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おしえて!!モーション! Vol.1その② 部屋をかたずけられない「田村朋世」さんのモヤモヤ

開催日:2018年2月23日(金)
開催場所:日ノ出町試聴室その3
ゲスト:おおさわあやさん、田村朋世さん

聞き手・テキスト=植田桃子

前回のおおさわあやさんに引き続き、今回は田村さんのモヤモヤエピソードについてうかがいます。※お二人のプロフィールは前回をご覧ください。

片づけるのがとっても苦手な朋世さん

桃子:じゃあ次は、朋世さんのモヤモヤエピ−ソードを聞かせてください。
 
朋世:じつは最近、同棲するために引っ越したんです。山梨からうちの親も出てきて、いっしょに片付けてもらったんですけど、私の部屋が汚すぎてラチがあかない。もうお金を払ってゴミを全部持って行ってくれる業者を呼ぼうって話になって。
 
桃子:そんなにゴミがあったんですか?
 
朋世:もうゴミ。ゴミしかなかったですね。うちの母親は、よしこって名前なんですけど、そのよしこが、業者さんを前にずっと「恥ずかしい、恥ずかしい」っていっていましたね。「あんた、恥ずかしくないの?」って。私は全然恥ずかしくなかったんですけど。
 
桃子:まあでもその業者さんにしたら、ゴミはあって当然ですけどね。
 
朋世:ですよね。こっちはお金を払っているのに、うちのよしこは「本当にすいません。もう、本当にすいません」ってずっと謝っていて。自分でゴミも運んじゃうし、すごく業者さんが困っていました。最終的には「あなたたちが使って」といって、おつりも受け取らないんですよ。でも、これは悩みなんですかね。悩みがどうかもわかんないんですけど。

部屋は住む人が描く「作品」のようなもの 

桃子:部屋が汚くったって、別にいいんじゃないですか?
 
朋世:でも、そういう人ってあまり好かれませんよね。
 
おおさわ:逆に「放っておけない」、「どうにかしてあげたい」って思われるんじゃないですか?
 
朋世:でも、それってたぶん、付き合っているうちに「いつか変わるだろう」って期待が込められていると思うんです。でも私は「その期待には添えないよ」って思いのほうが強くて。
 
桃子:部屋がやばいくらい散らかってる人って結構いますよね。
 
朋世:私もそういう人のことを「やばいなあ」って思っていたんですけど、今回の引っ越しで、はたから見たら自分もそうなんだって気付きました。
 
桃子:もしかしたら「部屋がぐちゃぐちゃだからやばい」んじゃなくて「やばいからぐちゃぐちゃ」になるのかもしれないですね。部屋はそこに住む人間を表す「作品」みたいなものですから。
 
朋世:なるほど(笑)。いま桃子さん、すごくいいこといいましたね(笑)
 
一同:<笑>
 
桃子:いいことかどうかわからないけど、散らかった部屋自体は、別に問題じゃないと思うんですよ。それは、絵を描いてみたらこうなった、みたいなことと一緒で。
 
朋世:じゃあ私の描いた絵は、やばいっていうか汚い絵なんだ。それはまずい。
 
桃子:まずくはないんじゃないですか。それが作品ですから。
 
朋世:でも人に好かれないのは嫌ですよ。
 
桃子:じゃあ、作風を変えるしかないですね。でも作風ってなかなか変わらないじゃないですか? その人の好きな感じとか、クセとか、頭の中の状態が作品になるので。だから、作風を変えるために、インドとか行くとか、なにか修業したりとかして、もう脳のOSを入れ替えないと。
 
朋世:確かにそうかも。
 
おおさわ:前の部屋には主になにがあったんですか?
 
朋世:ガラクタだらけです。ヘンな置物とか。あとブラジャーなんかを壁に飾ったりしていましたね。飾ってあっておかしくないステキなブラジャーです。真っ赤なタオル地にピンクのポンポンがいっぱいついているような。
 
おおさわ:草間彌生みたいな感じ?
 
朋世:ですね。
 
桃子:それなら芸術的。じゃあやっぱり部屋は作品なんですよ。

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おもしろかわいいポーズの朋世さん

同棲はカルチャーショックの連続

 朋世:最近、同棲をはじめたんですけど、この間、彼が米びつを買ってきたんですよ。
 
桃子:いいじゃないですか。
 
朋世:え? だって、米なんて別に「びつ」に入れなくてよくないですか? 袋に入ったままでいいでしょう。でも虫が湧いたトラウマがあるらしくて、唐辛子の形の「米びつくん」を入れたりするんです。いま、そういうところにちょっと「え? わかんない」みたいになって。
 
桃子:カルチャーショックですね。
 
朋世:ええ、カルチャーショックです。上手くやっていけるか心配です。
 
桃子:同棲っていう話が出ましたけど、同棲ってひとつの家に2つのOSが同時に存在することだと思うんですけど、それってどうですか。
 
朋世:両方の世界観が混ざりあって、上手くいくならいいんですけど、私は割と根っからごちゃごちゃしたところが好きなので、相手はそれがちょっと好きじゃないっぽいですね。
 
桃子:ケンカしたりするんですか?
 
朋世:ケンカになればいいですけど、向こうもこっちを怒らせたくないし、こっちも向こうを怒らせたくないんで、ちょっとよそよそしいというか。……よくないですよね。
 
桃子:遠慮し合っている?
 
朋世:私が服を脱ぎっぱなしにするのとかも、ほんとに嫌だと思うんですよ。だから私は自分しかいないときは脱ぎ散らかすけれど、外出するときは全部押し入れに隠すようになりましした。
 
桃子:じゃあ彼が家に帰ってきたら、表面的にはキレイなんですね。
 
朋世:そうですね。でも、私の「キレイ」と彼の「キレイ」は違うので、小言をいわれることはあります。いまはそんなにいわなくなりましたけど。
 
桃子:押し入れにいれたけど、ちょっとはみ出してるとか。
 
朋世:汚いものがオーラとして漂ってるみたいな感じですかね(笑)


肉や野菜は同棲感を出すための「オブジェ」

 朋世:じつは今日はじめてふたりでスーパーで買い物したんですよ。同棲中のみなさんって、1週間の献立のやり繰りってどうしてるんですかね? 
 
桃子:急に生々しい話ですね(笑)
 
朋世:今日は、1週間分の食材を買いました。でも、よくよく考えたら「食べきれるか?」ってなっちゃって。肉とか野菜とか腐るじゃないですか。どうやってやりくりすればいいか全然わかんないんです。
 
桃子:腐る前に食べましょうよ(笑)
 
朋世:でもぜんぜん生活が合わないんです。一緒にごはん食べるわけでもないですしね。米は炊くとして、おかずはどうすればいいのか。もうちんぷんかんぷんです。
 
桃子:作るとしたら自分ひとり用のおかずを?
 
朋世:でも、自分ひとりのためだと作りたくないんですよ。だから私は自分で食費を払っているにも関わらず、自分で食べないんじゃないかっていう不安もよぎります。
 
桃子:え? じゃあその食材はなんのために買っているの?
 
朋世:それが分かんないんですよ。
 
桃子:……オブジェじゃないですかオブジェ。「同棲感」を出すための。
 
朋世:あー。

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引き続きおもしろかわいいポーズの朋世さん

同棲の理想は「ごはん作ったよ」みたいな感じ

桃子:いまの話を聞いていると、一応は片付けてみたりとか、食べもしない野菜を買ってみたりとか、ちょっとかわいいですよね。カッコつけているというか(笑)
 
朋世:カッコつけてるのは彼氏もでしょうね。さっきも彼が全部買うものを決めていましたし。肉、野菜はいいとして、米、スパゲティー、ラーメンを選んで、私はお菓子を選んだんですけど、それなのにまだパンも買おうとするんですよ。「それはいらないんじゃない?」っていったんだけど……。炭水化物ばっかり買ってどうするつもりなんですかね。
 
桃子:ふたりとも「同棲ってこういうもの」っていうぽわんとしたイメージがあって、それに合わせてるんでしょうね。朋世さんには、同棲の理想ってあるんですか?
 
朋世:理想は「ごはん作ったよ」、「ごはんあるよ」みたいなメッセージをLINEで送るみたいな感じですかね。「今日ごはん食べた?」みたいな。ごはんのことしか私、考えてないみたい。
 
一同:<笑>
 
桃子:ほかに悩みはあるんですか?
 
朋世:お金ですね。同棲をするにもお金がかかりましたから。私はそもそも借金があったのに、そこにさらに同棲のための引っ越し費用で、借金が増えてしまいました。それがちょっと痛いです。
 
桃子:でも夢の同棲生活が手に入ったんですよね。
 
朋世:どうなんですかね。同棲がしたかったんだか、したくなかったんだか。いろんな人に「同棲はやめたほうがいいよ」っていわれたんですけど。
 
桃子:なんかいま、腐っていくキャベツを想像しちゃいました。
 
朋世:私だってごはん作りたいんですよ。実際作ってもいますし。でもさっきスーパーで「朋世ってごはん作れんの?」っていわれて、「え? 私、普通に作ってあげたことあるんだけど」って思って。
 
桃子:「食べたことあるのに、なにいってんの?」って感じですか?
 
朋世:そうです。たぶん味の好みが合わないんですよ。さっきも、袋のラーメンを選ぶとき、私は塩味がよかったんですけど、向こうは醤油味がいいっていってましたし。いつも甘えているから、そういうところでツケを払うことになるんです。いつもすいませんっていう感じで「醤油でいいです」っていってしまいました。
 
桃子:なるほど。じつは我慢してたんですね。
 
おおさわ:我慢していると、いつか爆発しますよ。
 
朋世 しますかね。
 
桃子:します。
 
おおさわ:間違いなく。
 
朋世:爆発したら終わりますね……。
 
桃子:でも朋世ちゃんの話はうらやましいです。いま、理想の世界を作っている最中っていう感じだから。
 
朋世:理想の世界か。でもそうだとしたら家選びから間違っていますね。プラス1万円出せばフローリングの部屋だったんですけど、でも畳の部屋になっちゃった。そこからちょっとテンションは低めです。
 
おおさわ:フローリングか畳かでケンカしたんですか?
 
朋世:ケンカはしていません。仲良くしています。でもなんか腹の探り合いみたいな状態ですね。
 
おおさわ:張りつめていますね。緊張の糸が見える。
 
朋世:……いやだなあ、同棲なんて。
 
桃子:そんなこといわないでくださいよ! はじめたばかりじゃないですか!


怪しいガラクタを売れば借金を返せた?

おおさわ:私は音楽をやっているので、楽器をときどき買うんですよ。で、ヤフオクを見てると、よく「リコーダー(女子中学生使用)1万円」みたいなのが出てくるんです。
 
桃子:ちょっと怪しいヤツだ。
 
おおさわ:もう怪しいなんてもんじゃない、「歯形あり」みたいな説明があったりするんです。女子中学生の写真つきで売っているのもあります。そこで思ったのは、このリコーダーは「本当に女子中学生が使ったものなのか?」ってことなんですけど、どう思います?
 
桃子:たぶん使ってないですよね。適当に歯形つけて売ってますよ(笑)
 
一同:<笑>
 
おおさわ:ですよね。であればそれで稼げそうじゃないですか?
 
朋世:あ、そういうことか!この話がどこにつながるかと思っていました(笑)。それは稼げるかもしれないですね!
 
桃子:前の部屋にあったガラクタ、捨てないほうがよかったのでは?
 
朋世:あ、捨てちゃった! 売ればよかった!
 
桃子:壁に飾っているブラジャーも、ヘンな置物だって、だれかにとってはほしいものだったかもしれません。
 
おおさわ:きっとそれで借金返せましたよ。
 
朋世:いけましたかね。いけるならトラック1台分売りたかったです。
 
桃子:今日はいろんな話がでましたけど、第1回目はこんな感じで。今日のお話で曲のイメージが浮かんだ気がします。
 
朋世:たのしみです!
 
おおさわ:ほかにもあったんですけど(紙に書いたネタ集をみせてくれる)
 
桃子:いっぱいあるじゃないですか! おおさわさんはシリーズでやったほうがいい気がします。
 
朋世:ぜんぶちゃんとオチがついてるし。
 
桃子:第2回もぜひ来てください。「おしえて‼モーション!」トークタイムをこれで修了です。ありがとうございました!
 
会場:<拍手>
 
(おわり)
 
 
―イベント後記―

すてきなゲストさんたちに助けられました。

ふと思いついて、日ノ出町の試聴室その3にて、「おしえて‼モーション!」というライブ&トークイベントをはじめることにしました。第1回目は、どうなるか全く予想がつかなかったのですが、あんまり最初から頑張りすぎると、今後続かないだろうということだけは分かっていました。そこで、気張らずにゆるく、だけどぬかりなく、上手に盛り上げてくれそうな、おおさわおおさわさんにゲストになってもらい、話をしてもらうことにしました。糸の切れた凧みたいに、どこに行くのかわからない話。ちゃんとオチを用意しているのだけど、みんなに気づかせない。そういう技を持った人でした。
 
田村朋世さんは、弾けるような元気さを運んでくれました。まぶしいくらい正直で、若いエネルギーにあふれていて。だけどもこちらがどきどきするくらい繊細に揺れている感情が伝わってくるようでした。ときどき指摘してくるコメントもとても鋭く、話の波に乗るのもすごく上手なひとです。
 
第1回目ということもあって、私は聞き手としてまったく上手くできていません(笑)。今後はそんな私の成長も含めて、次回からもどうかお見守りください。

そして、、、、曲ができました!

おおさわあやさんと田村朋世さんのお話は4月20日に行われた「おしえて‼モーション!Vol.2」にて、それぞれ「三角と関係」「野菜をさわる」という曲として発表いたしました。デモ音源と歌詞はこちら。

三角と関係 

1 . 夜は朝を誘惑し続けて  
朝はばかなふりして騙されて
昼はただ見てるだけね

映画のおとが 
外まで漏れ出してる 
午後の通り  
スクリーン スクリーム
あなたを許せないわ

わたしのみてないところで
なーにをやってるのか
朝が夜はすべてのこと昼に任せきりで

三角と関係が
ぐるぐるまわってる
三角と関係が
わたしを苛立たせる

2. 昼は夜に告げ口して 
夜はすべて忘れてしまえと 
朝にすぐに優しいキスして

受付の女の子のしわざか 
ソファーに散らばってる これなに
やさしすぎる気持ちなんて
ほかにやることあるでしょう

おまえはいったい今まで
なーにをやって来たのか
朝も夜もひみつのこと昼に隠してるのか

三角と関係が
ぐるぐるまわってる
三角と関係が
わたしを苛立たせる

3. 夜は朝をそそのかして
昼が夜を朝になるまで
朝は昼を責めてるだけね

几帳面でいるつもりで
なーにかしてるつもりか?
真面目とはそれ言わないわ ごみになるだけで

三角と関係が
ぐるぐるまわってる
三角と関係が
わたしを苛立たせる

三角と関係が
ぐるぐるまわってる
三角と関係が
わたしを苛立たせる

昼が夜を朝になるまで
朝が夜に昼になるまで
夜は朝に愛されてる

野菜をさわる

1. 夕暮れのテーブルが
見つめてるふたりの小さな部屋
はだかのまま4時になったら
迎えに行くよ すいかのスカートで
今日も駅前で飲み明かそうよ

帰りには「神さまのスーパーマーケット」に寄っていこう 
あなたごと抱えて帰ろう
もう帰ろう

いつかふつうの暮らしが待ってるって 
いつかふつうの大人になってるって

だけど今は
洗いたての髪
汚したての身体を抱いて 
種を割って
水を浴びたまま野菜をさわるのと
同じ温度で
良いので

2. 白い皿が白すぎるから
料理でもつくろうと買った野菜を
また腐らせてしまった
まだ足りないのに がらくたばかりで
おかあさんは
恥ずかしいというけれど

いつかしずかに歌を待ってるって
いつか宇宙のきもち育ってるって

抱き合ってる
ぼくら柔らかすぎて
掴んでられないさ

スープみたいな茹でたての
きみのこと野菜をさわるのと
同じ温度で
良いので

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