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実際やってみると、意外と難しい。ー心理学の再現性の観点からー

2015年のScienceに心理学の再現性が40%以下という結果が乗りました。
当時、某先輩から「こんな記事あるけど、心理って大丈夫なん?」
みたいなこと言われ、上手く返せなかった思い出があります。

今回は、実験の再現に絞って考えたことを2点書きます。

①そもそも実験の完璧な再現が難しい

これは、心理学の永遠の課題だと思います。
ある論文では実験について詳しく書かれていないことが指摘されています(Iqbal et al., 2016)。
実際、実験の方法は論文によって記述の仕方はまちまちです。
しかし、どこまで具体的に記述をしなくてはいけないのかというのは難しいです。

例えば、実験説明⇒脳波計装着⇒実験という流れは同じでも、
脳波装着時に参加者の方とお話をするのかしないのかや、
テレビを見てもらうとか、その研究室の慣例的な方法があると思います。
(僕の研究室がしている、していないとかは関係ないです。)

②実験参加者の再現が不可能

さらに、完璧に実験を再現できたとしても、実験参加者が異なります。
これはどうしようもない。

例えば、日本でも欧米でも水素を燃やせば水に変わりますが、
日本人と欧米人で実験をやった場合、
文化的背景から結果が変わる可能性も往々にしてあります。

文化的背景に関係なく、
そもそも、周りの環境や自分自身の性格など同じ人はいません。

さらに、同一人物に実験を行っても、行う時期が違うので、
ある日に実験を行ったら恋人が出来てハッピーな状態で受けたけど、
別の日に実験を行ったら恋人と別れていて落ち込んだ状態で受けるみたいなことが起こりうるのです。

では、これを統制できるのかと言うと、倫理的に難しいと思います。
一実験にそこまでの強制力はないと思います。

今回の事例から考えたこと

今回の事例から何が言いたいかと言うと、

批判するのは簡単だけど、
実際やってみると、意外と上手くいかないことの方が多い。

(Science誌を批判するつもりは毛頭ありません。)

心理学は再現性が低いからダメだと安易に終わらせるのではなく、
では、なぜ、再現性が低いのだろうかと考えていく必要がある。
ということを言いたいのです。

さらに、他分野の方が言うのなら、
心理学とは別の視点から建設的に議論をするべきだと思います。

別に今回の話題に限ったものではなく、何事もそうだと思います。
単なる批判に留まるのではなく、
どうすれば改善できるのか、代替案はないのかという建設的な議論を
心がけていきたい
と思います。

それでは。

引用文献と参考文献

引用文献
Iqbal, S. A., Wallach, J. D., Khoury, M.J., Schully, S. D., & Ioannidis, J. P. A.
     (2016) Reproducible research practices and transparency across the
     biomedical literature. PLoS Biol, 14: e1002333.
参考文献
渡邊芳之. (2016). 心理学のデータと再現可能性. 心理学評論, 59(1), 98-107.
参考サイト
・再現性問題って何が問題なの?

・「心理学研究の再現性は低い」に心理学者が反論
https://www.enago.jp/academy/reproducibility_psychology/

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