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雑文 #176 モテない

ここ数年モテなくなった。

と言うと、まるで基本モテる人のようだが、そういうわけではなくて、あくまでも自分基準の中で、モテなくなったのである。

早朝、まだ寝ててもいい時間に、夢をみながら起きた。
微笑みながら起きた。
いい夢だったのだ。

夢の中で、中学のときの同級生が私に電話をかけてきて「明日、君のいる店に遊びに行くから」と言う。
私はうれしかったが、焦る。
ひとつには店が散らかりすぎているのと、もうひとつには、夕方別の人が遊びに来るからである。
中学の同級生とは、ほんのりと好きだった男子であり、夕方来る別の人はほんのりと私を好きだった(と思われる)うんと年上のおじさん。
夢の中で私はモテていた。

起きたとき、中学の頃のことを思い出す。彼は初恋だったのだろうか。ほんのりすぎてわからない。
でも、彼と中学の3年間クラスが一緒で仲良かったおかげもあり、私の中で唯一中学だけが学生生活で楽しい時間だった。

数年前、同窓会で彼と再会した。
他にも彼の弟分みたいにかわいがられていた男子もいて、ふたりともおじさんの営業マンになっていたが、私はふたりに挟まれて、理科の実験のときにふざけてたみたいに、ただただ楽しい時間を過ごした。
彼とはずっと隣でいた。真綿のような心地よい感覚。私たち3年間クラス替えがあってもずっと一緒だったし、くじ引きで席替えしてもやたら隣になったよね。
彼はイケてる男子で、さらにアイドルみたいにイケてる女の子のことを好きだとずっと公言していた。そしてそのかわいいアイドルは振り向いてくれなかった。
私はそんなところに割り込めるなんて思ってもみなくて、ただ楽しくはしゃいでた。
高校は別のところになったけど、離れるとき彼は私に突然電話をくれたと覚えている。
これからの私の人生を応援してくれるような内容。
20代の頃も向こうが同窓会で飲んでいたときに共通の友達から私の電話番号を聞いて、突然電話してきたと記憶している。

「momongaちゃんはマニアックだったんだよ」
隣にいた彼が言った。
言葉足らずだが、どうやら、「正統派じゃない、マニアックな魅力があった」というような意味らしい。
お互い酔っ払っていて、私は笑って流したが、優しくてスポーツができてイケメンでおもしろい彼はあの頃私が気になっていたのかもしれない。
一途に好きだった正統派のアイドルとともに、マニアックな裏のお気にりだったのかもしれない。

あまりにもモテないからそんな彼の夢をみたのかなあ。
あの同窓会のとき彼は新婚で子供が生まれたばかりで、元アイドル的女の子とはずっと親友だったらしくまるで長年連れ添った夫婦のようで、ほんのりと好きだった私もそんな彼を見ていてもちっとも傷つかずむしろ微笑ましいばかりだった。

中学生のときそんな感情を説明してもちっとも理解できなかったであろう。
いろいろと経験して初めて「いろいろアリ」になるのだ。
大人は複雑だ。
でも、シンプルなまま大人になっていたなら、私はいまこうしていなかっただろう。

やっぱり彼の言うようにマニアックなのだ。

#日記 #散文 #雑文 #モテない #マニアック

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