
条件5. CAさんの心に余裕があること
そうなのです。そもそも、コックピット見学は子ども向けのサービスっぽいぞ、ということには察しがついていました。それと、当然シートベルト着用のサインが消えているタイミングかつ、食事などの機内サービスが落ち着いている時間が長いほど可能性は上がります。それ以外はCAさんの御心次第でした。私は飛行機に乗るたび、いかにCAさんに誘ってもらうかに執念を燃やしました。
声をかけてもらうコツ
国内線で1〜2時間なら本や漫画を読んで時間をつぶせますが、国際線で5時間6時間となると退屈にも限界がきます。今みたいにネットなんかありません。機内エンタメも充実していなくて、確か各席にモニターがつく前の時代。上映される映画も機内前方の大きなスクリーンで一斉に流されていたはずです。
子どもにとって飛行機内の楽しみといえば、機内食とたまに配られるおもちゃくらいしかないのです。そんなわけで、飛行機で過ごす時間にコックピット見学があるかないかは楽しさが全然違ってきます。
コックピット見学のプロとして、私はCAさんに声をかけてもらうコツを編み出しました。私にできることは以下の3点です。
コツ1. お行儀よくしていること
コツ2. 退屈していることを暗にアピールすること
コツ3. 妹を使うこと
CAさんに嫌われるようなうるさいガキになってはダメです。大人しく良い子で、でもどうしようもなく退屈で退屈で…ということを静かにアピールするのです。CAさんが通るタイミングで親に「あとどのくらい?」と聞いてみたり「眠れないよぅ」などと言ってみたりします。効果がない場合は、私より小さい妹を利用…力を借ります。
CAさんがとおる時に妹に向かって「つまんないの?大丈夫?ジュース飲む?」などと、退屈する小さな妹の面倒を見る良き姉であることを精一杯アピールします。
こんなことをしていると大抵優しいCAさんが話しかけてくれておもちゃを持ってきてくれて、何度か話をすると「飛行機の操縦席見てみたい?」と言って連れて行ってくれるのでした。
今考えてみると、小学生の女児のわざとらしい演技やセリフはCAさんには見え見えだったかもしれませんが、さすが大手航空会社のCAさんはみんな心が広くて優しい一人ばかりでした。
あとから聞いた話によると、CAさんにお願いして機長がOKすれば見学できることもあったようです(大人でも)が、小学生だった私はそんなことは知る余地もありません。飛行機に乗るたび、今回もツアーに誘ってもらうぞ!とよくわからない意気込みを抱いていた、子どもの頃のちょっとレアな体験でした。