見出し画像

歩き疲れたら『おまん屋さん』で、ホッと一息

 祇園祭・前祭の宵山に出掛けた時のことです。
 その日は、京の町は、猛烈な暑さで熱帯雨林の中にいるような気分でした。
 日陰を見つけると、ちょっと一服して次の山鉾を見に行きます。

 油天神山、木賊山、太子山と、続けて見てから、
 「これはあかん。どっか涼しいお店に入ろう」
と、カフェを探して歩きます。
 ところが、こういう時に限って、みつからない。
 「近くのカフェ」を検索してたどりつくも、満席。
 溜息をついたその時でした。

 「御生菓子司 亀山」
という暖簾を見かけました。
 「おまんやさん」です。

 京都の友人に教えてもらったことがあります。
 京都の和菓子屋さんは、おおむね三つに分けられるそうです。
 一つは、京菓子、または上生菓子と呼ばれる、ちょっとお高いお菓子。
 お抹茶とともにいただいたり、お客様がいらした時にお出しするものです。
 「末富」「塩芳軒」「とらや京都一条店」「俵屋吉富」など。

 二つ目は、「お餅やさん」と呼ばれるお店。
 「出町ふたば」「鳴海餅本店」「中村軒」など。
 たいてい、「お餅やさん」では、お赤飯も売っています。
 
 そして、日頃、おやつとして気軽に食べるのが「おまんやさん」です。
 京都の街をぶらぶらしていると、やたら「おまんやさん」を見かけます。
 その時、目に飛び込んで来たのは、店頭のガラスケースの上にぶら下がっている「くずまんじゅう」「わらび餅」の文字でした。
 いかにも涼し気。

 ところが、お店の方に尋ねると、冷えているお菓子は「水羊羹」しかないとのこと。もちろん、不服などあろうはずはありません。
 「水羊羹ください」
と言うと、
 「食べて行かれますか?」
と、店頭の脇にあるテーブルと椅子の方に視線を向けられました。
 「はい!」
 汗をかいたプラスチック容器に入った「水羊羹」とともに、
 透明なガラス茶碗に注いだ冷た~い麦茶までご馳走になりました。
 カフェでもないのに・・・。
 「水羊羹」よりも先に、麦茶をグイッと飲み干してしまいました。

 「ごゆっくり」
と、お店の方は、奥の工房へ戻って行かれました。
 午後2時。
 冷房の入ったカフェではありませんが、スーッと汗がひき、疲れが一気に失せて行くのがわかりました。
 観光客だとわかるはずです。
 それなのに、こんなに優しくもてなして下さる。
 ますます京都の街が好きになりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?