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ココハナで連載が始まりました!

こんにちは、桃缶です。
4月26日発売のココハナ6月号に新連載『花見小路北日記』第1帖が掲載されております!
京都を舞台に繰り広げられる、女子高生の”あはれ”なる日々の物語です。
古文がちょいちょい出てきたり、ディープな京都の姿が見られたり、日常とは少し違った世界をお楽しみいただけましたら幸いです!

集英社での連載は初めてとなりますが、ここまでの経緯をお伝えします。

◆連載終了、そして…

2022年10月めちゃコミでの連載が終了しました。
この少し前くらいから「アプリ系漫画のことはだいたい把握できたし、出版系でも経験を積みたいなあ」と思っていたので、連載終了は悲しかったものの、フィールドを変える好機ととらえることにしました。
10月以降、趣味で描いた漫画を主に青年誌と女性誌にWEB持ち込みしました。6社くらいWEB持ち込みしたかな…
そのうちの1社が集英社のココハナさんでした。
ココハナにはリスタートシステムというものがあり、これは既にデビュー済みのかた向けの応募フォームです。(何らかの漫画賞で受賞、もしくはWEB漫画等商業で掲載・連載経験があるかた)
わたしのようにフィールドを少し変えたいと思っているひとにはもってこいのシステムだなあと思います。

◆読切ネームがとおらない!

まずは読切漫画をいくつか制作しましょうというお話になり、ネームを見ていただくことになったのですが…。
以前『読切漫画の作り方を学んだ話』という記事でも描いたとおり、全くネームが通らないという状況に陥りました。
かれこれ2ヶ月で4本ネームを描き、そのほかに単発でのお仕事の依頼をこなす日々。このころめちゃくちゃ忙しかったです。気持ちの面でも焦っていましたし。
もーあかんという心情のなか、とある知り合いの漫画家さんのひとことを目にします。そこでハッと目覚め、無事1作目の読切『哲学者のコーヒータイム』を制作することができました。
あのときのひとことがカギになりました、Mさん、ありがとう…!!

◆次の読切…またしても

『哲学者のコーヒータイム』を提出し終えたわたしはすぐさま次の読切にとりかかりました。
実は、それが今回の連載作品の原型です。
京都花見小路を舞台に、女子高生×古文をやりたくてネームを描きました。
かれこれ3回ほど描きなおしたでしょうか…
担当編集さんからの言葉は、「素材はいいのでもったいないんですけどね…」でした。
おもしろさが今一つ弾けなかったんです。
なぜなんだろうと、頭から煙が出るほど考えましたがこのときは答えが見つからず。それはのちに「そうだったのか!」とわかるのですが。
とにかく花見小路を考え続けるのに疲れたわたしは熱海にひとり旅に出ます。

◆熱海の奇跡

疲れ切っていたわたしを癒してくれたのは熱海でした。
GW明けのためお客さんがほぼ誰もおらず、お部屋をアップグレードしていただき、夢のような体験をさせていただきました。
そのときの体験は『ひとり旅に出た話』①と②にまとめております。
このとき宿泊したお部屋がじつに素晴らしく、「このお部屋を漫画に使いたい!」と思って帰ってから即行描いたのが読切漫画『数式を編む』です。
結果的に熱海に行ったことで読切がひとつ完成しました。

◆連載企画を練る

哲学者の2号連載、数式の読切を経て、いよいよ連載企画を練りましょうという話になりました。
企画は以下の4つ提出しました。
①哲学者のコーヒータイムの連載版
②数式を編むの連載版
③中華ファンタジー要素のある企画
④花見小路の企画

編集長は①を推しましたが、副編集長2人は④を推しました。
そして実は、わたしがこのとき自分でやりたいなと思っていたのは②の企画でした。(直近の新連載で別のかたが似たようなテイストのものをスタートさせていたので編集部は②を除外したのだろうなあと思います。)
編集長が①を推すのは理解できます。だいたいの連載は読切作品を長期化するケースが多いのです。読切での反響がすでにわかっているので、連載にしても安心だからだと思います。
副編集長たちが④を推したのがわたしにとっては意外でした。
以前かたちにならなかったものを、なぜふたりは推してくださったのか。
副編集長Nさん(わたしの担当さんです)曰く、Nさんは以前の読切ネームをみてキャラや世界観がいいということがわかっていたから。もうひとりの副編集長Kさんは、京都という舞台がすでに女性にとってワクワクする地だし、古文という要素が大人の女性が読む漫画としてふさわしいのでは、とのこと。

なんというか…すごい判断だなと感じました。
安パイでないものを選択する勇気、嗅覚、さすがだと思いました。

ココハナの場合、企画は「作家さんが描きたいものを!」というのが前提になります。ただ、それが売れそうかどうかを編集部で判断する必要はあります。なので、場合によっては作家側がいちばん描きたいものでない企画に決まることもあります。
わたしの場合、「自分がいちばん描きたいものをと我を通すのではなく、編集部の誰かが推してくれている企画を選択したい」と考えていました。
だって、わたしは雑誌に来たばかり。読者さんの反応の予測もたいしてついていないのにここで我を通そうとしてもさしていいことは起きません。
むしろ、雑誌をよく知っているひとが推してくれる企画は信頼できます。
誰にも推されない我を通したいだけの企画より、信頼できるひとが推してくれる企画のほうをわたしは信じたい。

となると、ここでのわたしのやるべきことは、どの企画に決まっても熱量高く取り組めるようにすること。
なので、企画の時点では細部まで決めすぎないように意識しました。
細部まで妄想して決めてしまうと、その企画に対してどうしても情が湧くので(我を通したくなる)、あえてどれも同じ濃度になるように気持ちを調整しました。

企画書はひとによってさまざまなので決まった形式はありませんが、わたしが作った企画書をお見せします。

『花見小路北日記』の企画段階の案

仮タイトル、メインキャラと概要、1~3話の構想、類似作品、読者へ提供するものなどを盛り込んでいます。
企画書を作る狙いは、私の頭の中にあるキャラや構想を端的に編集部へ伝えること。この漫画で読者に何を伝えたいのか、どんなストーリーラインでそれが語られるのか、ざっとそんなところが伝わればいいかなと思って作りました。
これはプロットやネームを作る前の初歩の初歩の段階なので、ここからまたいろいろと設定は変わります。(名前も年齢も容姿も変わった)

◆ネームの方向転換

連載企画の決定が11月中旬で、そこから第1話ネームを描き始めました。
最初、主人公が高校生なので学校が中心の生活だよな~と高校生活を描いていたのですが、担当さんから「大人の女性が読む漫画なので、高校生活には共感できない」と言われ。そうだよね…。大人の女性が読む漫画は、やはり大人の世界が中心。塾でステキな男子を見つけてキャアキャア言う気持ちはもうとっくに卒業している読者さまがたなのです。
一思いに主人公を女子高生ではなく働く女性にするという手もあったのですが…。それでもこの未完成な、少女から女性へ変化する過程にある子を主人公にすることに意味があるような気がして、彼女の周囲にいる大人たちにうまくスポットライトが当たるよう工夫することにしました。

2度目のネームは、話をガラッと変えて、花見小路界隈の大人たちと主人公の関りを中心に作りました。「すごい!全然違いますね!大人の漫画になってます!」と担当さんよりお言葉をいただき、そこでハッとしました。

同じ素材なのに、なぜ読切のときはかたちにならなかったのか。

花見小路北側という街の特殊性を読切で表現するには、あまりにページが足りなかったのです。
どうしても読切漫画の場合、複雑な説明を省き、キャラクターの目的を中心にして話を作らざるを得ません。環境設定<キャラです。読切漫画でゴリゴリのハイファンタジーがあまりいい評価を受けないのも、そうした理由です。世界観を読者が実感するまでに時間がかかるからです。読切版の花見小路は、キャラの面白さと街の特殊性を両方理解してもらうのが難しく、読者にとっては「ふ~ん、なんだか知らない世界~」と蚊帳の外感が残ってしまっていたのです。

しかし、こういう理由で特殊な世界観の漫画を切り捨ててしまうと、世の中とても単純な漫画ばかりになってしまいます。複雑な設定・世界観のものは読み応えや深みがあるので、読者によっては「ちょっと難しい」と感じるかもしれません。でも、この「ちょっと難しい」が結構重要なんじゃないかとわたしは思うのです。これがたぶん、知的好奇心の始まりなんじゃないかと思うのです。
今回ようやく、読切向きの漫画・連載向きの漫画が存在するんだということを実感しました。

◆連載スタートにあたって

実は自分のなかでは確たる自信があって描いているものではありません。
なにしろ毎日古文を読み進めつつ描いているのです。
なのでわたしが題材に持ってくる古文が正しいのかどうかは、監修に入ってくださっている小説家の奥山景布子先生の目に甘えさせていただいております。奥山先生、本当にありがとうございます…!!
勉強しつつ、京都に行って取材しつつ、自分が住んでいたときのことを思い出しながら、少しずつ漫画に落とし込んでいます。
ですからこの作品はきっと主人公だけでなく、わたしの心の成長の物語でもあるのです。その変化の記録を録るために描いているような気さえします。

雑誌での長期連載は初めてでたいそう緊張しておりますが、読者のみなさまに楽しんでいただけるよう精一杯描いてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!(*^-^*)
ご感想など是非編集部へお寄せくださいませ。
お待ちしております~☆

わたしの好きを詰め込んだマンガですが、届いてくれることを願って。応援いただけると本当に嬉しいです。