『ガールズバンドクライ』は「バディとの友情」ジャンルだった(多分)
こんなに視聴者の共感を得られない主人公で大丈夫か?と危うんでいた『ガールズバンドクライ』が「バディとの友情」ジャンルの作品だとわかった第8話。物語の大きなターニングポイントで色々と見えてきたことについて。
主人公への違和感
何度も同じことを書いているが、物語の分析には主に下記2つの著書を参考にしている。
『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』
『SAVE THE CATの法則』
作品の主人公は視聴者の共感を呼び、つい応援したくなる人物であることが望ましい。例えば、『ぼっち・ざ・ろっく!』の主人公・後藤ひとりがこの定義にどれほどマッチしているかを下記エントリーで紹介した。
これと比較して『ガールズバンドクライ』の主人公は不登校の末に高校を中退して九州から上京(でも、実は神奈川だった)してきた少女(=仁菜・タイトル画像の中央・ボーカル担当)とされている。
確かに学校でのいじめ被害や、それに関する家族の無理解などの境遇には同情するものの、第2話以降で見えてきた怒りっぽくてわがままな彼女の本性は共感を呼ぶにはほど遠く、単に未熟なだけの人物に見えてしまうのが大きな問題だと感じていた。
真の主人公は誰か?
現時点(2024年5月下旬)では最終話までの展開は不明だが、おそらくこの物語で最大のターニングポイントになった第8話で作品のジャンルが分かった気がする。それは「バディとの友情」で、下記のような作品が該当する。
『ガールズバンドクライ』はバンド活動を始めた少女が成功を追い求める姿を表で描くふりをしつつ、彼女が大好きだったバンドの先輩バンドマン(=桃香・タイトル画像の右端・ギター担当)との友情が真のテーマだったのだ。
「バディとの友情」作品では、二人の主要登場人物のどちらが主人公かわかりにくい場合があるが、『SAVE THE CATの法則』ではその見分け方を次のように説明している。
上述の通り、主人公とされる仁菜は第2話以降で怒りっぽくわがままな様子がしばしば見られるようになるが、これは変化ではなく隠していた素が暴露されてきただけだ。
それに対して、第1話でバンド活動を諦めて帰郷するつもりだった桃香は仁菜に引き留められてバンド活動を再開し、いくつかのライブをこなすものの、またやめると言い出して仁菜と衝突する。そこには深い悩みや葛藤があり、彼女の心情が揺れ動いて変化する様子が描かれている。この物語を「バディとの友情」と見るなら主人公の定義に合致するのは桃香だ。
真の主人公・桃香が直面する葛藤
桃香が最初に活動していたバンド(=ダイヤモンドダスト)で直面していた葛藤は下記の通りで、これはサクセスストーリー物の典型だ。
バンド活動が行き詰まりを見せる中、そこで妥協できないがゆえにアイドル系に路線を変更を強いられるのは彼女にとって「魂を売る」ことだった。だから、メンバーを裏切って1人脱退した。
脱退という裏切りによって桃香と旧メンバーとの友情(≒忠誠)は壊れてしまった。それでも、一人で活動を続けていた桃香は本心では自分の才能と今後の可能性を信じつつも自己背信に陥って、帰郷を決断するに至ったのだと私は解釈している。
そこに仁菜が現れて『ガールズバンドクライ』の物語はスタートする。最初は仁菜が一方的に桃香を必要としている状況であり、桃香にとって仁菜は楽しくバンド活動するためにちょと便利な存在でしかなかった。
それが第8話で桃香も仁菜を必要とする状況であることが示された。バディ同士、お互いがお互いを必要としていることが確認され、二人の友情が構築されたたわけだ。見かけ上はだが。
もし『ガールズバンドクライ』が単純なサクセスストーリーであれば、この先はフェスに向けて練習し、本番も大成功、めでたしめでたし、となるのだが「バディとの友情」がテーマなので話は単純ではない。
出場を予定しているフェスで成功するかどうかは重要ではなく、その過程で桃香と仁菜は大きく衝突し、一度決裂することになるだろう。そして、二人が再度お互いを必要としていることに本当に気づいたとき、真の友情が形成されて物語は終幕に向かうことになると予想する。
最終話のクライマックスは第1話のオマージュだ。
こうして二人の物語は続いていく。最終話に向けて、この先どんな展開を見せるのか楽しみである。
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