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ヨルシカオタクによるライブ「盗作」レポと、あの二人の生まれ変わり説への反論 1/3

ヨルシカLIVEツアー盗作2021、東京公演二日目。

ヨルシカのオタクがヨルシカのライブを鑑賞してきたので、知識と主観を総動員してレポを書く。そして最後にライブ後から「正解の解釈」となりつつある説に反論する。

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※当日はとにかく圧倒されていたので、不正確な部分が多々あるかと思う。間違っている箇所はぜひコメントにてご指摘いただきたい。


ある程度ヨルシカについて知っていることを前提に書くので分かりづらいかと思うが、最低限の情報は最初に書いておこうと思う。

というわけで、以下は全文ライブと各アルバム両方のネタバレになるのでご注意を。

前提

【盗作】
2020年に発売されたコンセプトアルバム。その後に続きとしてリリースされた「創作」と合わせて、今回のライブのテーマ。

【小説】
「盗作」初回盤に付属する100ページ超えの小説。音楽の盗作をして身を立てる音楽泥棒さんと、彼と交流する少年の物語。泥棒さんは幼馴染で大人になってから再会した奥さんを亡くしている。

【ブックレット】
今回入場時に前情報なしで突然配布された、インディーズ時代のアルバム「負け犬にアンコールはいらない」の初回盤についていたブックレットの一部と同じ内容のもの。

生前の大切な人の生まれ変わりを探す幽霊と、バス停で彼に出会った少女の話。

「負け犬~」盤にしか言及がないがどうやら少女のほうでも彼を探して生まれ変わりを繰り返していたよう。お互いが探している相手だと分かって幽霊が消えるシーンで終わる。

【だから僕は音楽を辞めた/エルマ】
「盗作」の前に発売されたアルバム。2枚でひとつの物語になっている。

音楽への向き合い方に悩んで幼少期を過ごしたスウェーデンへ飛び、最期に命を込めた音楽を手紙とともに遺して死んだ青年エイミーと、それを受け取って彼を追いかけ遺志を受け継ぐ女性エルマの物語。


レポ──前半──


0.開場
待ち時間にスクリーンに表示されているのが青空の野原に咲く一輪草。

小説で主人公の音楽泥棒さんとその奥さんの子ども時代のエピソードに登場する一輪草だ。「夜行」にも出てくる。この時点で泣かせに来ている。


ステージの壁は古びたビルのような外観、その真ん中にスクリーン。ステージ上にはベンチ。

小説で泥棒さんが「裏通り」と呼んでいた場所のイメージだろうか。別に表通りの方でも矛盾はしないがそんな印象を受けた。


1. 追憶

開演すると、「盗作」MVの男性が部屋で椅子に腰かけて本を読むシーンをメインとした映像をバックにナブナさんの朗読が始まる。

泥棒さんが奥さんと過ごした幼少期の、隣の町の夜祭へ行った日の夢を見る泥棒さんの語り。

ちなみに奥さんは7歳くらい年上で進学のために上京するという情報が小説にあるので、泥棒さんが11歳以下の記憶のはず。

記憶の中のバス停の横に立つ百日紅について印象的に描写されて、このとき一瞬だけ真っ赤なバックに明朝体で「百日紅」と表示される。

もうここで満足する。私が感じていたヨルシカと百日紅の関係性の強度のイメージは間違っていなかった。

途中、突然抒情的というか、文章も朗読もパラノイアのように激しくなる部分がある。夢の世界らしくもあり、「盗作」というアルバム全体に流れるニヒリストの激情みたいなものを感じもする。観客は昂る。


2.春ひさぎ
激重のベースサウンドから始まる。心臓を乗っ取る音量のドラムを久々に聞いて、ライブに来てしまったんだと実感する。

「言勿れ」のしゃくりは弱めでオープニングらしい上品な歌い方だった気もするが、とにかく喉からCD音源が出ているので声に関してはいっそライブ感がない。泣く曲じゃないのにもう泣き始めている。


3.思想犯
春ひさぎの、ピアノだけが残って静かに終わるはずのアウトロの最後の一音でぐわっと盛り上がって思想犯へ。

スクリーンでは完全新作のMVと言っていいような映像が流れる。CDジャケットの紳士を思わせるベニヤ板人形みたいなものがちょっと不気味に動く映像。

音源では感情を抑えた静謐な歌い上げ方になっているAメロが心なしかライブ仕様の強めの声になっていた気がする。

この曲中にsuisさんに当たったライトで、髪の毛が真緑のボブになっていることに気付く(ここに至るまでそれすら分からないような照らし方をしている。あの照明なら最前列でもお顔は見えなかったかもしれない)。

メジャーデビュー後最初のライブ「月光」では「神様っぽさを出したくて銀色にした」(ご本人談)、配信ライブ「前世」では「髪をブルーに染めてのライブ」「『テーマは人魚!』と仰っていた」(スタッフ2号氏談)とのことだったが、今回の緑は何の緑だろう。葉桜かな。ファンクラブ限定公開のラジオで語られるかもしれない。


4.強盗と花束
ここで「創作」からの楽曲が来る。その衝撃で泣いてよく覚えていない。あのイントロに入るまでに少しアレンジが入っていたがその時点で間違いなく強盗と花束。

「それ何かが違うのですか」はライブでもしっかり怖かった。


5.バスを降りて

ここで朗読に戻る。
たしかこのあたりだったと思う。会場を青空が覆った。本当に。ステージから客先に向かって伸びる青いビームライトが薄く放射状になって、どうやっているのか雲のような模様が浮かんだ。

語りは隣町に向かうために古びた駅に着いて、電車を待っているところ。列車事故があったらしくいつまで待っても来ないので、彼女が歩いていこうと誘う。


6.昼鳶

美しい思い出が語られてさあ夜行か花に亡霊か逃亡かと期待していたら昼鳶。なんで!!?

しかもスクリーンには濃厚なキスをする男女の映像。びっくりしてたら本当に終わりまでずーっとしてる。人が変わり場面が変わりずっといちゃいちゃキスしてる。ところどころ同性カップルいなかった?気のせい?気のせいじゃなかったらいいね


これまでの3曲ずっと泣きながら手の甲に爪を立てながら動いて歌うsuisさんを見つめて実在を感じながら聞き入っていたけどここでだいぶ気を逸らされた。

歌の記憶が相当薄れているけど舌打ちはたぶんギターじゃなくsuisさんのものでした。長年の謎が解けた。


7.レプリカント

あの印象的な前奏が目の前で始まる。スクリーンは後半に行くにつれて単なるビル群の都会的なイメージからどんどんSF的な映像へ。

このあたりであまりの情報量に放心して虐めていた手の甲を解放し始める。記憶がない。ただCメロ(「さよなら以外全部塵」あたり)の畳みかけが音源よりずっと力強かった。


8.花人局

ここでまさかのアルバム収録順。親の声より聴いたアウトロ→イントロの流れはここが「2021年の」「ヨルシカの」ライブでさえなければ会場が沸き立っていたはず。

ここにも映像がついていたがこれがとんでもない。絶対にYouTubeに上げた方がいい。

生活感のある部屋のいたるところに花が挿されている。洗面台の歯ブラシ誰かのコップ棚の化粧水に。

言語化しようとしても「エモい」くらいの解像度の言葉しか出てこなかったしそれが正しいような気さえする。「あなた」が全部花になっている……

「浮雲掴む」のギターとボーカルのユニゾンが本当に好きなのにここの記憶がない。たぶん映像のクオリティにやられていた。ものすごく惜しい。同じくらい好きなラストの息を吸い込む音はしっかり聞いた。

個人的に何よりも胸に来たのは「馬鹿みたいに愛は花人局」の部分。

初めて感情が爆発したような「馬鹿みたい」の力強さはこの曲の要だと思っているけれど、1月の配信ライブではアコースティック編成ということもあってか裏声の綺麗な「バ」が聞けた。

今回はどちらかと思ってどきどきしていたらアクセントが来たのは「た」。

suisさんの体の振りを見ても明らかに意図的な演出だった。やられた。


長くなるので前半はここまで。

後半はこちら

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