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金色の追憶

自分には縁がない。

そんな風に思っていたから、いつも僕は君を遠くから見ていることしかできなかった。

君は、この季節になると必ずあの揺れる金色の夢の世界の下で、静かに座って本を読んでいたね。

君は知らないかもしれないけれど、君がそこにいるだけで、まるで幻想的な絵画のような空間が現れていたんだよ。

僕は、この眼に焼きつけようと必死だった。

輝く金色の揺れるフレームが、君の美しさを際立たせて、それから何処か遠くへさらって逝くようで。

君があの日、突然顔をあげて手招きした時のことを、僕はもう数えきれないほど繰りかえし再生している。

“あの世界” が “この世界” になった瞬間だった。

この世界は、とても幸福だったよ。

とても。

とても…

あの日、僕をこの世界へと誘ってくれてありがとう。君と過ごしたこの世界は、ミモザの花がいつも僕たちを強く繋ぎ止めてくれていたね。

この樹が創りだした最高の世界だったのかな。

たくさんの金色の夢の日々たちよ、ありがとう。
穏やかな優しい歌声たちよ、ありがとう。

本当にありがとう。
また君が待つ、想い出の“あの世界”へ僕も、もうすぐ旅立つから。

次は僕から声をかけるよ。
君の喜ぶ本を持っていくから待っててね──

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