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京都・城南宮で忘れてはならない期間限定・松甫堂の「椿餅」

よく、「三度目からの京都」なる類のタイトルの雑誌を見かけます。
まず一度目は、修学旅行で行く清水寺、東寺、二条城、金閣寺、伏見稲荷など。
二度目は・・・詩仙堂に東福寺、大徳寺に仁和寺というところでしょうか。
でも、三度目でも、なかなか城南宮を参拝する人は少ないに違いありません。
 
城南宮は、平安京が遷都された当時、都の南を守護し国の安泰を願って創建されました。引っ越しや工事、家相などの「方除(ほうよけ)の大社」として知られており、京都ではその際に祈願に参拝されています。
 
しかし、なんといっても有名なのが、「しだれ梅と椿まつり」です。
普段は、それこそ人影の少ない境内が、まるで祇園祭の四条烏丸通りのような大混雑になります。
 
さて、神社やお寺には「甘いもん」が欠かせません。
北野天満宮なら、「粟餅所・澤屋」の粟餅。
下鴨神社なら、「元祖 神馬堂」のやきもち。
そして、今宮神社なら「一和」と「かざりや」のあぶり餅。
いずれも門前に店を構え、素通りできない名物です。
 
ところが、です。
ここ城南宮の名物の「あまいもん」である「椿餅」は、「しだれ梅と椿まつり」の期間限定で、少し離れたところにある松甫堂(しょうふどう)さんが参道で販売されるのです。
なんでも、城南宮の鳥羽禮自名誉宮司さんが姿形を監修され、味見をされたという逸品。製造の際には、地元伏見の水を使うというこだわりです。
 
椿というと、縁起が悪いと思い込んでいる人が多いと聞きます。
武士が「首が落ちる」ということから、忌み嫌ったと言う説が広まったようです。
拙著「京都祇園もも吉庵のあまから帖」の第2巻で、「落ち椿」をテーマにして書いたことがあります。
少し本文から抜粋しましょう。
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太一は、その椿を魅かれるように見つめた。
濃いピンク。
一重の小さな花びら。
お猪口のように可愛らしい。
「今、ちょうど散り際で、ぽろりと花が落ちて苔の上で咲いてはります。蒲原はん、あんさんは、椿は首が落ちるように散るさかい縁起が悪い言わはったそうやなぁ」
「はい」
「その昔、お武家さんの社会ではそういう縁起かつぐ向きもあったそうや。そやけどなぁ。椿は本来、縁起のええ樹木なんどす。神様の霊が宿るいうてな。そやさかいに、神社やお寺によう植えられてるんどす」
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 たしかに、京都の神社やお寺には椿がたくさん植えられています。
 寒さ厳しい冬に咲き誇ることから、忍耐や生命力の象徴として崇められ、縁起が悪いどころか、邪気を払う力があると信じられて来たそうです。
 
さてさて、その椿餅。
桜餅のように葉っぱは食べられません。
ただ、椿の葉っぱで上下にはさんであるだけです。
クンクンとしてみましたが、香りもありません。
でも、「縁起がいい」「邪気を払う」ということを知って食べると、
心が健やかになるから不思議です。
 
城南宮の「落ち椿」も一枚、紹介させていただきます。


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