組織の成功循環モデルをもとに、必要な品質マネジメントシステムとは?

医療の質を改善させるためには、組織の質をよくしなきゃいけないよな…と最近考えていたところ、こがねんさんの「組織の成功循環モデル」についての考察があって、ものすごい腑に落ちて理解できました。

こちらを引用および改変させていただきつつご紹介して、それに加えて病院における品質マネジメントシステムに落とし込んだ考察を書きます。

こがねんさんの記事を要約しますと、「組織の成功のためには、ダニエル・キムの成功循環モデルにおいて関係の質が重要となるが、その関係の質は、GRPIモデルのGoal(明確な目標)、Role(役割分担)、Process(ルール・業務手順)がちゃんと決められていたうえで、Interpersonal Relationship(人と人との関係性)が良くないといけない」という内容でした。

こがねんさん作成の「組織の成功循環モデル×GRPIモデル」を整理すると以下のようになります。

ごがねんさん作成の「組織の成功循環モデル×GRPIモデル」を著者改変

「組織の成功循環モデル」は、「関係性の質」が高まることにより、組織のメンバーの「思考の質」、「行動の質」があがり、「結果の質」が高まるというポジティブなループが期待されます。

我々医療の質を推進する者として、結果の質とは「医療・サービスの質」になります。

「医療・サービスの質」を向上していくためには、やはり私の仮説の「関係性の質」=組織の質を高めていかなければならないことは間違いなさそうです。

では、組織の質を高めることに必要となるGRPIモデルのGoal、Roal、Process、Interpersonal Relationshipは、病院組織の何に相当するのでしょうか。

Goal(目的、目標)

これにあたるのは、組織のMission、Vission、Valueにあたるのではないかと思います。

特にMissionは「現在も果たしているべき目的」、Valueは「現在の行動の価値基準」となので、現在行っている医療・サービスの品質が、組織の目的を果たしつつ、定めた価値基準を満たしつつ、保証されているのか確認するためには重要になってくるかと思います。

※Visionはどちらかというと、未来志向というイメージです。何年後になっていたい姿、という形なので、現在行われていることがそちらに向かっているかどうかという考え方もできるかもしれませんが、ややこしくなるので割愛します。

となると、病院組織の上層部から、現場のスタッフに至るまで「Mission・Vision・Value」が浸透しているか、品質改善の方向性がそちらに沿っているのかはチェックしたほうが良さそうです。

Roal(役割)

こちらは、すでに病院組織であれば、部署・チーム・会議/委員会という組織が出来上がっているので、作ることは問題なさそうです。

しかし、重要なのは役割、つまり、その部署・チーム・会議/委員会の組織の目的が果たされているかどうか、という点だと思います。

前述の病院組織のMission、Vision、Valueに沿った目的・役割に名実ともになっているかどうかのチェックはしたほうが良さそうです。

ここで重要なのは、「名実ともに」です。

掲げられているだけでなく、ちゃんとできているのかどうかというチェックは行っていかなければならないと思います。

Process(手順・ルール・規程)

品質管理を行う上で、重要になってくるのが、どのチームメンバーが行ったとしても、同じ結果になるようにするという、「標準化」です。

品質を維持・向上していくためには、この「標準化」という作業が非常に重要になります。

その標準化を行う上で、Process(手順・ルール・規程)が必要になってきます。

私はこのGRPIモデルをこがねんさんのnoteではじめて拝見したのですが、組織の質を高めるために、ここでProcessが出てくるあたり、さすがだな…と思いました。

手順・ルール・規程が無い場合は、チームメンバーそれぞれの作業や業務の質がまちまちになります。そうなると、組織の質も担保できなくなります。

これは、文字通り病院組織に存在している規程・手順で良さそうです。

これもやはり、「名実ともに」が重要となりそうです。規程・手順が存在しているだけでなく、現場がわかりやすく、浸透しているか、ということが重要となりそうです。実行されてはじめて意味を成します。

現場が規程・手順を実行しやすいかどうかは、大まかな方針を決めるルール(例えば規程)に従って、現場の作業の行い方を定めるもの(例えば手順)が設置されるという構造化によると最近考えています。

現場が手順を守ることが目的とならないように、なぜその手順を行わなければならないのかルールが明確にわかるような構造にしないと、いつしかルールの形骸化、意図的な違反が定常的に起きることとなります。

Interpersonal Relationship(人と人との関係性)

関係性の質の次が、思考の質、行動の質であることから、人間関係の良好さというのが、組織の思考や行動に大きく関連していることがわかります。

逆に言うと、関係性が悪くなることで、思考ができなくなり、間違った行動を起こしやすくなる…

これは、「心理的安全性」のことだろうなと思いました。

昨今の企業の問題は、組織のスタッフが、「どのような意見を言っても受け入れてもらえる」という心理的安全性がないせいで起きていると思います。

ビッグモーターしかり、ジャニーズしかり、「これは間違っていると思います」が言えないせいで、問題がずっと存在し続けています。どこかでだれかが「問題だ!」と言える組織であったなら、どこかで軌道修正ができたはずです。

逆に「心理的安全性」は「仲良しこよしではない」ということも確かにそうだと思います。

思考・行動の質を上げるためには「仲良しこよし」では不可能ということも想像できますし、GRPIモデルの「目的・目標を果たす」「役割を果たす」「ルールを守る」という緊張感が設定されていることからも納得できます。

田端さんも上記で指摘している通りです。

だからどうする?

さて。どうしましょうか…

自分が考えたのは、すべて「指標に落とし込む」ということです。

Goalは果たせているのかは、ミッション、バリューのできる限りの数値化。

それぞれの組織はRoal(役割)を果たせているのかは、ミッション、バリューから落とし込んだ組織(会議や部署)の目的の数値化。

Processは守られているのかは、監査等による規程、手順の遵守率。

Interpersonal Relationshipは良い状態なのかは、心理的安全性やeNPSなどによる数値化。

これらは、組織がちゃんと成功循環モデルに乗れているのか、つまり組織がちゃんと質が良い医療サービスを提供できる状態にいるのかを可視化できるのではないかと期待します。

よく提供している医療サービスの質は、数値で測ろうとするのですが、組織の状態を測るという視点は、なかなか病院運営では出てこないのではないかと思うので、より掘り下げて今後考えていきたいと思います。

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