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【コラム】ミュージアムグッズサミットvol.1を終えての所感(長文です)

9月28日のミュージアムグッズサミットvol.1無事に終了しました!!

ゲストの山下治子さん、開会と閉会のご挨拶をしてくださった、佐々木亨先生、山本順司先生、バックで回してくださったスタッフの皆様、そして何より、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。

オンスケでかっちり終えた感もあるので、チャットルームで議論や意見交換をしてくださった皆さんは、まだ話足りない部分もあったのではないかと…。

主な話題提供の内容

テーマはミュージアムグッズやショップと、博物館とのディスタンスについて。ざっくりではありますが、私も学べたことを含めて山下治子さんの話題提供をご紹介します。

博物館におけるミュージアムショップという考え方がいちばん最初に紹介されたのは、1977年の国立民族学博物館(以下みんぱく)。これは山下さんの先行研究でも紹介されているのですが、面白いのが千里文化財団を作ってショップの運営を始めたという点。梅棹忠夫さんの組織の作り方に、先見の明アリだよね…。調査などで海外の事例を多く見てきた点や、商才も感じさせる。チャットルームでも唸る声が聞こえました。

その後の1980年代のバブル期における、ミュージアムグッズと博物館の距離の話も興味深かった。この当時の「何かうまく言えないけど、海外の博物館でも売っているようなオシャレなものが欲しいのよ」感は、いわゆる雑貨を指すのかもしれませんし、百貨店の展覧会やグッズの紹介もあって、すごく「時代性」を感じることができました。

ここらへん、私はこの頃に生まれたので肌感覚ではわからないのですが、下記の本を読んでいたので、勉強しておいてよかった感…。

また、1990年の東京国立博物館のミュージアムショップオープンをさきがけに、各地でリニューアルや新設館の契機にミュージアムショップを作るところが増え、2000年代以降にかなり増えていったとのこと。博物館の付帯施設的な存在から、博物館の教育施設として、役割が移り変わっていった面もあります。山下治子さんが雑誌『ミュゼ』を創刊されたのは1994年ですので、国内の博物館に「ミュージアムショップ」という概念を根付かせようと尽力されてきたのがよく分かります…。

今回の「ディスタンス」というテーマに絡めて言えば、今回の新型コロナウイルスの影響下で「博物館に行けない」人も多いです。その中でミュージアムショップやグッズというものが、博物館と来館者のディスタンスを縮める存在になっているのではないか、というお話しでまとめてくださいました。

博物館における「文化」と「経営」

ゲストの山下治子さんは、博物館経営論の分野で多く執筆活動をされてきたこともあり、「ミュージアムショップにおける経営とは?」という話題でチャットルームが盛り上がっていた印象です。

ミュージアムショップやグッズには、学芸との協力は不可欠である。でも継続的に博物館の姿勢を表現し続けるためには、「経営」の概念は非常に大事。ここで、私が1年目の学芸リカプロの成果発表会でお話しした、「ミュージアムショップやグッズは、当たり前ですが『文化』と『経営』の両輪が大事ですよね」「その両輪はどちらかが突出していてもダメで、バランスが取れているのが理想ですよね」「でも現在って『ミュージアム and ショップ』じゃなくて、『ミュージアム or ショップ』になってません??」って話と繋がると思うんですよね。

その両輪をどう回すかで皆模索していると思うのですが、やはり自分たちの館に合ったやり方というのがあるわけで、チャットルームでの話題はそこの模索だったな、という印象です。

サミット参加者の「多様性」

博物館経営論におけるミュージアムショップやグッズ、というのは、山下治子さんがここ30年でかなり切り開いてくださっております。そのことへの感謝が深すぎたわ…今回は経営論的なお話しが多かったのですが、先ほどの「両輪」を成熟させていく必要があるなと考えました。文化側の方や、教育論ベースの方のお話しももっと聞きたいですね。

あとはやはり、参加者の皆様のバックグラウンドが多様だったのも、もう感謝に尽きるというか…。なかなかね、業界内での経営的なお付き合いとかもあるので大っぴらに意見交換するのが難しい分野かもしれないですが、こうやってある程度匿名性を担保しつつ、分野を超えて、立場を超えて、多様な参加者が双方向にガンガン語り合える場所って大事だなと。そのためのサミットでありたいなと強く思いました。

新型コロナウイルスの影響下で

今回の反省点、わりと山下さんの話題提供における「過去から学ぶ」点と、チャットルームの「今を生きるミュージアムショップ」点、この2点にフォーカスされたような気がします。なのでもっと未来の話もしたかったですし、新型コロナウイルスの影響とかも聞きたかったのですが、これは次回以降に持ち越しですね。

今回はミュージアムショップ概論、ミュージアムショップ史を学べたのが大きかったですし、チャットルームでの皆さんのやり取りの活発さに、感謝感謝でございます。

山下さんのように、博物館におけるミュージアムショップの存在意義をずっと訴え続けてくださった方のおかげで、こうやって新型コロナウイルスの影響下にある現在も、私たちはグッズやショップを「博物館との懸け橋」として捉え続けることができるんだな…と思いました。

私が今の時代を振り返って、まとめて、ちゃんと捉え続けて、次の世代に託せるように形にし続けなければならないなと強く感じています。気合入った!ぞ!

次回以降のご案内

というわけでですね、あと2回、ミュージアムグッズサミットはございます!多様なゲストにご登場いただきますので、まだまだ皆でがっつりやりましょう!詳細はこちらです↓

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Vol.2詳細
ミュージアムグッズサミットVol.2
「ミュージアムショップ × 地域のディスタンス リスペクトってどんな形?」

・日時
2020年10月15日(木) 19:00〜21:00

・ゲスト
金入 健雄 氏(株式会社金入代表取締役社長、東北スタンダード株式会社代表)
せんだいメディアテーク、八戸ポータルミュージアム「はっち」にてカネイリミュージアムショップを運営。東北の工芸品や文房具、書籍などのセレクトを通じて東北の魅力を発信し続けている。

・ファシリテーター
大澤 夏美(ミュージアムグッズ愛好家、学芸リカプロ受講生)
博物館経営論の見地からおすすめできるミュージアムグッズを紹介。ミュージアムグッズを通じて博物館の魅力を広める活動に邁進している。

・申し込みフォーム


Vol.3詳細
ミュージアムグッズサミットVol.3
「ミュージアムショップ × 来館者のディスタンス コロナ禍で見えてきた?」

・日時
2020年11月6日(金) 19:00〜21:00

・ゲスト
川上 和歌子 氏(認定特定非営利活動法人 大阪自然史センター 理事・事務局長)
団体のマネジメントから予算管理までの事務局業務を一手に担う。現在は、社会と自然と博物館をつなぐファンドレイジング戦略や次世代を担う後進の育成を推進。

佐藤 いず帆(小樽芸術村 ミュージアムグッズ担当、学芸リカプロ受講生)
主な仕事はミュージアムグッズ販売における数値管理、商品の管理で、企画展に合わせた関連グッズ導入の企画も行う。目標は、小樽芸術村でこれまでに扱いのなかったミュージアムグッズを導入し、これまで以上にお客様に感動をお届けすること。

・ファシリテーター
大澤 夏美(ミュージアムグッズ愛好家、学芸リカプロ受講生)
博物館経営論の見地からおすすめできるミュージアムグッズを紹介。ミュージアムグッズを通じて博物館の魅力を広める活動に邁進している。

・申し込みフォーム


お問い合わせ先
ミュージアムグッズサミット運営事務局
Email: mgs.hokudai☆gmail.com(@→☆)

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それでは引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!!

ミュージアムグッズの薄い本「ミュージアムグッズパスポート」発売中です!


頂いたサポートは、ミュージアムグッズ研究に使わせていただきます。