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37年間で一番おいしい寿司

昨日お誕生日を迎えました。高校卒業してすぐに上京して、4月1日の大学入学式前には一人暮らしを始めていたので、18歳の誕生日は部屋で一人でケーキを食べた記憶があります。あれから20年。気が付けば地元の愛知で暮らしていた期間より、東京にいる期間のほうが長くなりました。意地で使っている名古屋弁は徐々にイントネーションがずれてエセ名古屋弁のようになり、あんなにまずかった東京の水道水も平気で飲めるようになっています。

すっかり東京での一人暮らしになじんだ私は、だいたいのことが一人でできるようになっていました。一人でお酒も飲むし、牛丼屋にも入るし、ラーメンにも並ぶし。ディズニーも一人で行きました。
ただ、そういえば寿司は一人で食べたことがなかった。そもそも寿司を食べに行く機会があまり多くなく、先輩や上司にご飯に連れていってもらうときは肉率が高め。焼肉だったりすき焼きだったり、お肉はいろんなおいしいお店に連れていってもらったので、行きたいお店は頭に思い浮かぶけど、寿司はどこっていうと思いつかない。
なので、やったことがないことをやってみたくて、今回の誕生日は一人で寿司に行くことに決めました。

いざ寿司にしようと思っても、お店がわからない。一応参考に、有名キャバ嬢さんが同伴で使う店などを調べてみたものの、さすがにちょっと価格帯が…。リサーチの結果、まずは今回の予算を2万円に設定。次に立地を見て帰りやすい池袋で食べログ検索、最終的に口コミを見て、とあるお寿司屋さんに予約を入れたのが1週間前の出来事。コースは上と並とで迷い、初めて行くお店だし、初めての寿司のコースなので並を選択。そして当日を迎えたのでした。

席に通されると、一人分のセットが用意されていた。

ここで予想外だったのが、てっきり「カウンターで一人寿司」をイメージしていたのが、個室だったということw
入口でさすがにちょっと緊張していたのですが、一人空間、うん、なんかいつも通り。軽い肩透かしでした。(よく見るとこのお店は個室が多くてデートとかにも使いやすそうだった…寿司屋ってこんな感じなのか。)
着席するなり「〇〇〇やアレルギーはありますか?」と聞かれたのですが、前半が何を言っているかわからない。でもアレルギーは聞き取れたので、とりあえず苦手な食材を伝えてみた。あとあと聞いてみると、どうも「お苦手」と言っていたみたい。へえ、苦手に「お」を付ける文化があるんだ…。

ビールは安定の瓶。

この日頼んでいたのは並のコース12,800円。私はお酒を飲むので、この日は瓶ビールを頼んでみました。最近生ビールが美味しくないお店に遭遇することが多く、瓶ビールのほうが安定して美味しいということに気づいてからはすっかり瓶派。特に粋を気取っているとかおじさんぶっているわけでもないです。もうこれは味です。ビールを愛するが故。

何の注文をせずとも、さっそく前菜と大量のガリが机に置かれます。コースって初めて頼むので、何も言ってないのに出てきてびっくり。前菜はきんぴらや煮物的なものが7品ほど。
これは私の家庭の味や地元の味の傾向もあるのかもしれないけれど、正直いわゆる和食って苦手。東京の味なのか日本の伝統の味なのかわからないけど、出汁が効いてて素材の味を楽しむみたいなものはあまり好んで食べません。ビールにも合わないし。ところが、苦手なウドのきんぴらを口に含んで開眼。おいしいぞこれは…味が薄すぎることも濃すぎることもなく、それでいてビールとの相性も悪くない。苦手な野菜もペロリ。

手前右からアオリイカ、中トロ、一番左はわからない、奥右はしめさば、左はわからない…。高級な寿司って、味ついてるから醤油つけなくていいんですね。知らなかった。

続いて出てきたのが金色のお皿に乗った握り5貫。センターにいるのはいきなり中トロ。脂の甘みが美味しい…どのネタもほどよくワサビが効いていて口いっぱいに深みのある味が広がる。一人でご飯を食べるときにスマホをいじる人は多いと思うけど、一瞬でスマホのことを忘れるほど寿司のうまさで頭がいっぱいになる。
ただ、ひとつ不安だったのが、この時点でまだ10分しか経っていないということ。それでもうこのクラスのネタが出てきちゃうの? このコース15分くらいで終わるのでは…?

奥はイクラとカニ、下にご飯が詰まってます。手前は…美味しかったです。名前は忘れました。

握りを食べていると、タイの酒蒸しが。寿司のコースは握りしか出ないのかと思ったら、こういう逸品料理が間に挟まれるんですね。そのあとも焼き魚、アオリイカの酢の物などが続きました。
握りはこのあとに2皿計5貫が出てきました。穴子やマグロ、あぶった…あれは何という魚かもわからないけど塩味の寿司も美味しかったです。

椀は〆なの?

最後に味噌汁、デザートに抹茶のムース。どれも美味しかった。そして最後に、これが「あがり」ってやつですか? めちゃくちゃ濃いお茶が出てきて終了。
コースと、瓶ビール2本で15,000円少々のお会計となりました。(ちなみに、時間は90分ほどでした。)

店を出るといつもの池袋の街並み。でも美味しいものを食べたあとだから、普段よりもキラキラと輝いて見えます。
今まで先輩方に散々美味しいご飯を食べさせてもらってきました。時には肉の塊にトリュフをぶっかけてみたり、また別の時にはカニをあらゆる調理法でいただいてみたり、生肉にキャビアかけ放題してみたり。お会計が一人10万円超えたときもあったと思います。
でも、これまで食べたどんな高級料理より、自分が選んだ店で、自分が働いたお金で、自分のために食べた寿司が、37年間で一番おいしかったです。

私にとって37歳という年は本当に変化が大きい一年で、転職したもののなかなか新しい職場に慣れるのが難しく、かなり苦戦していました。でもなぜかわからないけど、一年間いろんなことを諦めずにできました。新しい業務を担当させてもらったり、新しくペアダンスのレッスンに通い始めたり、ダンスのショーに出たり…。私にもまだこんなに頑張ることができるんだなと自分にびっくりしています。
私は結構気分にムラがあったり、空気を読むのが苦手だし突っ走ってしまうところがあるし、得意不得意がハッキリしていてかなりいびつな人間で、生きづらいと感じることもたくさんあるのですが、私に振り回されたり迷惑をかけられたりしてもずっと助けてくれる周りの人たちには本当に感謝しています。

一人で寿司を食べるっていうのは、なんか自立の現れっぽくて自分っぽくないなと思ってたし、実際に食べてるときも「私って自立している!」「自分で稼げている!」という気持ちはなかったです。
この寿司だって年に一度の贅沢だし、一般的な生活はできてるけど稼げているほどの収入があるわけではなく。精神的にも誰かに頼る必要がないほど自立しているかっていうと、助けてくれるなら全然人を頼っちゃうし。むしろ、人に助けられるということに素直に感謝できるようになって、助けを受け入れられるようになった。
そう考えると、周りの人の助けがあってようやく立っていられる自分を受け入れることが、もしかしたら自立ということなのかもしれないですね。今までイメージにあった自立の定義とは少し違うけど、なんかこっちのほうがカッコいい気がして、今の自分は好きです。

一人で寿司、予想以上に楽しかったし気持ちよかったし美味かった。来年は並じゃなくて上のコースを頼めるように、仕事も生活も頑張りたいと思います。
38歳の私もよろしくお願いします。


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