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『ガールズバンドクライ』第10話でのちょっとした気づき

今回の話もよかったよね~の第10話。結果として当たり前だけど、やっぱり仁菜が主人公だとわかった内容だった。個人的には、よく辛抱してこのストーリー構成にしたものだと思うと共に、ちょっとした気づきがあったのでそれを軽く紹介したい。


やっと「猫を救った」主人公

『ガールズバンドクライ』の主人公・仁菜には違和感があると下記エントリーで自説を述べた。そこで「実は真の主人公は桃香だ」と大胆な仮説を展開したのだが、第10話の内容を見てこの説はほぼ否定されたと考えている。まぁ、当然だよね。
ということで、この物語は

  • メインプロットが主人公・仁菜の成長を描く「金の羊毛」(これは『ぼっち・ざ・ろっく!』と同じだ)

  • サブプロットが仁菜と桃香による「バディとの友情」

でストーリー展開されている。

馬鹿の一つ覚えのように引用し続けている『SAVE THE CATの法則』によると、主人公が視聴者の共感を得られる人物であることを物語の冒頭ですみやかに提示する必要があるとされている。

その共感とは、例えば主人公が困っている猫を助けるような好人物だということだが、『ガールズバンドクライ』の仁菜は頑固で怒りっぽく、わがままな人物として描かれてきた。

仁菜・アニメ『ガールズバンドクライ』公式アカウントの投稿より

仁菜のこうした言動の背景にある出来事や家族との軋轢などが第10話でやっとクリアになり、状況はよい方向に進展した。この物語展開で仁菜がこれまで背負ってきた葛藤と、その葛藤を乗り越えた成長が示されたわけだ。仁菜は視聴者の共感を真に得られる主人公にふさわしい人物になったといえる。

1クール・12話(?)で構成される物語で、やっと第10話で主人公に関する伏線を回収する展開は相当に挑戦的なストーリー構成だったと思う。なにしろ、同時期に放映される作品数が膨大で、「1話切り」という言葉もあるほど厳しい競争環境と気まぐれな視聴者に向き合わなければならないからだ。正直いうと、私も第7話までは適当に流し見していた。さらにいうと『夜のクラゲは泳げない』のストーリーと頭の中で区別できてない感じもあった(汗)

主人公・仁菜の個性

それにしても、どうして仁菜の個性はこうも強烈なのだろう。「それが設定だから」というのは答えになってない。例えば、実写ドラマは俳優が演じるフィクションであり、仮に演じる人物が作中で死んでも俳優は死にはしない。
一方、アニメの登場人物は作品でリアルに存在しており、もし作中で死ねばそれは本当にその人物の死だ。アニメはフィクションであってフィクションではないのだ。

こう考えたとき、仁菜が熊本出身であることを再発見した。知ってはいただ、真に理解していなかった。令和のこの時代に県民性などを話題にすると鼻で笑う人もいるだろうが、仁菜のあの頑固さ(父親も含めて)を説明するのにこれほどぴったりのプロフィールはない。つまり「肥後もっこす」ということだ。

父親も頑固・アニメ『ガールズバンドクライ』公式アカウントの投稿より

最近ではあまり聞かれなくなったが、熊本出身者の頑固さを指して「肥後もっこす」と表現する。さかのぼること戦国~安土桃山時代、秀吉による九州制圧の後、肥後は佐々成政に与えられたが、地侍が多く治政の難しい地域だった。
その後、熊本城を築いた加藤清正が肥後を受け継ぎ、加藤家の没落後にそれを細川家(当時の当主は細川忠利)が継承した。細川家はそのまま江戸時代末まで続いたが、肥後=熊本の気風はこの時代に確立したとされる。

熊本の士風は、忠興・忠利の時代に根底がつくられ、宝暦のはじめに藩校時習館が出来て、学問で磨きをかけた。頑固なところへ学問で磨きをかけたものだから、理論的で、非妥協的で一徹な気質になった。そのため、維新時代に、あれほどの大藩であり、相当人物もいたのに、小異を捨てて大同につくことがなく、それぞれの主義を固守してゆずらず、維新運動にも乗りおくれてしまった。

海音寺潮五郎・『日本名城伝』「熊本城」より

ここに見られるような肥後人=熊本出身者の気風が仁菜の性格の根底にあるのだ。
そして、繰り返しになるが、このようなあくの強いキャラクターを視聴者の共感が得られる人物に仕立て上げるストーリー展開は本当に苦心のたまものだと思う。

最終話に向けて

さて、『ガールズバンドクライ』も残り2話だが(だと思う)、この先どこまで物語が展開するのだろう。

  • フェスへの出場と、一定以上の成功

  • メンバー間の友情の強化。特に仁菜と桃香

  • 「俺たちの戦いはこれからだ!」のいわゆる俺たたエンド

といった展開が予想されるがありきたりすぎるだろうか。願わくば、バンドメンバーたちの未来に明るい希望が持てる、幸せな展開になることを期待している。


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