見出し画像

雑文 #101

京都音博に出かけた9月17日以来初めてひとりでゆっくりしている。(at 東京)

ずっと何となく頭が痛い。ずっと何となく眠くて、ずっと何となく音楽を聴きたくない。

音楽を聴きたくないのは9月20日と21日に行われたくるりの“NOW AND 弦”の音が残っているのと、その音を忘れたくないのと、何だか疲れてしまっているのとが交錯しているんだと思う。


私が最初に買ったくるりのアルバムは『ワルツを踊れ』だった。それと『Tower of Music Lover』(1st. ベストアルバム)を一緒に買った。

私はその頃ひどく具合が悪くて、大好きな読書もできなくて音楽を聴こうと思って、そういえば前に友達が勧めていたなと思い出してずいぶん久しぶりにCDというものを買ってみたのだった。

それまでくるりの知識はまっさらだった。

私は日本の音楽をほとんど聴かない変な少女だった。

大人になってもそうだった。スピッツとか小田和正とか、少しは聴くようになったけど、依然流行りのPOPSのノリは苦手だったしロックには偏見があった。

「エレキギターはうるさい」って思っていたのである。

それを全部打ち破ったのが『ワルツを踊れ』でありくるりのベストアルバムだった。それはちっとも耳に悪く触らない、優しくてふくよかで繊細な音たちだった。

私はびっくりしてそれからくるりにハマった。

次に買ったのは『Philharmonic or die』。このアルバムを擦り切れるぐらい愛聴した。私はそれまでライブ会場にいないのにライブアルバムを聴くのは変だ、不自然だ、拍手の音とかうっとうしいと思っていたのだが、このアルバムがそれはそれはもう良かった。毎朝必ず聴いているうちにだんだん具合が良くなってきた気がする。

それから出ているくるりのアルバム全部を買い集めた。そしてDVDも集めた。『横濱ウィンナー』を観て私がそのライブ観逃したことを悔やんだ。でも私は2008年にくるりを知ったのだ。もう二度とあれは体験できないだろうと、ずっとあれを体験できたお客さんを羨ましく思っていた。

その、私がくるりを知る前年に行われた「ふれあいコンサート」のような、アルバム『Philharmonic or die』DISC1のようなライブが今回の“NOW AND 弦''だったと思う。

京都音博の空に放たれるはずだったその音は、大雨と落雷によって断たれてしまったが、その無念を晴らすかのように東京渋谷のオーチャードホールいっぱいに広がった。

落雷のあとにばらが咲いたわけだ。


プログラムが配られたが見ないようにして初日は臨んだ。

「Remember me」のインストから始まる。私はシングル盤のフィリップのアレンジしたバージョンが好きだ。森の中にいるような気分になる。美しくてすでに泣く。

「ジュビリー」はとびきり好きな曲。二日目のアンコールでもやってくれた。胸がぎゅっとなるあの入り。これは私が知ったくるりのエッセンスが一番詰まっている曲だと思っている。

「everybody feels the same」「chili pepper japones」はオーケストラ編成でやるとは意外すぎる曲。とくに「チリペッパー」には笑ってしまう。トランペットはやはりふぁんちゃんのが聴きたいなと思ったりした。「ロックンロール・ハネムーン」の最後もふぁんちゃんの炸裂する吹きが懐かしくて恋しい。

次、イントロで「ブルー・ラヴァー・ブルー」だと気づいたとき胸に喜びが広がった。聴けると思わなかった。私はこの頃なぜか青いものばかり好み、旅支度も青だらけになったけれどこれを予感してのことだったのか!(笑)。…というか私は根っからのブルー・ラヴァーなのだ。

「デルタ」での岸田くんの歌声はしっとりとしていてとても丁寧だった。歌がうまい、とはっきり思った。

「春風」にもその心は続いた。こんなにも好きな曲をこんなにも近くで、こんなにも素敵な編成で観られるなんて信じられなかった。思い出すだけでまだ泣けてくる。

「ブレーメン」は二日間で計4回聴けた。私がくるりを初めて生で観たときの最初の曲が「ブレーメン」だった。それ以来何十回も生で聴いたけれど、この二日間の(とくに二日目の)「ブレーメン」は完璧だと思った。音楽への愛を感じる。

「2034」のかっこよさ。このバンドは何だろうと思った。やはりロックが苦手だった私がハマったのだから、絶対ただのロックバンドではない。(ロックを軽視しているわけではなく、むしろいまでは大好きなんだけれど、ある種のロックはまだ私には耳が痛いのだ)

「ふたつの世界」。この曲はあまり評価されていないと岸田くんが言っていたけれど、私はすごく好きだ。もし高校生のときにこれを知っていたら、「私のテーマ曲だ」と言っていただろう。(本当はいまだってそうなんだけど)

「かんがえがあるカンガルー」。管楽器が入って聴けた。(サックスではなかったけれど)

「コンチネンタル」はテンションが上がる曲だ。ライブで聴くとものすごく楽しい。クリフのドラムも、全音が揃う感じも、鳥肌ものだ。

「アナーキー・イン・ザ・ムジーク」からの「WORLD'S END SUPERNOVA」は『Philharmonic or die』と同じ流れだ。一番楽しいところだ。私はこの曲の間(「WESN」のイントロのところ)で危うく気を失いそうだった。座ってるけど、踊る。大好きなミュージック。

「さよなら春の日」はこの前の「NOW AND THEN 3」でも聴いたがあれ以来考えている。私のさよなら春の日を。もうすぐそこだ。

そして「琥珀色の街、上海蟹の朝」。何度か生で観たので岸田くんのラップの衝撃には慣れてきたが、「ふたつの世界」でも感じることだけどどれだけ緻密に音が織り込まれていることか。

「Remember me」もそうだ。奥行きのある音楽。薄っぺらくない。それがくるり。重いんじゃなくて、深いのだ。

今回のライブで強く感じたのはそれだ。あとくるりの曲は間奏やアウトロがずば抜けて良い。そんなバンドあんまり知らない。岸田くんのヴォーカルを除いたすべての楽器が、言葉を終えて、歌詞で伝えられなかった部分を豊かに奏でる。「ジュビリー」だって「春風」だって「ブレーメン」だってアウトロが好きだ。もちろん前あってのアウトロだけど、そういう行間を読むような聴きかたが私はとても好きだ。「Remember me」や「上海蟹」は弦で聴けて何よりだった。最高に美しかった。

そして私は重くはなくて、軽やかで深みのあるファンになりたいと思った。
くるりの音のような、気持ちの良い奥行きのあるリスナーに。
これからも、ずっと。

#くるり #音楽 #日記 #雑文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?