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オンライン学習、今は断念。その理由は……

3月、全国で臨時休校が実施されたことで、オンライン学習の注目度が一気に上がりました。
オンラインで無料学習支援をしていた団体や、有料コンテンツを提供していた会社など、さまざまな団体・企業が子どもたちの支援に動き出し、これによって家庭学習を助けられた子どもたちもたくさんいたことと思います。

私が今記事を執筆している「通信制高校ナビ」でも、こんな記事を書かせてもらいました。

もちろん、私が運営している無料塾でも、オンライン学習の導入が検討されました。塾に大勢を集めてべったりマンツーマンでつくいつものやり方にはリスクが伴うのではないか、でも休校中の補習をしっかりしてあげたい。だったらネットを使ってはどうでしょう、というわけです。

ただ、いろいろ考えてみた結果、「今のところ、ちょっと導入は難しい」という結論に至っています。
その理由は、通信制高校ナビの記事でeboardさんやCAMELさんがお話ししてくださった、
「意欲が低く取り組みづらい子もサポートできるような仕組み作りなどが必要」
「人間が関わらない教育はありません」
「教育を担う大人が子どもの進捗状況を把握してあげること、LINEなどで応援してあげること、教室に来たときにチェックテストをしてあげることなどができれば、オンライン学習はより効果を発揮します」
といった内容に関連しています。それ以前に、生徒全員がスマホやPC、あるいはWi-Fiを使える環境にない(すべてない生徒もいる)ということもありました。
オンライン学習ができる子にはオンラインで、そうでない子にはまた別の形で、と分けることも考えたのですが、「オンライン学習ができるハード面の環境が整っている」だけで、一律に学習をサポートすることも難しいのが現状だと、改めて感じることになったのです。

たとえば、CAMELさんが記事で話していた「デジタルデバイド」の話。当然これも、うちの塾で起こっています。保護者の中には、スマホを持っていても、普段それで何かを調べるということをしていない、SNSやメールを使いこなしていない(メールのアカウントは携帯のキャリアメールだけだったり、SMSしか使えない、LINEしか使えないなども)という方も結構いらっしゃって、家庭ごとにデジタル文化が大きく異なっているのが現状です。子どものほうが使いこなせるという場合のほうが多いですが、それでも、ご家庭にどれだけITが身近になっているかで子どものスマホなどの使い方にも大きな差が出ています。

こういう状況では、「スマホで勉強をしよう」と言っても、コンテンツによりますが、まずは「メールアカウントをとろう」「登録はこうやってやるんだよ」と、手取り足取り教えることになっていきます。また、これを保護者にサポートしてもらうというのは、かなり高いハードルになりますから(保護者もわからない、オンライン学習に抵抗がある、勉強させるためにこういう手間をかける心の余裕はない、など)、基本的にはうちのスタッフが担当していくことになるはずです。

さらに、スマホに学習アプリを入れるなどして、さあハード面は整った!となっても、そこから先にはまた大きな山が待っています。
「やってくれるかしら……」
これです。まず、生徒たちにとって、現状スマホは「遊ぶもの」あるいは「家族や友達とのコミュニケーションツール」です。スマホのアプリで勉強している様子が見えるのは、今年度通っていた生徒のうちたった1人でした。この1人は、親御さんがとても教育熱心で、子どももガツガツ勉強に取り組んでいました。紙だろうとスマホだろうと使えるものは使って勉強するという子です。でも、他の子たちはそういうわけにはいきません。

普段勉強ツールとしては使っていないスマホで勉強をするということに対する、心理的ハードルはいかばかりか。アプリで勉強しているときに、友達からのLINE通知が何通も来たとして、それを開かずに勉強を続行できるのか。勉強アプリよりも楽しいLINEやYouTubeやインスタなどをガマンして、勉強のほうを選択できるのか。スマホで勉強しているのを、親御さんにゲームをしていると勘違いされて叱られて、投げ出してしまわないか。
仮にPCが自宅にあったとして、「さあ勉強しよう」と電源を入れて立ち上げるまでの腰はすぐに上がるのか……。
そもそも、無料塾に来ている子たちというのは、小学校の頃から学習の習慣がなかった子が大半です。無料塾に来始めても、突然学習習慣が身につくわけでもありません。学校の宿題をやるのがやっと……(あるいは期限ギリギリになって答えを写して提出)という子たちが、スマホなら「さあやるぞ」と思えるのだろうか。。。スマホ画面を見た瞬間、「あ、ゲームの通知来てる」でそっちに気が奪われるということにならないだろうか。
いやもう、考えただけで、ハードルが高すぎるわけです。

ハードは整っていても、生活や文化、意識の面での差が、「家でも勉強するのが当たり前な子」たちと比べて大きすぎるのです。

だいたい、この数年何度か「このアプリ使ってみて」と言って、使ってくれたケースはほとんどありません。その場では「いいですね」「家帰ったらやってみます」と返事はするんですよ。でも、まあやらないよね。。。
考えてみたら大人だって、興味があるわけでもないアプリ(何なら苦行を強いられる可能性が大。その苦行感が和らぐ「楽しい」アプリだよと言われても、もとは苦行であることに変わりはない)を紹介されて、「インストールしてガンガン使おう」と思いますかね、思いませんね。

じゃあ、どうしたらオンラインを導入できるかというと、CAMELさんがおっしゃっていたとおり、人がガッツリつくしかありません。ログインしたか、どこまで進んだか、間違えたところを直せているか、理解度はどのくらいか、というのを日々チェックして、ときに励まし、ときに褒め、徹底的に寄り添う。これならば可能性も見えてくると思います。「アプリをインストールできない問題」「会員登録ができない問題」「メールアドレスのとり方わかんない問題」などから、ひとりの生徒につき大人がひとりついて、最後まで寄り添っていく。
それができるならいんですけど……スタッフはみんなボランティアで、普段は仕事や学校・バイトがあります。マンツーマンでこの人員を確保するのは、かなりハードルが高いと思いました。

と、ここまで読んで「無料塾に来てる子たちは進学塾に行きたくても行けない子なのではないの?」「やる気があるから来てるんじゃないの?」と思った方もいるかと思います。
しかーし。そのあたりは、前に書いた記事を読んでください。。。

そんなわけで。教育格差というのはハードが揃えばそれで埋まるものでは決してないのだということを、改めて実感している日々です。家庭に根付き、日々子どもに染み渡っている文化を変容させることは難しいということや、それに基づいて意欲や習慣が形成されているということを踏まえなければならない。その差を埋めるのは、人以外にはあり得ない。そういうことになるかと思います。


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読んで頂きありがとうございました。
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ライター・編集者で、経済的な事情を持つ中学生を対象にした無料塾の代表。出版社2社、電子出版社1社勤務を経て2012年よりフリー。書籍、夕刊紙、雑誌などで執筆・編集を行う。無料塾は2014年4月からスタート。地域の子ども食堂の広報も担当。
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