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ヤングケアラー記事の、執筆後記です。

内閣府「こどもの未来応援国民運動」PRの一環で、ヤングケアラーについての記事を書かせて頂きました。

最近、ヤングケアラーという言葉も広まってきており、各自治体の中でも地域課題として捉えているところが増えています。
私は昨年から、中野区の地域包括ケア推進会議の委員になっていますが、こちらの会議でもヤングケアラー支援事業への取り組みを進めるという話が出ています。

ただ、ひと言でヤングケアラーと言っても、ケースは本当に幅広く、根本的にケアラーにならなくてもいい方法を見つけるのはかなり難しいのではないかとも感じています。今できることで、すぐにやらなければいけないことは、ヤングケアラーとなっている子どもたちに、学ぶ権利や遊ぶ権利を確保すること、「子どもが子どもらしくいられる時間」を確保することだと思います。

記事中でも取りあげましたが、ヤングケアラーとは、このような状況下にある子ども(若者)のことを言います。

●障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
●家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
●障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている
●目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
●日本語が第一言語ではない家族や障がいのために通訳をしている
●家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
●アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
●がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
●障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
●障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている

私が無料塾をやっていて出会ったことがあるのは、「障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている」&「障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている」&「障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている」子、「家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている」子、「アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している」子です。
一人の子が上記の複数の項目にまたがっているケースもあります。
最も多いのは、「家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている」子で、このケースは毎年のように見受けられます。

こうした子たちの話を聞いていると、家族でクリスマスをお祝いしたことがない(クリスマスプレゼントももらったことがない)、まだ小学生で料理を誰かに教えてもらう前から自分で何とかしなければならなかった、下のきょうだいの夜泣きをあやすために学校の授業では寝てしまう、下のきょうだいたちのお世話があるのでお昼の時間帯の夏期講習や冬期講習には来られない、下のきょうだいたちのお世話のために受験前でも勉強する時間がとれない、受験や進学の費用をアルコール・ギャンブル依存の家族に使い込まれてしまった、といったことが次々と出てきます。
子どもたちと関わっている間、リアルタイムでさまざまな出来事が起こってくるのですが、お金なら貸すなどができるとしても、家庭に入り込んで代わりに家族のお世話をできるわけでもなく、根本的に状況を変えてあげることはできないので、本当にモヤモヤしてしまいます。

周りにいる大人たちにできることは、「今何がしたい?」ということを丁寧に聞いて、できることから環境を整えてあげることなのかなと思います。クリスマスのお祝いをしたり、下の子のお世話をしなくてもいい時間帯に勉強場所を確保したり、お昼寝ができる時間と環境をつくったり、「超大変!」という話を聞いたり。
もちろん、ご家族に行政の支援が届くようであれば、そうした情報をシェアして一緒に手続きをしてあげるということも大事です。子どもにはなかなか支援情報は届きにくいですし、手続きも難しくてできませんから。
ともかく、家族のことを子どもがひとりで抱え込み、ムリを重ねることのないように。自分のことを時には優先できるように。
そういう環境づくりを、家族ではない周りの大人たちがしていくことが重要だと思います。

そして、何より大切なのは……。
記事中で取材させて頂いたママキラ☆プロジェクトさんが実践しているように、「ヤングケアラーの子はおいで!」と、ラベリングするような言葉を使わないこと。ヤングケアラーという言葉も、貧困の子どもという言葉も、当事者の子どもや親には受け入れにくいことが多いということは、理解しておくべきだと思います。
また、自分がそうだと思っている子もとても少ないです。なぜなら、子どもにとっては今まで育ってきた環境が「普通」だからです。そこに「あなたは普通じゃないのよ」と感じさせるような言葉を使ってしまうと、「なんでそんなこと言われなきゃいけないの!」と抵抗感を感じてしまう子も多いでしょう。
実際、ヤングケアラーという言葉を使わなくても、当事者となっている子に「大変だね」という言葉がけをするだけでも、「慣れてるから大丈夫ですよ〜」「親も大変なのわかってるんで」と、「自分は大丈夫」「親が悪いわけではない」という反応が返ってきます。そこに「支援してあげるから!」とゴリゴリ突っ込まれると、みんな逃げてしまうと思います。

中野区では今年度、ヤングケアラーコーディネーターの設置や、オンラインサロンの設置などを進めていく予定となっていますが、どうかこのことを念頭に、子どもたちを逆に傷つけたり、支援から遠ざけたりすることのないようにと願います。

最後に……
今回取材させて頂いた一般社団法人Omoshiroさんもご紹介。
精神保健福祉士さんが中心となり、精神疾患などを抱えた保護者やその子どもに対して「親子まるっと伴走する支援活動」をされている団体さんです。

子どものサポートから入るのではなく、ケアが必要な大人のサポートから入り、その子どもに対しても支援を広げる。
ヤングケアラー支援をするのにはこのやり方がよいのではないかとも思います。
乳幼児を抱えるママの支援から、お兄ちゃんお姉ちゃんの支援へ。
障がいのある方、介護が必要な方や、依存の問題を抱える方などへの支援から、その子どもの支援へ。
「こういう子はおいで!」と子どもを集めようとするのではなく、大人の支援をされているところに、子どもの支援もできるスタッフなり団体なりがくっついて動くようにすると、ヤングケアラーの早期発見やケアに繋がっていくのではないでしょうか。


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