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PERFECT DAYS

※軽くネタバレあり。内容はあくまで私見です。金銭的コストに差がある世界を貧富と表現していますが、どちらかに優劣があるという意図もありません。

主人公の平山は、人に不快感を与えないようコミュニケーションが取れるのに、日常生活ではあまり喋らない。トイレ清掃業の部下や、駅中の飲み屋の店主や客、古本屋の店主。逆に、彼の姪や公園での迷子、艶と品のあるスナックのママ、その元旦那とは、喋る。

彼が言葉でコミュニケーションをとるのは、言葉が通じる、と彼が認識している人。つまり、彼の世界の人。
彼の生まれはおそらく、裕福で文化的に恵まれている世界。ただ、父親への反発心もあり、元来の世界と決別をした。お金や職業的ステータスが全てではない、と飛び込みたどり着いた貧しい世界では、言葉を発さない。言葉を通じ思考を表現しても、うまく通じなかった過去があるのかもしれない。

お金がないと恋もできない社会なんておかしい、と、トイレ清掃業の部下が叫ぶ。
そちら側の世界に平山も身を浸したはずだった。だが、裕福な世界の精神が、貧しい世界を見ているだけで、世界はやはり、一つにはならないのだ。

ラストシーン、ニーナ・シモンが歌う。 
IIt’s a new dawn
It’s a new day
It’s a new life for me
And I’m feelin’ good

平山は涙を流す。

捨ててきたものがあり、何かを変えられると思った自分がいた。でも、世界は、一つじゃなかった。
勤勉に仕事をし、日々良きことを見出し、微笑み、自分が信じ選んだものに囲まれ、孤独も包み込み生きていく。なんて完璧な日々。

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