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タコダンスまえがき③音楽とは・・?宗像礼さんとの創作について

谷中・旧平櫛田中邸アトリエにて4/5-7の3日間上演された「タコダンス」。
木原萌花のソロ・ダンスパフォーマンスである。
詳細 https://takodance.tumblr.com/dentyutei

公演前にもっとあれこれ書く予定だったのですが、すっかり日が過ぎました。ここからは「あとがき」となります。よろしければお付き合いください。


時間も場所もズレている2人なので

今日は、タコダンスの音楽について、思い出しながら書いてみます。
音楽制作とアイデアをお願いした宗像礼さんはスウェーデン在住の作曲家・指揮者で、Curious Chamber Players というグループでも活動されています。
彼とはコロナ真っ盛り2021年からのお付き合いです。音楽家・アーティストの集団Crossingsさんの企画でご一緒したのが初めてでした。30分弱のパフォーマンス作品の共同制作をしたのですが、その頃、海外との行き来は全く出来ない状況でしたので、必竟、オンラインでの楽譜、テキスト、動画のやり取りにプラスして、zoomでリハ状況を繋いでタイムラグを起こしながらやり取りするという茨(イバラ)の道を辿ることになったのでした・・・・。演奏家もいたので、日本で皆の予定の合う午後にリハをやって、宗像さんに朝5時起きしてもらってzoomで繋いだりしたな・・申し訳なかった・・し、zoomというのは音楽を聞き取るには相当不向きだということがその時判明しました。

そんな作業が最初だったにも関わらず、その後もやりとりさせていただき、コロナ明けの彼の来日時にやっと直接話せてワークを共有したり、2023年7月にはカフェムリウイでチェリストAlexandra Hallénとのパフォーマンス「Bubure」を企画したりと、面白い交流を続けています。

最初から今まで、遠隔が基本。
状況と、お互いの好みが相まって、ドンと大きな塊は生まれにくい。いつも、お互いの異なる環境、日常、見聞きすること、取り組んでいる仕事の中で、感じ取ったことをバラバラのアイデアのピース(”部屋”と呼んだり)として共有することからスタートする。いくつかの要素が重なり合ったり、ズレた軸の中で同時に存在し、行ったり来たりするような状態を、作ろうとしている気がします。


楽譜にはデフォルトで棒人間IN

宗像さんも、当初はダンサーとの共通言語の無さに迷われている感じがしました。でも少しやりとりしてみると、演奏家がものを叩いて音を出すのと、私が動くのとは大差なかったみたいで、やがて棒人間(木原)が送られてくる楽譜の中に混在するようになりました。

「Nuwa」(2021) 創作過程の楽譜の一部。


私が提示したダンスの振付が、楽譜の中に書き込まれていることもあれば、音を鳴らす、という観点から宗像さんが出してくる動きのアイデアもある。
こうなると、もう振付と音楽の境は無くなってくるので、どういう時間の作り方をするか、を動きと音の双方から話し合う、というような様相になってきました。

田中邸deタコダンスの場合も、

私が田中邸という場所についてや、そこから浮かんでいる作品のテーマを宗像さんに送り

宗像さんが4つぐらいのアイデアで応答してくれ(楽譜、音源、動きのアイデアなどが混ざったもの)

私が実際に動いて試してみて、しっくりくるか来ないかを探りつつ、音と動きの組み合わせを変えたり色々試す

動画を撮って送って宗像さんに相談し・・・・・

の繰り返しで、最終的な本番の形になりました。

私がゴミ袋という、すごく特徴的な音が鳴るアイテムを引っ張り出してきて使いはじめたこともあり、色々なくだりがありました。詳しくどのような経緯で音楽や構成ができていったのかは、私自身でもかなり複雑でメモを見返さないと思い出せません。本番日という期限があるから形になるので、もし無期限なら永遠にやり取りを繰り返すのだろうな、というエンドレスさです。

加えて、音響スタッフのおにぎり海人さんにスピーカーの位置をご相談し、なるべく田中邸の環境に馴染んだ聴こえ方になるように工夫しました。とっても繊細に音量や置き位置を考えてくださったので、シーンによっては外の道や隣の家の物音が聞こえているのか?と思うほど自然になりました。ありがとうございます。


音楽とは?踊りとは?

振付≒時間の紡ぎ方 であったり、反対に
音やリズム≒体の動きから生じるもの であったりするので

ニワトリが先か、卵が先か、みたいな感じで自分が何を基準に創作しているのか混乱することもあるのですが、お互いのしっくりくる感じを探す作業は面白い。

混乱も含めて、結果として私1人では生まれないものができてくる。音楽とは?踊りとは?という原点から一緒に考えてくれる人がいるのは楽しく心強いです。

毎回、ありがたく思っています。


自分の外から降ってくるアイデアを吟味して受け入れて吸収していくという意味ではこれもまた、他己ダンス。


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