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【読了】「怨霊になった天皇」 竹田 恒泰

初版を購入して、約15年の時を経て再読。

当時は、「現代の日本で?!」というものすごい驚きと、自分の知らない世界を知ってしまった感がありました。

時代は違うが現在「光る君へ」に夢中なのと、1年位前にNHKオンデマンドで「平清盛」を見て素晴らしかったので、自分的に平安時代が熱い今が再読の時ぞと思い手に取りました。
初めて読んだ時は(誰が誰やら…)と目が滑っていく感覚だった登場人物も、知識が増えた今はしっかりとらえられました。

この本では、まず憤死が実際に起こり得る死なのか?人は怒りのあまり死ぬのか?という事から始まり、1つ1つの「それはあり得るのか?」を丁寧に潰して、いよいよクライマックスの崇徳天皇へ。
そして、日本は許す文化・和の国であるという事につながっていきます。

以前読んだ時はサラーッとだったのですが、改めて読むと戊辰戦争の下りは会津藩士の子孫としては、少し受け入れがたいものがありました。
(会津は誰もやりたがらなかった京都守護職をなかば押し付けられたのであり、職にはまじめにあたったのであり、孝明天皇の御信任も厚く、朝敵どころか朝廷に一心に尽くした藩だからです)

怨霊が怨霊を生み、生きている人々が振り回されるだけの時代を経て、怨霊の御霊を慰め、その力を頂く(利用する?)方法、またそもそも怨霊を生まないシステムなど、これぞまさに歴史であると興味深いです。

それにしても、日本3大怨霊と言われる中で、なぜ崇徳天皇だけこれほどまでに別格で恐れられているのでしょうか?

筆者の竹田氏は、この本執筆の際にPCをはじめ執筆にかかわる機材が一気に壊れたという事を序盤・終盤で書かれていらっしゃいます。
日がさんさんと当たるところに設置していたのでは?とか、機材の寿命なのでは?というツッコミが沸き上がらないといったら噓になりますが、大事なのはそんな点ではなく、竹田氏の感じた事、その空気感なのだと思います。
(そうでないとしたら、わざわざ書かないだろう)

で、なぜ崇徳天皇が別格なのかというと、1つは、天皇であること。
そしてもう1つは、他のお2人と違い、はっきりと具体的な言葉を残しているということかなと思います。

①日本国の大魔縁となり 
②皇を取って民とし民を皇となさん

この呪詛は大変具体的であり、何をどうしても静まりようがない気がします。

例えば、菅原道真は「東風吹かば匂い起こせよ梅の花、主なしとて春をわするな」という歌を残しており、もちろん梅に万感の思いを託しているだけで梅への未練だけではないのは分かるのですが、呪詛ではありません。

また、平将門については、死後も”まだ戦うぞ!”的な言葉を発し、「いや、あなたもう故人ですから」という歌を詠まれて本当に自分は死んだのだと自覚した的なエピソードはあるものの、呪詛を口にしたかどうかは分かりませんでした。
将門公については、武士であることを考えると、呪詛は口にしなさそうな感覚があります。このお2人と比べると、崇徳天皇の別格さはやはり桁違いだなと思いました。

しかし、生きておられたころのエピソードを読んだり、大河の平清盛で井浦新さん演じる崇徳天皇を見たりするうちに、恐れながらどうしようもなく心を寄せる人物の1人となってしまいました。

  • ずっと怨霊として恐れられているのは、今となってはご本人からしたら不本意かもしれず、もう今はただ静かに過ごしたいと思っておられるかもしれないな…

    と読み進めると、終わりかけに衝撃的な人が登場します!

高安美三子さんという祇園のお茶屋さんの女将さんなのですが、驚くべきことに、崇徳天皇が夢に現れただけではなく、ご気配を感じたり、心が通じ会話をされたり、自分の記憶とは全く異なる記憶が流れてきたり、いきなりすらすらと歌を詠んだりされたそうです。

自分の体が崇徳天皇の恋人(当時)に乗っ取られたか、もしくは自分では気づかなかった生まれ変わりなのか?!
細かいことはさておき、高安美三子さんによると、崇徳天皇は、私が感じたのと同様、既に怨霊と呼ばれるのは不本意であるとお考えだそうです。

いろいろ衝撃的過ぎてにわかには信じがたいのが正直なところではありますが、大事なのは、今は穏やかな神様でいらっしゃるということではないでしょうか。

そして、何よりも、いたずらに恐れたりネタ扱いしたり騒ぎ立てるのではなく、心を寄せるということなのではないか、と思いました。

日本は世界最古の国家のうちの1つであり、古から死者と共にあり、その文化は廃れることなく続いています。
普段意識することはなくても、この本を読むと納得できたり腑に落ちることが多かったです。

特に今、大河「光る君へ」を見ていると、平安時代は怨霊と切っても切り離せなせず、普段から意識しまくりです。
道長など、栄華を極めた一方、怨霊に振り回され怯え続けた一生でした。

直接的な感じではないものの、大河の副読本としても価値のある本だと思います。


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