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リーダーのすゝめ

私はとある学生団体(TEDxUTokyo実行委員会)の中の、1つのチームのリーダーを任されていた。大学生になって初めて「人の上に立つポジション」、というほど上ではないが、チームに対して最終的な責任を引き受け、自分の指示でメンバーが動くようなポジションになった。

最初は仕事を割り振って進捗確認することだけで手一杯であったが、徐々に「リーダー」の役割と、その難しさがわかるようになってきた。

今回は、任せてもらったチームリーダーの経験を踏まえて、私が考えていたリーダーの役割と、それをうまく行うための心構えや行動指針のようなものを改めて言語化し記録しておこうと思う。

私の中の美学のようなものも含まれているため、恥ずかしながら少し思想が強めである。

プロジェクトの成功の要件

組織やチームで何かを行うということは、何かしらの目標があるはずである。多くの場合は、プロジェクトを成功させることだと思う。

それでは、何を持って「プロジェクトが成功した」と言えるのだろうか?
リーダーとなった私は、この問いに対する答えをずっと探していた。
プロジェクトをやり切った今、私の仮説は以下の通りである。

「プロジェクトが成功した」と言える要件は2つある。
①そのプロジェクトが意味のある変化や卓越した成果を生んでいること
②チームのメンバー全員がそのプロジェクトの過程と成果に満足していること

たとえ仲良しチームであっても、肝心のプロジェクトが上手くいっていなければ、そのチームは目標達成能力に欠けていることになる。結果の出せないチームはメンバーのモチベーションも持続しにくく、再びプロジェクトを立ち上げようという気にもなりにくい。

また、チームとしてプロジェクトの成果を上げることができたとしても、メンバーがそれまでの活動に満足していなければ、そのプロジェクトは真に成功したとは言えないだろう。終わり良ければすべて良し、というわけにもいかないのである。プロジェクトの最中に感じたもやもやした記憶は案外残り続ける。そのもやもやは、タスクの内容そのものである場合も、人間関係の場合もある。

このような2つの要件を達成することがリーダーの最大の役割であると思っている。

この2つの要件を達成するために、リーダーが心掛けると良いことを書いていく。

リーダーのすゝめ

「あの山に登るぞ!」

リーダーの第一の役割は、「メンバーに対して実現したい理想の未来を提示し、語り続ける」ことだと考えている。それはつまり、「あの山に登るぞ!」と高らかに宣言し、頂上を指差し続けることである。

リーダーは、そのプロジェクトの発起人であることが多い。そのプロジェクトにかける思いは誰よりも熱いであろう。その思いを、情熱的で、心の中のワクワクが引き立てられる目標を掲げることによって表現する。山の頂上から見える景色を想像させるのである。

また、頂上から見える景色を具体的に想像しておくことも重要である。このプロジェクトでどのような成果を上げたいのか、どのような変化を生み出したいのか、どのような世界を作りたいのか、に対する答えを、リーダーはチームの誰よりも解像度高く持っている必要がある。

そして、一度目標をメンバーに提示したならば、それを掲げ続ける。何度も口に出して、自分にもメンバーにも何度も聞かせる。ことあるごとに立ち返る。
「私はみんなと一緒にあの山に登って、みんなと一緒に頂上の景色が見たいんだ」と本気で伝え続ける。

私の場合は、「人生を変える圧倒的な参加者体験を提供する」と何度も伝えていた。

そうすると、いつしかその目標がチームの合言葉になり、共通の目標として機能し始める。全員が同じような方向を向き、チームに一体感が生まれ始める。


「オマエは何を託された?」

私は、「リーダーはプロジェクト達成のために、メンバー一人ひとりから人生を託してもらっている」と考えている。

『呪術廻戦』127話
いつ読んでも泣ける。

メンバーが託してくれた人生に対して責任を持つ。託された人生が、その人にとって本当に有意義になるように心血を注ぐ必要がある。

プロジェクトの成功の要件の2つ目、「チームのメンバー全員がそのプロジェクトの過程と成果に満足していること」は、この圧倒的な当事者意識の有無によって決まると考えている。

そのためにいつも心に留めておくべき問いは、
「この人は、このプロジェクトにどのような意義を見出しているか?」
「この人は、このプロジェクトのどこに充実感を覚えているか?」
「この人は、このプロジェクトでどのような課題や不満を抱えているか?」
「この人は、このプロジェクトを終えた時にどうなっていたいのか?」
この問いに対する答えを、継続的に探究する。

プロジェクトにおいてメンバーが関係する全てのことは、メンバー一人ひとりの人生に対して、有意義な体験や変化をもたらすために行うと心に刻む。
このような圧倒的当事者意識を常に持ち合わせている必要がある。

これらの問いに対する答えを聞いて返答する際は、リーダーの理想を押し付けてはいけない。もちろんプロジェクトの成功のためにはある程度リーダーの都合もあるだろう。

しかしそうした実務的な話の前に、リーダーが登りたい山と、メンバーが登りたい山がある程度一致しているか確認する必要がある。つまり、組織の目標と個人の目標をすり合わせることが肝要である。「この人は、このプロジェクトを終えた時にどうなっていたいのか?」がこれに該当する。これらは完全に一致しなくてもいいが、広い意味で方向性が同じであるかを何度も継続的に確認するのが良いだろう。そして、リーダーはその個人の目標を最大限尊重し、その達成に対しても責任を持つ。タスクの効率よりも、目の前のメンバーの人生への効果を重視する。

また、人生はそのプロジェクトだけでできている訳ではない。リーダーもメンバーも、当然プロジェクト以外にやっていることがあるはずだ。つまり「メンバーの人生を託してもらっている」とは、メンバーの他の活動にも気を配るということだ。

「この人は、このプロジェクト以外にどこに時間とエネルギーを注いでいるか?」
「この人は、普段どのような生活をしているのか?時間割やサークル、バイトはどのくらい入っているのか?」
「この人の脳内に占めるプロジェクトの割合はどのくらいか?他の活動の割合はどのくらいか?」

ここまで文字に起こすと少々不気味だが、メンバーがどこに時間とエネルギーを使っているのかを把握するのは重要である。話しかけるきっかけにもなるし、忙しさを加味したプロジェクトの進め方、タスクの配分を考えることができる。

これらの問いは、週次の1on1でガッツリ聞くのでもいいし、ミーティングの後の食事や帰りの電車の中でだらだら話すのでもいいだろう。
「最近何してんの〜?」
「授業どんな感じ〜?」
「他に入ってる〇〇の方はどんな感じなの〜?」
とよく聞いていた。

メンバーの人生に対して圧倒的な当事者意識を持つ。そのために、私はことあるごとに「オマエは何を託された?」と自分に問いかけていた。
そして、「メンバー一人ひとりの人生です」と呟いていた。

…いよいよ思想が強くなってきた。ちょっと怖いが、まだまだある。


「最高の景色を見に行こう」

自分の時間とエネルギーをたくさん注いだプロジェクトをやり切ったときに感じる達成感と幸福感、充実感は計り知れない。これはプロジェクトを成功させたことがある人は皆感じたことがあると思う。

最高の仲間とプロジェクトを成し遂げた瞬間は、強烈な思い出として記憶される。その後の人生で度々思い出す、揺るぎない成功体験となる。「あの時、人生が変わった!」と感じる。このような時間が経っても思い出される瞬間を、私は「最高の景色」と呼んでいる。

あの圧倒的な幸福感を、最高の仲間と一緒に感じたい。
10年、20年先も思い出す、最高の瞬間を共有したい。
だから何度もこの言葉を口にしていた。

「最高の仲間と、最高の景色を見に行こう」

プロジェクトを成功させ、最高の景色を見るために、自分の時間とエネルギーを注ぎ続ける。その姿をメンバーに見せ続け、次第にメンバーにもそうしてもらう。それがリーダーの行動指針になるような気がしている。


「これは お前が始めた物語だろ」

プロジェクトには困難がつきものである。挫けそうになるタイミングは計り知れない。毎日のようにやってくることもよくある。

リーダーも人間であるから、「しんどいな、これもう辞めたいな」と思うこともある。先ほど書いたように、リーダーにとっても人生はこのプロジェクトだけではない。人生には他にもやるべきこと、やりたいことがある。そちらに傾いてしまいそうな時もある。

それでも、リーダーだけは、プロジェクトを最後まで諦めてはいけない。
そう思って、自分に投げかけた言葉がある。

「これは お前が始めた物語だろ」

『進撃の巨人』121話

そうだ、このプロジェクトは私が始めたものだ。
私がこの理想の未来を実現したくて、始めたものだ。
メンバーに人生を託してもらってもいる。
それならば、絶対に成し遂げなければならない。諦めてはならない。

そうやって自分を奮い立たせていた。

※このように精神的に辛い時に、さらに自分を追い詰める言葉を自分に投げかけるのには注意が必要である。「ドMか!」とツッコまれることもしばしばある。

※諦めた方が賢明な時は、ズルズル引きずらずに潔く諦めるのもリーダーの役目であるだろう。


大局を捉える

リーダーはプロジェクトを進めるにあたって、先の未来を眺める必要がある。
大局を捉える、とでも言えるだろうか。

以下のような問いが、大局を眺める思考のトリガーとなる。
「このプロジェクトの先には何があるのか?」
「このタスクの先には何が待っているのか?」

もっと具体的には、
「このプロジェクトはいつどのタイミングで分岐点があるのか?」
「このタスクはどこでつまづきそうで、それに対してどのような解決策があるか?」
「このタスクの後には何をすればよいか?」

これらの問いに対する答えを探して、見つけ続けることが大切である。
防ぎきれないトラブルはどうしてもあるが、ある程度予見可能になるだろう。

また、メンバーがタスクを終えた際に次にやることを提示してあげるためにも、プロジェクトの全体像を把握している必要がある。すぐに次の行動を提示しないと、メンバーが手持ち無沙汰になってしまう。

総じて言えることは、「勝ち筋を見つける」のが大事だ、ということだろうか。
「これをこの順番でこうすれば全体がうまく行くだろう」と言う全体像を掴むことである。

勝ち筋を見つけるためには、ある程度そのプロジェクトの領域に関する知識や経験が必要なのは言うまでもない。未経験の領域で圧倒的な成果を出すのは難しい。だが、どのようなプロジェクトであっても全体像を掴むコツは共通している気もする。そのようなコツは様々あると思うが、自分が特に意識しているのは以下の2つである。

  • 理想から逆算する

    • プロジェクトが成功したと言える理想状態から、1ステップずつ状態を逆算していく。「これを達成するためにはこの状態になっている必要があるよね」と言う作業を、現状に戻ってくるまで繰り返す。そうしたら、簡易的なフローチャートが出来上がり、ある程度タスクの流れや必要な情報が見えてくる。ステップがわからなかったら、わかる人を必死に探して聞けば良い。

  • ステークホルダーを整理する

    • プロジェクトには様々なステークホルダーが存在する。プロジェクトに関係する人をもれなく洗い出し、その人たちがどのような関わり方をするかを考える。関わり方を自分たちでコントロールできるならば、理想の関わりかたを考えて提示する。そして、その人たちがフローチャートのどこに登場するかを整理して書き込む。

    • ほとんどの場合ステークホルダーはいがみ合う敵ではなく、一緒にプロジェクトを達成する仲間である。その人たちも気持ちの良い関わりかたを心がける必要がある。やりがい搾取はダメ、ゼッタイ。


決断を下す

プロジェクトを進める中で、リーダーを含めてチームの誰も自信を持って意思決定することができないタイミングがある。意思決定のための情報が揃っておらず、選択肢が出揃っているのかもわからず、選ぶ基準もわからず、選択した先の未来がどうなるかもわからない。

『進撃の巨人』25話

それでも仮説と勇気を持って何かしらの選択肢を選ぶのがリーダーの役割である。

こうした決断はなるべく早く下す必要がある。チームが路頭に迷ってしまうからである。その迷っている時間が実は無駄であったことも多いし、メンバーが不安に感じる時間も長くなってしまう。

「これはいつまで経っても情報が揃わないだろう、決断のタイミングだ」と思ったら、その時点で考えられる最良の仮説を持って、決断を下す。

その決断がどうであったかなんて未来にならないとわからないので、突き進むしかないのである。その決断に対して自信を持って突き進む。正しくなかったら、また軌道修正する。


見せ方にこだわる

リーダーはチームを率いてメンバーの前に立つのであるから、ある程度身の振り方を考える必要がある。

みんなの前では自信満々な姿を見せる。
「あの山の頂上の景色を、みんなと一緒に見たいんだ!」と惜しげもなく伝える。
「全部、うまくいく!」とメンバーを鼓舞し続ける。
「ぜっっっったいに大丈夫だ!」とピンチの時も希望を持って前を向き続ける。

『キングダム』28巻
この自信満々の顔を見習いたい。

決してマイナスな発言はみんなの前ではしない。やはり不安になることも、イライラすることも多くある。しかし、それをメンバーに見せてしまえば、多少の不安や不信感が生まれるのは避けられない。メンバーに不安の種を植え付けてしまうと、ゆくゆくはプロジェクトを進めるにあたって大きな障害になりうる。リーダーが感じている不安は、気をつけていないと案外メンバーに伝わってしまうものである。

リーダーも人間であるから、そうした不安や不満は別のところで解消しよう。溜めておくといつか爆発するだろう。他のチームのリーダーや、上司に対して話せばいい。そうしてスッキリしたら、またメンバーに対して理想を語り続ける。

一方、メンバー全員の前ではなく、一人ひとりと話している時には、必ずしも自信満々でなくてもいいと思う。自分の弱みを少し見せてもいいだろう。その方がリーダー自身も気が楽だし、何よりメンバーの心理的な障壁を下げることができると思う。私自身、プロジェクトに完璧を求める節があるので、こうした弱みを見せた際に「弱音とか吐くんだね。今みたいにギャップがある方が、人間味があっていいよね。リーダーである以前に友達だし」と言われたことがある。それからコミュニケーションが少し円滑になったような気がする。

また、一人ひとりと話している際は、その人の話に傾聴する。自分がみんなの前でたくさん話している代わりに、たくさん聞くのである。その人に興味を持って、どういう人なのかを丁寧に観察する。そうして、その人にとってのプロジェクトの意味を考える。

このように、リーダーはみんなの前と個人の前で見せ方を使い分けることが重要であると思う。特にみんなの前でマイナスのエネルギーを発しないことは大切である。

終わりに

今回は、私自身がリーダーを務めていた時に考えていたことを言語化した。自分で書いていても、思想が強いなと感じる部分、少し違うだろうと思う部分がある。特に思うのは、今回は心理的な側面ばかりに注目したが、やはりリーダーにはプロジェクトの領域に関する実力と経験が必要だろう、ということだ。とはいえ、リーダーをやり切った経験を記録しておくいい機会になった。

リーダーをやる機会は偶然やってくるというよりは、自分から手を挙げることによって得られると思う。やはりリーダーは大変だが、プロジェクトをやり切った時の圧倒的な幸福感は何物にも代え難い。これからも自分から積極的に手を挙げ、リーダーとなる機会を増やしていきたい。

読んでいただきありがとうございました。
漫画の言葉を自分の人生に落とし込むのが好きでハマっています。

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